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村娘、女王になる  作者: 三月
摩擦病
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第六話 迷案?

この世界の万物に満ちあふれる魔力には、プラスの性質を持つ魔力とマイナスの性質を持つ魔力が存在している。二つの魔力の違いを端的に表せば、プラスの魔力は人間達を取り巻く動物や物質。マイナスの魔力は魔族達を取り巻く物質に宿る。


 基本的に人間は、プラスの魔力が流れる地域に住みつき、魔族はマイナスの魔力が流れる地域に住み着いている。もしも人間がマイナスの魔力地帯に足を踏み入れると、たちまち病に伏してしまい、1ヶ月程度で死に至ってしまう。反対に、魔族がプラスの魔力地帯に踏み入れれば、同じく1ヶ月かけて体が溶けていってしまう。


 プラスとマイナス、相容れない二つの魔力が現在、混ざり合ってしまっている。


 魔王と勇者という、世界中に影響を与える程の強大な双方の魔力を持った存在が突如として消滅したことで、世界の魔力が不安定になっていることが原因だ。


「それによって現在、我が国ではマイナスの魔力の混ざった大気によって、体内の魔力のバランスが乱れる魔擦病という病が流行っております」


 魔擦病は、人間がマイナスの魔力地帯に訪れたときに起きる病の名である。


 現在この国。いや、世界中で流行っているこの病は、プラスの魔力地帯にマイナスの魔力が混ざり込んでいるだけの状態であるため、今のところ死者の数は少ない。


 しかし、激しい頭痛や吐き気に時より襲われることが多く、生活が非常に困難となり、仕事をすることさえままならない国民達が山ほど存在する。


「私の娘は、病が流行りだした頃からこの病にかかり、今も尚頭痛と吐き気に苦しみ、体も細くなっていき……ベッドから出ることすら、困難な状況に……」


 死者が少ないと言っても、数人の犠牲者は存在している。その数人の死者が出たのは最近であるため、魔擦病のピークが近々訪れ、大量の国民の命が失われてしまう可能性がある。


「そうなってしまえば、この国は滅びます」


 この状況を打開するために、ドレッドは反乱を起こした。これまで幾度となくドレッドはこの病のことを王宮会議の中で訴えてきたが、王がいない間、政権を握っていた貴族達達によってことごとくもみ消されていた。


 死者が出始めた最近になり、貴族達が徐々にごまかせなくなってきたころ、エレナが女王に即位したため、貴族達が自分たちにとって扱いやすい無知な女王をたてて、国の政権を自分達の物にしようとしていると考えたため、ドレッドはそれを止めるべく反乱を起こしたのだった。


「その病気って、直せないの?」


 素朴な疑問を投げかけるエレナ。


「治せることには治せるのですが……」


 言いにくそうにうつむきながら、ドレッドは続けた。


「魔擦病は古来から存在する病故、勿論体内の魔力のバランスを安定させる薬があるのですが……現在、旧帝国時代の貴族達によって国内の薬が買い占められ、国民の薬の供給が行き届かなくなっております」


「え、何それ酷い……自分達ばっかり助かろうなんて」


 愕然とするエレナに、マークは言った。


「薬の効果は3ヶ月。それを過ぎれば再び魔擦病にかかるようになってしまいます。一族を存続させるため、彼らが必死になって薬を集めるのも当然かと」


 問題はそこだ。一度薬を使ったとしても、寿命がたった3ヶ月増えるだけ。であれば、大量にある薬を国民達ではなく自分たちが独占し、世界の魔力が元に戻る手立てが見つかるまで使い続け、人類を存続させる。それが旧帝国の貴族達の考え。貴族達がドレッドの訴えをもみけしてきたのも、それが理由だ。


「冷たいね、貴族の人達」


 そう呟くエレナに対し、再びドレッドが問題提起する。


「このままでは、確かに貴族達は生きながらえますが、いずれこの国は滅んでしまいます」


「うーん」


 眉間にしわを寄せ、頭をガシガシ掻いて考え込むエレナ。整えた髪が崩れそうになってハラハラするマーク。本当にちゃんと考えてるときはあんな感じなんだと、同じ失敗をしないよう観察するリオス。真面目に考える他の師団長達。


「貴族の人達から、王宮のお金で薬買えない?」


 リオスが気まずそうに手を上げて答える。


「税収も減っていますし、戦争による被害もあって、今の王宮にはそこまでの財力は無いかと……」


「あ、そうだ」


 エレナの表情が、パーっと明るくなると、エレナはその場の全員の顔が凍り付く一言を放った。


「宝物庫の宝物と、薬を交換してもらえないかな……」

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