少年と誕生日
誕生日がやってきた。
今日は皆さんすごい忙しそうだったが、手伝うと言っても「大丈夫!」の一点張りだった。
僕はすることがないので、ビアンカさんの図書館にある魔導書を拝借し、館前で練習する。
裏庭はアリスさんの庭園なので花を危険に晒した僕の命も危ない。
「と言っても上級魔術もそろそろ終わるな〜・・・」
魔導書のページを見ながら、僕は独り言を呟く。
僕の今の魔術取得はこんな感じ。
水初級◎ 中級◎ 上級◎
火初級◎ 中級◎ 上級⚪︎(爆裂、(噴火のみ。あと1つで◎)
風初級◎ 中級◎ 上級◎
土初級◎ 中級◎ 上級◎
神聖初級◎ 中級◎ 上級◎
闇初級◎ 中級◎ 上級△
氷初級◎ 中級◎ 上級◎
雷初級◎ 中級◎ 上級◎
闇魔術はビアンカさんあんまり教えてくれないんだよな。
闇魔術初級と中級◎とかいたが、
闇魔術は他の魔術とはちょっと違うようで、
《強化》、《重力操作》、《付与》、ぐらいしかできない。
《付与》は付与できるものがたくさんあり、それを勉強するのに時間がかかった。
と言っても火魔術は中級レベルになるとあたりに気概がで始めるので、1人でやるのはやめておこう。
って考えると、本当にすることがない。
魔導書のページが終盤へ来た時、
見たことない言語で書かれているページがあった。
その意味のわからないページから5ページまでが同じような言語で書かれている。
僕はそのページの内容を解読するため、ビアンカさんの図書館にある言語について書かれた本を探した。
10万冊はゆうに超えているであろうずらりと並んだ棚に詰められた本達。
普通だったら探すのは至難の業だが、魔術を極めに極めたビアンカさんの図書館。
原理は不明だが、欲しい本を念じればその本が棚から飛び出て、欲しい本が目の前にやってくる。
今回は言語の本と念じたが、5冊しか出てこなかった。
もっとあるかと期待はしたが、ハズレだったようだ。
「・・・ん結構埃かぶってる」
飛び出してきた言語の本はものすごく埃がかぶっており、長年誰もこの本を開かなかったのだろう。
5冊の本を開いてみたが、あのページの言語とは一致しなかった。
「はぁ・・・」
結局その後、数時間かけても成果は得られず僕はただ疲弊していた。
「・・・ショウ。いい?」
図書館で本に埋もれていると、ビアンカさんがやってきた。
「・・・それにしても本に埋もれるのが趣味だっけ?」
と、ビアンカさんにいじられる。
「違います」
僕は本を《重力操作》を駆使して元の位置に戻した。
「それでどうしたんですか?」
僕はビアンカさんの方を向き直した。
「あぁ。おいで」
と事情をろくに伝えられないまま、僕はビアンカさんに手を引かれ、廊下を歩いた。
「・・・この館は楽しい?」
歩いていると、ビアンカさんが立ち止まり僕にそう聞いてきた。
「はい!前の生活より最高ですよ!」
僕は素直にそう返した。
ビアンカさんは僕の答えを聞いて嬉しそうに
「そうか」
と言っていた。
ビアンカさんに連れてこられたのは食堂だった。
「食堂・・・?」
ご飯の時間にはまだ早いよね?
