少年と婿予定
「確かショウは10歳だったよね?」
ミレイは屋台を見ながら僕に質問してくる。
「はい。あと半年で11歳になりますけど」
質問を返しつつ、遠くの方で僕らを尾行しているアラモネさん・レイ・シエスタ・ヴィオラ様(アラモネさんは認識阻害で見えていない模様)・カロナ・アリスさん・ユウキくんらを見る。
ふと、アリスさんが体調悪そうな顔を浮かべていたことに気づいた。
声をかけたいが、ミレイと回らなければならない。
・・・あとで声をかけるしかないようだ。
「・・・ショウは剣と魔術と弓だったら家系的に魔術が優れてるの?」
「はい。上級以上の魔術は無詠唱では使えませんが。」
一度だけ、ビアンカさんに氷聖級魔術を教えてもらったとき以外に使おうとしたが、無詠唱では発動できなかった。
「無詠唱かー!」
さっきから質問されてばっかだな。
「・・・ミレイさんはなんでお婿さんを探しているんですか?」
僕が質問すると思っていなかったのか、ポカンと一瞬呆けた顔になる。
「死ぬ前に愛を体験しておきたいんだ」
「今から探さなくたってもっと大人びてからでもいいじゃないですか?」
12歳で婿探し。
もっと・・・17、8頃からすればいい。
なんで今?
「・・・寿命的に死ぬことはないかもしれないけど、殺されちゃうかもしれないから」
「そんなすぐ殺されちゃうんですか?」
「わかんない」
「ドライは結構ミレイに冷たかったけど、兄弟なのに似てないねー。アイナちゃんとは似てるかもしれないけど・・・」
ミレイはそう言って僕の顔を覗き込んでくる。
「・・・兄も妹も僕には不愛想ですよ」
「あは。なんか想像できちゃう」
そう言いながらミレイは微笑んだ。
僕は無意識に微笑んだアリスさんとミレイを重ねてみていた。
どこか似ている気がした。
「ミレイさんは兄弟とかいないんですか?」
僕の質問にミレイは動きを止める。
「居たはいたんだけど殺されちゃったから」
あんまり触れてはいけなさそうだ。
「そうなんですか・・・失礼なことをお聞きしました」
「ところで、僕はまだお婿さん候補に入っているんですか?」
お父様はほぼ確定みたいなことを言っていたけど・・・。
「ん~候補というか・・・うん。決めた。ミレイの旦那さんは君!」
ミレイはそう言って僕に指をさす。
「えーっと・・・」
拒否したら僕はどうなるのだろうか。
返事に迷っていると、兄と父、そして伯爵がやってくる。
「おや。やっと決めたのですか?ミレイ?」
「うん!」
ミレイはそういって僕の手を取り、
「私!ミレイ・シルヴィアは!ハーレイを取り仕切るアクレシア家のショウと結婚しまーす!」
と声高らかに宣言し、僕の手を握りながら万歳をする。
ミレイの声はハーレイ中に響き渡り、人々が歓声と拍手を送る。
それをみてお父様は安堵の息を漏らし、兄はじっと僕を見つめる。
そうこうしているうちに国王がやってくる。
「なら結婚式は派手にやらないとのぉ。我が城で盛大にするのはどうじゃ?」
国王の提案にミレイは首を縦に振った。
僕に拒否権というものはこの世に存在しないらしい。
僕はすべてのことに苦笑いで返す。
人々の歓声と拍手の音が頭に響き息ができなくなってゆく。
視界が揺らぎ、倒れかける寸前
誰かに抱き着かれる。
白いローブを纏い、そのまま僕を抱え逃げようと試みるも、
「逃げれると思うな野党めが」
お父様や近衛騎士らに囲まれる。
中でもお父様が持っている剣のようなものは禍々しい雰囲気を纏っており、黒い鞘から出されたやや白い刃からは圧迫感を感じる。
全員が杖や剣を構えており、逃げることは不可能だろう。
ローブ越しのアリスさんは相当焦っているようだ。
策を考えず飛び込んできたみたい。
アリスさんは魔法鞄から短剣を取り出し、正面の騎士目掛け踏み込む。
あと少しで短剣が騎士に当たる寸前
「申し訳ありません」
空気を読まない拍手とともに伯爵が声を発す。
それとともにアリスさんが動きを止める。
息を切らし、青ざめ、小刻みに体が震えている。
「・・・申し訳ありません。その野党は僕が責任をもって罰します故、見逃してはいただけないでしょうか?」
そういって伯爵はアリスさんに刃を向けるお父様の手を下ろさせようとする。
だがお父様はそれに抗い、お父様の手がプルプルと震えている。
「いやいい。俺の国で出た野党ぐらい俺が罰する」
伯爵の申し出を断り、お父様は再びアリスさんに刃を向ける
「・・・これは伯爵の命令なんだ。国王様のお気に入りだからといっても、立場上私の方が上です。
従ってください」
伯爵がお父様にそう言い、少し悔しそうに剣を下ろした。
「すみません。国王様。ハーレイの皆様方。この野党は私が自国へ連れ帰り、罰しましょう」
伯爵は声高らかにそういう。
その言葉に国王や民の人々が歓声を上げる。
伯爵が徐々にこっちを近づき、僕らの後ろで歩みを止め、アリスさんの肩に手を置いた。
アリスさんが呼吸を止め、体を大きくびくつかせる。
「さぁ行きましょう」
アリスさんは僕を抱えていた手をゆるませ、ゆっくりと立ちあがった。
アリスさんの顔はまるで何かにおびえているようだった。
アリスさんと伯爵・・・関係があるのだろうか?
「伯爵様。よろしければ僕もついていってもよろしいでしょうか?」
無意識に伯爵様にそういってしまった。
伯爵はやや驚いたような顔をしていた。
「私もショウと一緒にいたい!パパ!いい?」
ミレイも僕に続き伯爵は少し悩んだうえで首を縦に振ってくれた。
「おい。ティレク。ショウが行くならどうせなら娘たちも連れてってはくれないだろうか?」
国王は伯爵に頼む。
もちろん国王の言葉に逆らえるものは存在せず、
バザー終わり、僕、レイ、シエスタさん。(ヴィオラ様は婚約者とバザーを楽しむので欠席)
それと、認識阻害をかけ、獣の姿になったアラモネさんと、カロナ、ユウキくんの6人でお父様が用意した馬車に乗り込み、伯爵の馬車、アリスさんを閉じめてある馬車、僕らの馬車
3つの馬車は伯爵の住まうフェイルビア王国へと向かう




