少年と最後の試験
アリスさんはとある花の前で止まった。
まだ花を開いておらず、蕾の状態の花が数十本。
「この花は私がここに来てから1回しか花を咲かせてくれませんでした。なので、この花、"《青い薔薇》を咲かせてください"」
花を咲かせる。
とても1日でできるわけがない。
アリスさんがここに来てどのくらい経ったのかわからないが、1回しか咲かなかった花を今ここで咲かせる。
「アリスさん。よっぽど僕を不合格にしたいようですね」
意図を読み取るならそう考える。
「えぇ。」
キッパリとそう言われちょっと悲しくなる。
どうしよう・・・
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「あ、あの花咲かせるなんて無理だよ・・・」
「あぁ。花の知識豊富なアリスですら咲かせられなかった花だ。」
「頼む!ショウ!落ちないでくれ!」
「どう思います?ビアンカさん」
「・・・無理だろうね少なくとも今は」
一同、アリスの無理難題に諦めていた。
当の本人はまだ諦めておらず・・・
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「・・・この花について教えてもらうことはできませんか?」
知らないことをするにはまず知る必要がある。
「残念ですが・・・」
ニコーと微笑むアリスさん。
相当落ちて欲しいのか。
と考えると結構悲しくなった。
多分花を傷つけたり枯らしちゃったりしても怒られるだろうし。
僕が悩んでいると、あの時森にいた僕に似た白髪の少年が目の前に立っていた。
少年は口に人差し指を当て、シーっと口を動かす。
『君にはここにいてもらわないと困るからね。ビアンカ達には僕のこと喋らないでね』
少年は独り言のように喋り始める。
『この庭園。奥に小屋があるのわかるかい?』
そう言われ、あたりを見渡すと、確かに奥の方に小屋が見える。
『あそこに花瓶に刺されてる枯れた花を持ってきて。こう呟いて_____。』
僕はその少年の指示に従い、小屋へ向かった。
「・・!どこ行くんですか!」
アリスさんは僕の行動に違和感を感じたのか、追いかけてくる。
小屋はまだ使われているらしく、綺麗だった。
少年が言っていた花瓶は机の上に乗っており、僕はそれを取った。
「返してください・・!」
追いかけてきていたアリスさんが僕の持っているものを見てものすごく怒っていた。
枯れた花をまだ入れているということはきっとこれが1回だけ咲いた《青い薔薇》なのだろう
「す、すいませんどいてください」
僕はアリスさんの猛攻を潜り抜け、先ほどの場所へ戻ってきた。
「そ・・・・れで何をする気ですか!」
アリスさんは息を切らしながら、こちらを見ている。
「悪いようにはしません」
僕はニコッと笑みを送り、少年に言われたことをする。
「《汝、咲き誇れ。誓いの花よ》」
少年に言われた通りの言葉を発す。
青白い光が花園全体を包み、全ての花が咲き誇った。
青い薔薇も同様だ。
僕が持っている枯れた青い薔薇ですら蘇り、美しい花ビラを揺らめかせる。
この場にいた全員が目を丸くした。
「な・・・・んで・・・」
僕の持っていた花瓶の花を奪い取り、アリスさんは抱きしめた。
「こ・・・れ・・・・え?」
状況が飲み込めず、ただ涙をポロポロとこぼしている。
「だ、大丈夫ですか?」
ハンカチを持っていなかったので、自分の服の袖を伸ばし、アリスさんの涙を拭う。
「・・・あ」
ふと、アリスさんと目が合う。
・・・いや、涙を突然拭われたら誰だって見るね。
「なんか・・・ごめんなさい?」
よくわからないけど、泣いているっていうことは嫌なことをされたんだよな?きっと。
「ぷっ・・・」
アリスさんは、吹き出した。
「あはは・・・!」
出会って一回も笑わず、冷たい態度をしていたアリスさんのこぼれた笑みに思わず、見入ってしまった。
アリスさんの笑顔は、《青い薔薇》よりも美しかった。
後ろから拍手が聞こえた。
振り返ると、
ビアンカさん達が拍手していた。
「マジで心配したんだからなー!」
「ショウおめでとう。」
試験が終わった。
僕は、晴れて憧れの魔女様の弟子となった。
「さ。そろそろご飯の時間です。今日はショウくんの手作りですよ」
「まじか!!ショウ!早く行こうぜ!」
ケインに背中を押され、僕は館の中へ入った。
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「・・・ね?合格させてよかっただろう?」
そうイタズラに微笑むビアンカ。
アリスは涙を拭い、ビアンカの方を向いた。
「・・・はいっ!」
アリスは笑顔でそう答えた。
咲き誇った《青い薔薇》が刺さった花瓶を抱きしめて。
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「こ・・・これめちゃくちゃ美味しいね!」
エレナさんはガツガツと僕のシチューを食べている。
「よかったですねゼイユさん。お料理手伝ってくれる人が増えて」
アラモネさんはゼイユさんの方を向いて苦笑いをする。
自分が役に立てないことをちょっと悔やんでいるようだ。
「・・・エレナ。ライン。そろそろあれを出してやればいい」
机に肘をつけ2人の方を見るビアンカさん。
「お行儀悪いですよ。ビアンカさん」
と、その行儀をアリスさんに指摘されるビアンカさん。
アリスさんは静かながらもう2杯目のシチューをいただいている。
気に入ってもらえたみたいでよかった。
「あぁ。ショウ。弟子入り記念だ」
エレナさんは布がぐるぐると巻かれた縦長の何かを。
ケインさんは服と小さな鞄のようなものを持ってきた。
「まずは俺のから受け取れ。ローブと《魔法鞄》だ。弟子入り記念だ」
白色のローブと茶色の鞄。
ローブと鞄を受け取り、早速身につけてみた。
ローブは成長を考えてか、ややでかく作られており、結構ブカブカだった。
「ありがと!ケイン!」
僕はケインにお礼を言った。
「いや。俺は何もしてないよ。ローブも《魔術鞄》もビアンカが作ったんだ。」
「そうなんだ。ビアンカさん!ありがとうございます!」
一応作ってくれた人にもお礼を言っておこう。
「あぁ」
「さ!お楽しみはこれからだ!」
エレナさんが先ほどの布がぐるぐるに巻かれた長方形の何かを僕に渡してきた。
渡された時、思ったより重くて一瞬体が下にいった。
持った時に何かわかってしまった。
布をとり、姿を確認する。
「やっぱり杖ですよね!」
こちらも同様、成長を考えてか、結構デカく、今の僕の身長よりでかい。
魔石以外の部分が鉄でできていて、ひんやりとした感触が伝わってくる。
「「改めて。これからよろしく。ショウ!」」
「・・・はい!」
こうして、僕の弟子としての日常が始まった__。




