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連絡

薄暗い廃棄地下鉄を拠点にしている工作部隊が存在していた。

その工作員の一員であるラー家の一人、速峰:桜は兵器工作を担当しており、小火器から重火器、更には大型兵器の設計、開発を任されていた。

桃色の長髪、汗だくのブルーのツナギ姿はどう見ても工場で働く姿だった。

ラー家というのは生まれながらにして知識が豊富とされ、幼い頃から辛い苦行を幾つもこなされ、感情が欠落する代わりに優等生を勝ち取るというのが掟だった。

故に長女とされる桜もそれは勿論の事、ひいては90人の妹たちよりも優れていた。

能力者は基本的に人間よりも長生きでき、実に1000年以上は軽く生きていられると言われている。

最も長く生きた能力者というのは現在研究中で不明だが、今現在生きている中で、最も歳が高いのが976歳とされている。

そして何より、老化というのがない為、身体が衰えることはなく、突如として息を引き取るのだという。

桜の歳は236歳。人間達がよく言っていたエルフという分類に勝手にされている。

彼女の作る兵器は地球軍の兵士もよく扱っており信頼は高い。

しかし彼女の行き過ぎた兵器に限っては扱いがひどくややこしかったり、使用する前に壊してしまったりということも多いらしい。というのも彼女の作る兵器はその優れたセンスによって兵士達の好むものとなる。

だが、兵士たちが好む武器は主に実在する銃などの部類、しかし、桜はそれを全て失敗作だというのだ。

彼女が作るのはレーザー砲や、バルカン砲等、明らかに重火器クラスに相当する程の破壊力を持つ武器、しかし、ラー家なら力量でなんとかなるものの一般人とさして変わらない地球軍の兵士達にとっては、担ぐだけで体力を奪われる始末だ。

そんなものをこれまでに幾つもの量で作成してきている。

そんな中、彼女のPCに一通の非常回線が回ってきた。

「こんな時に何?設計図が見れなくて手元が狂っちゃうじゃない!」

桜は兵器開発の手を止めPCをカタカタと鳴らし始める。

回線は地球能力対抗防衛軍総司令部からのものだった。

「地球軍代表から?私に何のようかしら?」

回線を回してみると暗号化されたメールが一件受信箱に送られた。

「暗号化メール?何か急な件かしら?」

さっそく受信箱を開くメールを開封する。

“暗証番号を入力してください”

開封する前にこのウィンドウがでるのは目に見えていた。

「えっと、どこにしまってたかな?」

廃棄地下鉄場をくまなくさがす。廃棄された場所といっても、つい最近まで使用されていた場所であり、それほど汚くはない。

しかし兵器開発用の工具類はもちろん。鉄くずの類などがそこらじゅうにあり、元が綺麗だった場所を某地下鉄風にしていた。

「あった、あった。5252125234125521114」

“確認中”

この画面は意外に長かった。無駄に長すぎるパスは嫌いだと、桜は呆れた。

“認証しました。閲覧する内容をクリックしてください”

ようやく画面が変わり、ひとつしかない内容をクリックする。

「救出任務?工作員の私に何させる気なのかしら?」

開示した内容をみて速峰:桜は驚いた。

[急な連絡で申し訳ない。

今回の件は兵器開発の依頼ではなく救出任務だ。

前線で戦闘していた半幽体化能力者の三人、エレナ、ユキトウ、カレアがコンプレクシティの奇襲により、捕虜となった。

彼等は桜木町の警察署を占拠し我ら地球軍の降伏を求めている。

奇襲部隊の指揮官はサーシャだ。

彼女は君と同じラー家の血を引く、コンプレクシティ三大将軍の一人だ。

我々では手に負えない。

そこで君に頼んだ次第だ。

時間がない。大至急任務を遂行してもらいたい。


以上だ。]

ほんの数十秒ほどの間を置いて

「サーシャ…。煉獄火炎の能力者。」

桜は思い返した。

まだラー家が地球軍に協力していた頃、サーシャはマネキンに向けて火を放った。

恐ろしいまでの熱度でマネキンはみるみる溶けていき、最後には跡形もなくなくなった。

「お父様が言うにはあの火は龍族の血が混じった者にしか扱えないと言っていた。」

桜は俯き、右手に拳を作った。

「迂闊にあの火には触れられない。如何に私が水を操れようとも。」

桜は足が少しばかり震えていた。

なぜなら桜は火を怖がっているからだ。

幼い頃に浴びた火車潜りの苦行。あれを桜は忘れたりはしなかった。

父親のミスで火車がやたらと狭くなっていた状態からの飛び込み、その時に浴びた火の傷跡は今になっても消えてはいない。

それからというもの桜は火に触れることができなくなっていた。

酸性の液体に腕を突っ込むことはできても、火には全く同じようなことはできなかった。

幾度も自己再生を繰り返し、古傷を消そうとしてきたが、父親がいなくなった今、思い出と呼べるものはこの古傷しかなく消すに消せなかった。

その結果、今となっては手遅れになり、傷も消すことさえも出来なくなってしまった。

「あの子の火は厄介ね…。」

桜は任務の準備をしつつ対策を考え込んでいた。


「準備完了!それじゃ行こうかな」

桜がレール伝っていこうとした時

ブオォォォォォォォォーーーーーーン!

何かが猛スピードでこちらに向かってきた。

「何?何かが近づいてくる!?」

桜がそれを待ち構えていると

キュルルルルルッ!

それは桜から少しおいた距離で止まった。

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