僕が疑問に思っているのを察したビアンカさんが僕の後ろに周り、背中を押した。
振り返ってビアンカさんを見ると、
「開けてみな」
と言われた。
僕は食堂のドアを開けた。
一瞬の眩しい光に目を細めた。
そして、派手に装飾され、豪勢な料理が並んでいるいつもとは違う景色を見た。
僕が困惑していると、
「ショウ!誕生日おめでとー!!」
ケインが声を大きくして、そう言った。
ケインに続き、アラモネさんやアリスさん。ゼイユさんにエレナさん。後ろにいたビアンカさんも
「誕生日おめでとう/ございます」
と祝いの言葉をくれた。
「え・・・。でも僕・・・誕生日・・・言って・・・」
視界が滲み、口が震える。
暖かい水が頬を伝い、ポロポロと、落ちていく。
「パインがショウの孤児院の養子申請を出したときにお前の個人プロフィールの書かれた紙をもらったんだ。」
エレナさんが屈み、僕の頭を撫でる。
「ショウくんが泣いてるのなんて初めて見ました」
と、驚いた顔でこちらを見るアラモネさん
「大丈夫です。私たちは見捨てたりしません」
アリスさんが僕を抱きしめる。
愛情をもらったことがない僕が、欲しかった人たちから注がれた愛情。
生まれて初めて大泣きをした。
その時のショウはいつもの大人びた少年ではなく、年相応の少年に見えた。
「ショウ!誕生日はこれからだぞ!」
エレナさんの言葉で僕は涙を拭った。
「はいっ!」
僕らは席につき、豪勢なご飯をいただいた。
「おいひぃ!」
「そんなに慌てなくてもご飯は逃げませんよ」
ゼイユさんは僕の口についていた食べかすをハンカチで拭いてくれた。
「・・・そうだ。プレゼントがあるんだ」
ケインは他のみんなへ目配せをし、各々、マジックバッグから包装されたプレゼントを取り出す。
「開けて見て」
僕はみんなから包装されたプレゼントを一つずつ開けていった。
まずはケインから。
ケインのプレゼントを開けると、中にはランタンが入っていた。
魔力を一定量注ぐと魔石が反応し、火が灯る仕組みらしい。
「ありがとう!大事にするね!」
「あぁ。そうしてくれると助かる」
ケインは目を開け、ニコッと微笑む。
「目開けてるの初めて見たかも・・・?!」
と僕は物珍しさにまじまじと見る。
「そんなにみるな!」
とゲンコツを入れられた。
次にアラモネさん。
開けてみると、空色のマフラーが入っていた。
どうやら手編みのようだ。
「僕のために編んでくれたんですね!ありがとうございます!」
「えへへ・・・!ショウくん寒いの苦手ってだったから・・・」
「あはは・・・」
確かに僕は寒いのが苦手だ。
朝寒すぎて起きたくなくなる。
「大事にします!」
次にゼイユさん。
ゼイユさんのプレゼントを開けると、
短剣が入っていた。
鞘から剣を引き抜くと、銀色の刀身が露わとなった。
うっすらと模様が入っているのがわかる。
エレナさんが言っていたけど模様が入っているのは結構いい武器だって言っていた気がする。
「ハーレイの時に短剣を見ていたのでプレゼントさせていただきました」
「!バレてました・・・?」
実はケインが短剣を持っていて一度だけ使ったことがあった。
なんだかしっくりきて、自分用に欲しいと思っていたのだ。
「大事にします!」
「えぇ」
次にアリスさん
アリスさんは花をくれるのかなと予想していたが、全然違った。
プレゼントを開けると、
ゴーグルが入っていた。
フレームが銀でできており、ややレトロ感を感じられる。
早速つけてみると、サイズが合っていなかったらしく、すっと落ちてきた。
僕は落ちてきたゴーグルとみんなを交互に見た。
みんなはツボに入ったのか笑っている。
ケインに至っては腹を抱え呼吸できないほどに笑っていた。
「す・・すいません。1番小さく調節したんですが・・・・」
と謝るアリスさん。
だが僕の心に鋭い槍を突き刺す。
「1番小さく・・」
「わーー!!!ごめんなさい!!!あ、あの!そのゴーグル《魔術道具》で・・・!」
謝られたが、僕には届かず、体が小さいことに涙していた。
2年前よりかは大きくなったんだけど・・・。
「まだ10歳だ。人が大きくなるのは13歳からだよ」
とビアンカさんが慰めてくれた。
「いいですよ・・・13歳ぐらいになったら大きくなってやりますもん」
と不貞腐れた。
「さぁ。私とエレナのプレゼント開けてみて」
僕は口を尖らせながらエレナさんのプレゼントを開けた。
中には銀色のチェーンに星のような装飾が施されているアクセサリーのようなものが入っていた。
「これは?」
僕はそのアクセサリーのようなものを取り、エレナさんに聞いた。
「あぁ。それは杖の威力をさらに上げてくれる代物だつけてみて」
と言われたので僕は魔法鞄から杖を取り出した。
元々魔石の大きさによって魔術の威力が倍になるけど。
僕の魔石は結構大き方で僕のが4倍。
アクセサリーをつけてみると、杖の周りに巻き付いて浮いた。
「おおよそ8倍だな」
エレナさんは《鑑定眼》を開眼させ、杖の詳細を見てみる。
「なるほど・・・ありがとうございます!」
僕は杖をしまいかけたが、ビアンカさんに止められた。
「ショウ。私からお前のプレゼントは聖級魔術の伝授だ。」
「本当ですか!!」
僕が目をキラキラさせていると、ビアンカさんは自分の杖を取り出した。
「お前は氷が1番適性がいい。上級魔術以上の伝授はハーレス王立魔法学園の校長からの許可がいるからね・・・。いやー苦労したよ」
と相当苦労したようでドンよりしているビアンカさん。
「まぁいいや。異空間へ飛ぶからおいで」
と、ビアンカさんは転移魔法を使った。




