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奇襲×2

音の正体は改造されたバイクだった。運転席から降りたそのパイロットは…

「フルフェイスの武器持ち…、あなた、コンプレクシティの者ね?」

桜はパイロットに問う。

「左様」

フルフェイスを外すことなく、くぐもった声でパイロットは言い放つ。

交戦は目に見えている。しかし、捕虜救出の任がある今では相手をしている暇はなかった。

「できれば、あとにして欲しいんだけど...」

桜は交渉を持ちかけてみるが

「それはできん、サーラ様のご命令だ。」

腰に掛けてある小型拳銃を手に取り兵士は構え、桜に向けた。

「兵士は交渉如きで手を抜いたりなどしない、よく覚えておくことだ。」

ためらいなく引き金を引く!

バキューン!と実銃の弾丸が桜を頬をかすめる。

「咄嗟にかわしたか、だが、次は外さん!」

兵士は再び桜に銃口をむけ発砲する!

バキューン!と再び桜の頬をかすめた。

「貴様、何者だ?」

兵士は驚いていた。

なぜなら目の前の桜は全く動いていないのにも関わらず、狙いを合わせていた銃弾が二発も当たらなかった。

「俺の能力は誘導弾。コンプレクシティでも高位の兵士で貴様のような工作員如きにこの弾がよけられるはずが…。」

そこまで言って兵士は気づいた。

「はっ! き、貴様、まさか!?」

兵士の一生はそこで終わった。覚醒した桜の一撃を直撃して。

腹部に風穴を開けた兵士は僅かに残った生命力を振り絞り、桜に問いた。

「どうして、能力者に加担する?」

しばらく兵士を見ていたが、そのすぐ後で桜は無言のまま、能力を抑え、正常に戻ったところで

「能力者が好きだから、じゃダメ?」

と答えた。

それを聞いた途端、倒れているこの兵士からは想像できない笑みが聞こえた。

「どうして笑うの?私そんなにおかしな事言ったかしら?」

桜は?を頭に浮かべた。

「面白いことを言うな…。ラー家はもっと堅物な家柄だと聞いていたが、こうも普通の子の答えが返ってくると笑ってしまいたくもなる。」

桜も驚いていた。

先程までの態度とは思えない、桜はそれだけを強く感じた。

だが、すぐにわかった。

この兵士も子を持っているのだ。

だからこそ、桜の容姿から実の子を思い浮かべているのだろう。

「私には娘がひとりいてな、それはそれはじゃじゃ馬な子だが、明るく振る舞う姿は君とよく似ている。名前は麻衣といってな…」

数十分ほど語ったあとその兵士は息を完全に引き取った。

桜は来ていたコートを羽織ってやり、その場を去った。


1:46 廃棄地下鉄線路

廃棄されているとはいえ、この線路が綺麗なのは最近になって廃棄されたばかりなのと、工作員の手によって掃除が行き届いているからである。

桜は一人線路を歩いていく

コートがなくなった桜はなんとも場違いな格好だった。

重そうな何十にも着た十二単、袴は脚の当たりが動きやすいように少し短めにしている。

現代の雰囲気とは裏腹に一人、和服の少女はゆっくりと線路を駅に向かって進んでいく。

と、目の前の壁がわずかに蠢いた。

「…!」

桜は即座に気づく。

壁にいるモノ…光学迷彩によって姿をくらませていた様だが、桜の目はその程度では騙しきれなかった。

「出てきなさい!」

赤眼を見せ、桜は何も無い様に見える線路内で叫んだ。

すぐに壁に見えた部分から金属質の物質が見えてきた。

「はぁ…。今度はサイボーグ?随分と手のまわしが早いじゃない。」

光学迷彩を解いて現れたのは人型の機械兵器、サイボーグだった。

それも一体ではなく5~6体はいた。

「ほんっとうっにっ!疲れる相手ねっ!!」

桜は抱えていたゴルフバックから細長い長方形型の鉄パイプの様な物を取り出した。

