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覚醒生物

10:13 桜木町

風香町から桜木町までは徒歩で10分足らずの距離である。

まだ街としてはそれほど機能していない部分が多く、住民の話曰く、開拓前から町名をつけているのだという。

名前の由来は桜が年中咲き乱れる町からきている。

しかし、桜が散らない事などあるのだろうか? そもそも桜の木など一本のなかったのである。

そんな場所に警察署のある理由は凶悪犯を開拓作業に使わす事から建てられたらしい

しかし、戦争になってからは開拓どころではなくなり、現在ではコンプレクシティの拠点と化していた。

そして今、桜はその拠点の入口前に立っていた。

「さあ、任務開始よ!」

分厚い扉に力を込めて押し開ける。

ギギギッ!っとゆっくりと扉は下がっていき、桜はその合間に入っていった。


10:27 桜木警察署

とても薄暗い、以前の廃棄地下鉄とは比べ物にならない暗さだった。

桜はしばらく立ち尽くし虹彩が開くのを待った。

だが、薄暗い受付のロビーに潜む黒き何かはそんな余裕を待たずに襲いかかってきた。

バシューン!と、何かが飛ばされる音

気配には気づいていた桜が気を含む攻撃であると予測に、気をみる視覚に変える。

位置がわかり、それを容易に避ける。

パシュウーーーッ!

視覚を戻すと虹彩がようやく働き出し、薄暗い空間が見えるようになった。

そして先ほどの何かが着弾したところを見る。

床が…溶け、地面が10cm程穴のようになっていた。

「一体さっきのは何?」

そう思っていると地響きがしてくる。

「?…今度は何!?」

何かが地面から上がってくる!?

再び気の視覚を持たせ、地面を見ると地中深くから接近してきていた。

強大な気をまとった鰐が大口を開けて

「出現と同時に餌にされる!?」

桜は即座に今の位置からジャンプし気を放って天井に屈むように引っ付いた。

飛び上がってすぐに地面がボコッ!と陥没し、巨大な鰐の顔が現れた。

そして全身が現れた時、桜は自分の目を疑った。

上半身は確かに鰐だった。

だが、下半身は河馬のような姿をしていた。

「まさか、覚醒生物!?」

桜は改めて鰐のような河馬のような生物を見返してみる。

が、鰐の部分が口を開き水のような玉を形成していた。

「くる!!」

気づくと共に水玉を発射してきた。

咄嗟に避け、地面に着地したあとで、着弾した天井をみてみる。

「やっぱりさっきのはこれね」

その天井は先程のように壁が溶け、10cm程穴があいていた。

(あれには酸でも混じっているのかしら?)

