少年とお料理
食堂に訪れると、
「おや。お疲れ様です」
ゼイユさんはティーカップを2個用意して待っていた。
「さぁ疲れたでしょう。一度休憩を挟みましょう」
ゼイユさんはティーカップに紅茶を注ぎ始める。
「あ・・・あの!僕紅茶苦手なんですよ」
「おや・・・。残念。ならジュースをお出ししましょう」
ゼイユさんは自分の分のティーカップに紅茶を注ぎ、ジュースを取りに行った。
紅茶の味がどうにも苦手なんだよね・・・。
数分後、コップにオレンジ色の液体を入れたゼイユさんが戻ってきた。
「オレンジジュースです」
「ありがとうございます!」
僕は一言お礼を言い、オレンジジュースを受け取った。
ちょうど喉も乾いていたので、一気に飲み干した。
「ん。美味しい!」
孤児院にいた時飲んでいたオレンジジュースよりも美味しく感じた。
「でしょう?これはアリスさんが育てたみかんをそのまま絞ったもので、普通の果物として食うのも、甘くて美味しいですよ」
「へぇ〜!」
《庭園の管理人》って言ってたし、花を育てている人かと思ってたけど、果物とかも育ててるんだ。
数十分、僕とゼイユさんは談笑し、十分な休息を取れた。
「ふぅ・・・。ではそろそろ試験の説明をしましょう」
紅茶を飲み終えたゼイユさんがティーカップを置き、僕に微笑む。
「私がショウくんに課す試験は"お料理"作りです」
「りょ・・・料理」
料理。作ったことはない。
孤児院に入れられる前も、孤児院にいるときもいつも誰かに作ってもらっていたから。
「あいにくこの館にはお料理をできる人が私しかいないので・・」
「アラモネさんとか案外作れそうですけどね」
「・・・この館で1番料理がお上手じゃないのは彼女です」
「・・・なんかすいません」
結構アラモネさんはなんでも得意そうなイメージだったけど、料理下手なのか・・・。
「あぁ・・でもアリスさんは昔、私が来る前に皆さんにお料理を作っていたとか・・・」
「意外ですね」
ゼイユさんが先にいそうだったけど、アリスさんが先だったのか。
「さて。話を戻します。食材やスパイスはここにあるもので構いません。ただし、食材はなるべく無駄にしないようにしてください」
「わかりました」
食材を無駄にしたら殺すぞと言わんばかりの圧を感じ、少々僕は萎縮した。
まぁとりあえず、材料の確認をしてみよう。
僕はキッチンに入った。
芋に、お肉に、小麦粉に・・・。
本当に様々な材料が揃っていた。
それに、釜戸に金属のフライパン、ボタンを押すと、魔法陣から火が出るものまで。
「ん〜〜。」
僕は考え、作り方を知っている料理を思い出した。
「あれにしよう!」
にんじん、鶏肉、ジャガイモ、玉ねぎ、ブロッコリーを用意し、切る。
玉ねぎは切ると、目が痛くなって涙が出てきた。
「これ。使えば時短になりますよ」
ゼイユさんは僕が何をつくっるのかを察したのか、"あるもの"を差し出してくれた。
「ありがとうございます!」
僕はそれを受け取り、料理作りを進めた。
厚底鍋に具材を入れ、一つにする。
1時間の料理の末、
"シチュー"が完成した。
「ゼイユさん。シチューのルーありがとうございます」
「大丈夫ですよ」
もしルーがなかったらもっと時間がかかっていた。
ゼイユさんは小皿にシチューを少し移し、飲んでみた。
「・・・おぉ。美味しいですね」
目をキラキラさせ、大層気にいってくれたようだ。
「ゼイユさんってご飯は東の方ですか?」
「えぇ」
「じゃあ今日は西で出してみましょう。ご飯を用意しておいてもらえませんか?」
僕の提案にゼイユさんは顎に手を当て感心していた。
「そうですね。たまには西にしてみましょうか」
ご飯は東洋風か西洋風か分かれており、僕は西洋風だ。
東も食べてみたいが、慣れているものを食べたい。
「・・・やっとご飯を手伝ってくれる方が」
手伝ってくれる人がいなかったのかな?
いや、忙しい人が多いのだろう。
「ショウくん。合格にしましょう。最後はアリスさんですね。庭園でお待ちです。」
何はともあれあと1つ。
気を抜かずに行こう。
_______
最後の試験を、アリスさん以外が特で見ていた。
どうやら応援にきてくれたみたいだ。
「・・・皆さんはお優しいですから簡単な試験にしたんでしょうけど。私はそうはいきませんよ」
アリスさんは冷ややかな目でこちらをみる。
「・・・お花の知識はありますか?」
「ちょっと齧った程度には・・・」
アリスさんは呆れた顔で
「はぁ・・」
と大きくため息をついた。
「すいません・・・」
僕は下を向いた。
花に関する本はあんまり見てこなかった。
「・・・何を下向いているんですか。試験を始めます」