桜がそれを手に取るとガチャン!ガチャン!と特殊警棒のように上下に伸びてゆき、片手で持てるとは思えない長さとなった。

持ち手の辺りには上下式スイッチ、長さは170cm程もあるそれはデザインは無骨だが桜の開発した兵器の一つだった。

「覚悟はいいかしら?これはショートどころじゃすまないわよ!」

電源をONにすると長方形型の物体はガクガクと振動し始めた。

やがて振動だけでは収まらなくなりそれだけで暴れだしそうなほど震えだした。

「さあっ、行くわよ!」

そう言って、桜は飛ぶ。

十二単の姿からは考えられない跳躍力、袴がふわっと舞い上がり、サイボーグの集まる真っ只中へと突っ込んでいく。

サイボーグ達は桜を捉えると即座に腕から光線剣を出し、桜に斬りかかる。

着地と同時に桜は長方形の鉄パイプ型の棒を大きく振るう。

咄嗟の勢いで繰り出された一撃はサイボーグを2~3体は葬った。

衝撃と共にバチッバチッ!っと火花が走りノックアウトさせる。

「残り3体!」

桜は今にも振り下ろす光線剣を転がり避け、残り数を確認する。

体制を戻すと、サイボーグは腕の武器を換装し間接兵器に切り替えていた。

それを見て桜は笑みを浮かべた。

「ふ~ん、あんなのでもバルカン砲は使えるのね」

即座に構えスルスルと回りだす。

桜は近くの柱に向かって走り出す。

ダダダダダダッ!っと、桜を追いかけるように照準を修正していくが桜のスピードが早すぎる故にまるで追いつけなかった。

桜は柱には隠れずそのままサイボーグに向かって駆けていく。

目の前には2体の光線剣を構えるサイボーグが前衛となり、後衛への進入の防ぐ壁となるが、桜は駆けるスピードを落とさずそのまま向かっていき、棒を振るった。

危険を察知した時には既に遅かった。

直撃し火花を吹くサイボークの液晶画面にはdangerの文字。

もう一方はmovestopと出ていた。

「他愛のないものね。軍用でもないのに駆り出されて…」

桜はそのとき見てしまっていた。

このサイボーグ達は戦闘用のモノではない事を

「あなた達の形式は私も作ったことがあるわ、CS-627。宇宙作業用人員補充無人機」

桜は壊れたサイボーグを見返しながら、形式をすらすらと挙げていく。

このサイボーグはコンプレクシティの改造によって半ば無理矢理に兵器として改造されている。

「壊したものはどうしようもないけれど、あなたは助けてあげるわ。プログラムを破壊すれば行動を停止できるし、予備なら幾らでもあるから」

桜は鉄棒をバットの様に構えた。

サイボーグは桜を危険対象としバルカン砲から光線剣へと換装した。

ブースターを出現させ、桜の様にバットを持つような構えを取る。

両方が構え終わると即座にお互いに向かって駆けていった。

サイボークはブースターでの垂直移動、桜は覚醒し足を驚異的な速さで交互に動かす。

あと数センチというところで桜は少し軌道からズレた。

サイボーグは一瞬の内にターゲットが的から外れた事に驚くことなどできなかった。

バチイィィィーッ!と一際大きな火花が上がる。

しばらくして地面に丸めの物体が落ちた。

「うまくいったわね…。痛っ!」

桜はサイボーグから斜め右方向に倒れていた

起き上がる際に左手をギュッと握る。

「これは折れちゃったわね。痛みが強い…」

生まれた初めて骨折をした桜は対処法がわからずにいた、包帯でも巻けばなんとかなるだろうと考えたが、そんな場合ではなかった。

鉄棒を戻してバックにしまうと頭がなくなったサイボーグの元に寄り、腕を掴むとそのまま肩に抱え再び駅を目指して前進し始めた。

「駅までもうすぐ。風香町に着いたら宿を取った方がいいかもね」

独り言を呟き薄暗闇の先へと消えた。

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