選ばれた者達
「っていうか、なんの集まりっすか?」
馬鹿そうなウェーブのかかった金髪の女が集まった自分以外の五人の人間を見渡して言う。
「さぁな、俺は手紙で呼ばれただけだ。みんなもそうなんじゃねぇか?」
ひょろりと長身な男は何か面白いことがあるんじゃないかと待ちきれない様子でそわそわとしている。
集まった他のメンバーも長身とあまり変わらない返答をした。
その中で茶髪のボブカットをした女の携帯が軽快な音をたてる。
「も、もしもし?」
こんな状況で普通の電話がかかってくるとは思えない。茶髪はやや腰がひけているようで声も多少震えている。
電話からの声は普通の大きさのはずなのに、そこに集まるぜんいんに聞こえる声だった。
「ちゃんと六人揃っているかな? 揃っていなきゃ私が困る。何故ならその場合、私はあなた達を全員殺さなくてはならないからね。うん、本当に良かった」
声は大人と子供の声をごちゃ混ぜにしたような不思議な声で感情は一切読み取れない。
「ここはどこだ」
六人の中で唯一の眼鏡をかけた男が聞く。
「君は見かけだけだね、そんな質問が意味をなさないってことくらい分かっているだろう? 君達は私の手紙を貰って自らここまで来たんだ、そこがどこだかは私よりも詳しいんじゃないかな?」
人を馬鹿にした声、一切隠そうともしていない。
「違うだろ? 君達の質問すべきことはそんなことじゃない。君達はまずこれから何をするのかを聞くべきだと私は思うね」
「……これから何をするんですか?」
臆病なのか一番縮こまっている女が問う。
すると電話の声は上機嫌に返ってきた。
「素直な子は好きだよ。その素直さに免じて特別にこれから何をするのかを教えようじゃないか。といっても簡単なことだよ? これから君達にはいくつかの試練を受けてもらう、それをクリアしてくれればいい。簡単だろう?」
「どんな試練だ?」
腕を組んだ年配の男が聞く。
「それは面白くない質問だね。どんな試練かはお楽しみにするものだろう? まぁ不安になられても困るし、最初だけ教えてあげよう。最初の試練は迷路さ」
「迷路?」
「ヒントはこれまで。それじゃ試練に入る前に役割を決めて貰おうかな? 下を見てごらん? そこに人の形をした図があるだろう? それから両手足、胴体、頭にそれぞれ穴があるはずだ考えて好きなところに入りたまえ。それが君達の役目になる」
六人はそれぞれ思い思いの場所に散る。
頭に年配、胴体に臆病、左右の手にそれぞれ眼鏡と金髪、左右の足にはそれぞれ長髪と茶髪が入った。
「それでいいのかい?」
電話の声が聞く。六人はそれぞれ応じた。
「じゃあ、始めようか」
そう言うと、描かれていた穴が本当の穴に変わり、六人は漆黒の闇の中へと落ちていった。
「ヒューマンズゲームの始まりだ」
次回、第一の試練『巨大迷路』、お楽しみに。