少年と空間
ビアンカさんの転移が終わった。
転移先は平野で動物も人もいない。
「ひっさびさに来たなビアンカの異空間」
エレナさん達も来ていた。
応援に来てくれたようだ。
「安全を考えてここを使おう」
「はい!」
僕は杖を握りしめた。
「今から教える氷聖級魔術を完全詠唱しろ」
と、ビアンカさんがお手本を見せてくれるようだ。
「____全てを凍てつかせし蒼天よ、凍てつく理を我に示せ。
万物を鎮め全てを封ずる神の慈悲よ今ここに顕現せよ。
《凍冷恩寵》」
詠唱が終わった瞬間、ビアンカさんの周りを中心とし、半径100メートルほどが凍てつき、地面から氷柱が生えている。
「この魔術は対象を絶対に凍てつかせる魔術だ。さぁやってみろ」
ビアンカさんは先程の《凍冷恩寵》を軽々と消し、僕に合図を送る。
少し遠くで観察していたエレナ達に近づいたビアンカ
「間違い無いよね。ビアンカ」
エレナらは確信していた。
「あぁ。間違いない。・・・というか最初からわかっていた」
「・・・あの無限の魔力量。自分への自己肯定感の低さ。日に日に"彼"にしか見えないよね」
「ビアンカさん。また同じ道を踏むことがないようお願いします。」
「私を裏切らなければそもそも攻撃しない。今回の"あいつ"はそんなことしないと信じているよ」
_____
「____全てを凍てつかせし蒼天よ、凍てつく理を我に示せ。
万物を鎮め全てを封ずる神の慈悲よ今ここに顕現せよ。
《凍冷恩寵》」
完全詠唱を終えた僕の目の前に飛んできたのは先程ビアンカさんの時に見た氷の世界。
息が凍っていき、寒い。
先程アラモネさんからもらったマフラーを身につけておいてよかった。
「おめでとうショウ」
ビアンカさんは僕の魔術を消し去り、近づいてきた。
「これからどんどん魔術を教えるから覚悟してね」
そうイタズラに微笑むビアンカさん。
ビアンカさんが転移魔法を発動しかけた瞬間、僕とビアンカさんの間の空間に穴が開いた。
その穴から手が飛びてきて、僕を掴んだ。
空間へ引っ張られる。
穴に完全に入り切るところで、ビアンカさんとゼイユさんが助けてくれた。
空間には下半身が入っており、上半身をビアンカさん達が引っ張ってくれている状態。
「ビアンカさん!魔術使えばどうにかなるんじゃないんですか!!?」
僕をまるで株のように引っぱるみんな。
そんな中、アラモネさんが1番後ろで僕を引っ張っているビアンカさんにそう聞いてみる。
「魔術を使える相手じゃないんだ!」
ビアンカさんは空間の先にいいる人物を知っているようだ。
「とにかく踏ん張れぇええ!!!」
大人数人ですら僕を引っ張れないほど怪力のようだ。
でも僕を空間へ引っ張ろうとしている人の力は一切感じられない。
_____いや、僕の体が空間へ行こうとしている。
誰かが僕を招いているんだ。
「頑張ってください!」
僕の手を掴んでいるゼイユさんは僕にそう声をかけてきた。
足をバタバタさせるも、特に何に感じもしない。
ビアンカさんが魔術を使える相手じゃないというなら僕がおそらく魔術を使っても意味がない。
『 アンちゃん達殺されたくなかったら手離させてよ 』
空間の先からそう囁く女性の声が聞こえた。
ビアンカさんと初めて会った時に感じたのと同じ感じ。
強い殺意。
本能が関わることを拒絶している。
それもビアンカさんより圧倒的に。
『 ほら はーやーく 』
急かされ、僕は慌てる。
僕のことを必死に助けようと頑張ってくれているのに。
「みなさん。・・・ごめんなさい」
僕は火上級魔術《爆裂》で、みんなの足元目掛け発動させた。
結果、ゼイユさんが無意識的に避け、僕は空間へ引っ張られ、みんなと離れた。
_____
空間を抜けた先は、僕の生まれた場所。
「ご苦労様です」
机に肘をつき、僕を連れてきたであろう人にそう声をかける豪華な服を着た銀髪の男。
そして僕の方に目線をやり、口角を上げた。
「無詠唱で魔術を行使できる少年と聞いてみて探してみれば・・・まさか一度捨てた"失敗作"だったとは」
ウェイド・アクレシア
ハーレイを取り繕う貴族にして、
_____僕の
「お父様・・・」
血のつながった親だ。
「何故僕をここへ?」
僕はお父様に疑問を晴らすためそう聞いた。
「我が家に見合いの話が来た。相手は令嬢なので、兄を差し出すと言ったら相手が"無愛想"と言って拒否されて な。お前を使おうと孤児院へ向かったのだが既に引き取られた後だった。
そんな時、ハーレイで無詠唱魔術を使える少年の話を聞いて養子にして伯爵家に出そうと思ったら・・・
____お前だったという訳だ」
思わず笑いをこぼすお父様の神経を疑った。
「つまり僕を伯爵家の婿にするためにここへ呼んだと?」
「あぁ。いや。才能が開花したならここへいても良いか。息子と名乗っても恥ずかしくないほどに成長したのだからな」
傲慢なお父様に呆れた。
「元の場所へ返してください」
僕がお父様にそういうと、父は椅子に座っているローブの人に視線を送る。
するとローブの人は立ち上がり、僕に杖を向ける。
「そのお方は"破滅の魔女" カルナ・レイブン様だ。」
破滅の魔女・・・?!
魔女はビアンカさんしかいないんじゃ・・・。
「カルナ様は"終焉の魔女を葬るため善処されているお方だ。」
ビアンカさんを・・・?
「お前はあの場所へ帰るのは無理だ。カルナ様はお前を監視する仕事を引き受けてくださったのだ」
お父様のその一言は僕をどん底へ落とすには十分な一言だった。
「おかえり。2人目の息子よ」
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ショウが連れ去られた後、魔女の館のメンバー達は、食堂にて話し合いを行なっていた
「破滅の魔女・・・・?」
ビアンカはショウを連れ去った人物について仲間達に説明していた。
「あぁ。彼女がショウを連れ去った以上、助けるのは無理だ。」
ビアンカは淡々とそう伝える。
その態度にカっとなったのはケインとアリス。
「ざっけんな!!諦められるかよ!!」
「私達はショウくんに助けられてきました・・・今私たちが助けないでどうするんですか!!」
2人は机を叩き立ち上がっていた。
「少なくとも今は無理だ。私達は、魔術も剣も弓も攻撃手段が通用しない相手に挑みに行くわけにはいかない」
「話を聞いてほしい」
ケインとアリスは悔しそうな顔を浮かべ、椅子へと座り直し、ビアンカの方を向き直した。
「私の知っていることを教えよう_____。」