再び、鰐河馬を見る。

普通の鰐よりも些か大きく河馬より小さい、まさに鰐と河馬が合わさったような生物である。

「でも、パワーは上なんでしょうね…」

さっきからこの生物が動く耽美に地面が揺れている。

「早めに手を打たないと、そのうち崩れるわね…」

一つで呟き、バックから長方形型の鉄の棒を取り出した。

接合装置が外れていき特殊警棒の如く長く伸びた。

「もしかしたら、こわれるかも…」

構えてから、少し心配気味に鉄棒を見た。

しかし、今は心配している場合ではない。

スイッチを入れ高電圧を発生させる。

大口を開いて咆吼をあげ、鰐河馬は物凄い地響きを起こしつつ、走って向かってきた。

「すぐに決めるわ、あんたにここを潰されちゃ司令部になんて顔で謝ればいいのかしらね!」

口元まで桜は近付き、間一髪でよけ側面へとまわる。

「覚悟!くらえーーーっ!」

電気を纒った鉄棒を鰐河馬に勢いよく振りかざす。

強い衝撃と同時に電圧も走る。

しかし、強固な脂肪で覆われた河馬の身体には対して通用しなかった。

「ちっ、やっぱり耐性をもってる!」

鰐河馬のが振り向き様に足を桜をかすめる。

「あぶない!」

鰐河馬の顔が桜のすぐ前に映る。

大口が目の前に見えたのをみて桜の頭が閃いた。

「一か八かやってみるしかないわね」

鉄棒を先をみるとヒビが入り電気がバチバチとなっていた。

考えているうちに大口が開かれる。

しかし桜はギリギリまで待ち、噛み付かれる瞬間に後ろに少し下がった。

口が閉じる寸前に長方形の鉄棒のスペースを牙に挟み込む。

「これなら、どうかしら?」

鰐河馬が驚いた表情をする前に電撃が走る。

口内を伝って電撃が体内を走りまわる。

鰐河馬は、しばらくもがき続けていたが、やがて生命が底をつき動かなくなった。

「倒せた…の?」

桜は怪しげに鉄棒を引き抜こうとしたが

「痛っ!」

ビリッ!っと、電気が走り、腕が下がった。

鰐河馬の気が電気と重なり治まらない電撃を放っていた。

「放棄するしかないわね…」

桜は名残惜しそうに立ち上がり、階段を探した。

「そういえば、ここ案内板とかないのかしら?」

階段の前に辺りを見回してみた。

すぐに見つかった。

最大階層は4F、独房は2階にあるようだ。

「よし、急ぐわよ!」

少し気を解放して、人毛のないロビーを人とは思えない速度で駆け抜ける。


11:57 桜木警察署2F

思った以上に時間がかかってしまった。

独房に向かい、三人の能力者がいるのを確認する。

一人は男性、二人は女性であった。

男性は、ベッドバンドの様な物で固定された青髪、グレーの囚人服に紅色の不気味な札がいくつも貼られていた。

そして女性のひとりは、オレンジの真ん中に分けた髪に、薄手のタンクトップに腕にはベルトバンドが三つも巻かれている。

もうひとりの女性は、セミロングストレートの銀髪に、ジッパーがいくつもついているグレーの服だった。

鉄格子を握り、あえて音を立ててみると三人がうつぶせていた顔を上げた。

「半幽体化能力者の、エレナ、ユキトウ、カレアさんですね?」

桜が確認する。

能力者の三人はコクッ!と頷いた。

「地球能力対抗防衛軍の工作員、速峰:桜です。助けに来ました!」

1Fのロビーから拝借した独房の鍵で扉を開けて入り、三人の手錠の鍵も外す。

拘束から解放された三人は静かに立ち上がる。

そしてその一人、青髪の男が言った。

「ありがとう…君を待っていた。屠殺する為に」

男性…ユキトウは手錠とは別についていた、手枷をつけた腕をあげる。

そして二人のうちの一人、オレンジの髪の女性が腰に指していた拳銃を構え出す。

「冥土の土産に教えてあげるわ、私はエレナ、同じくあなたを屠殺する者よ」

様子がおかしい三人に桜が下がろうとした時

「うっ!」

もうひとりの銀髪の女性が背後から桜にスタンガンを当てる。

「カレア、このメンバーのリーダーをしているわ。あなたはもう…逃げられない」

桜は崩れるがなんとか意識を保って、三人を見た。

「と、屠殺者…あの能力者殺しの…?」

ゆっくりと後ろに下がっていくが、すぐに三人が追いついてくる。

やがて背後が壁となり、それ以上、下がれなくなる。

それをすかさずカレアが桜のバックを奪い取り、適当にあさって護身用のスタンロッドを取り出した。

「ひとつだけ、教えて…」

桜は目が霞む意識の中で、ひとつの制止をする。

「なにかしら?」

「あなたたちは、地球軍ののうりょく…しゃ、なのに、どうして私をねら…うの?」

桜の問いにカレアは冷たいような、そして、慈しむような瞳で答えた。

「地球軍は今や、コンプレクシティの配下となったわ。あなたに連絡を送ったのは確かに地球軍…でも」

カレアはそこで一旦区切って、再度語る。

「私達は屠殺者。敵が多い方につく…だから最初に邪魔になるあなたを始末することになったの」

三人は武器を構える。

「そ…う、ありがとう」

そういって桜は意識を失った。

その無防備な少女を三人は・・・




12:20 桜木警察署3F

「遅いですわね」

煉獄火炎の能力を持つ少女、サーシャはあまりにも遅い来客に疑問を感じた。

そして同時に背筋に強烈な悪感が走った。

それは屋上にいたフェイルも感じ取った。

すぐさま階段を降りる音がしてくる。

「なんですの!?この身体をえぐるような寒気は?」

「わからない、気が何かを知らせている」

二人が合流し、互いに疑問をぶつけ合った。

「とりあえず下に向かおう、寒気はそこから来ている様だ」

「わかりましたわ」

言うやいなや、二人は急いで3Fを後にした。


12:25 桜木警察署2F

人気のない警察署に階段を降りてくる音。

焦っているからか、音をなくすことができる足並みは完全に不可能だった。

フロアを見渡し独房を部屋を見つけるとすぐさま入っていく

そこでフェイルとサーシャが見たものは…

三人の能力者…そしてその足元には…

全身から血が溢れ出ていて、ぐったりとした少女が横たわっていた。

「桜姉…さま?」

サーシャは放心したかのように足が崩れ、で実の姉を名を呼んだ。

だが、少女はまるで動く気配がなかった。

サーシャの声に気づいた能力者の三人はフェイルとサーシャを見る。

「おう?ようやく、ボスのお出ましだぜ」

ユキトウが最初に声を上げた、その手枷の鉄球には血がこびり付いていた。

「だけど残念だったわね、私達がやっちゃったわ」

妙に笑顔を見せ、高ぶるエレナ。

服には無数の返り血を浴びていた。

「復活されては困るから全身をくまなく破壊した。もう脈は愚か、再生能力すら失っている」

カレアが最後に声をあげる。

スタンロッドには血がぽたぽたと零れていた。

「どういうことだ!?」

フェイルは怒気を発する。

「あなたたちがコンプレクシティの裏切り者だというのは既にわかっていたことですわ」

エレナがその問いに答えた。

「だが、最善の案がなかったんだよ。どうにかしてお前達をコンプレクシティに戻す案がなぁ」

続いてユキトウが

「だから私達が囮となって地球軍の兵士だと偽り、この作戦をあなたたちに伝えた。まんまと引っかかってくれたのは良かったけれど、こんな形になるとは思わなかった」

カレアが溜息を漏らす。

「・・な・・で」

サーシャが何かを言った。

「あぁ?よく聞こえねえよガキ!」

小さく聞き取れなかったことにユキトウは腹を立てた。

「そん・・とで」

再びサーシャは声を出す。

「ちょっと聞き取れないわよ、もうちょっと大きな声で言ってくれない?」

エレナが小馬鹿にするように冷たい微笑みを浮かべる。

「そんなことで、桜姉さまを殺したの!?」

サーシャは怒りに燃えて立ち上がる。

その背中には燃えるような朱色の翼が見えていた。

すぐさまの屠殺能力者の三人は武器を構える。

しかし、構えているあいだにもサーシャの気はどんどん大きくなっていく!

「最早、止められないな…サーシャ、銀髪を相手にする。残りの二人は頼んだぞ!」

聞いていたのかわからないがサーシャは、ジェットの様な勢いで一気に敵陣に入っていった、それを合図にフェイルも駆けていく

ラー家と屠殺者の能力戦が今始まった。

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