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第三十三話 死にたくない

「ぅ……うん、ありがとうマーク」


「さあ、早く青の魔方陣の方へ行きましょう」


 マークは強引にエレナの手を掴むと、「失礼いたします」と言い強引に引っ張った。


「ま……待って!マーク!」


 エレナはもう片方の腕でマークの腕を引っ張る。


「何ですかエレナ様!こんな時に!」


 焦りの表情を見せながら言うマークに、エレナは言った。


「私が帰ったら、商店街の皆が死んじゃう!」


 エレナがそう言うと、マークは再び無理矢理エレナの手を引っ張って走り出した。


「ちょ、ちょっとマーク!」


 必死に止めようとするエレナをなだめるように、マークは言った。


「安心してくださいエレナ様が層お望みになられると判断し、私もミルヴァ団長も、初めから彼らを殺すつもりはありません」


 マークはエレナの方を振り向いて言った。


「彼らはエレナ様の周りに、何も罠を仕掛けていなかった。つまり、彼らはどこかで、貴方が助け出されることを望んでいるのです。俺とミルヴァ団長のすべき事は彼らの戦意を喪失させ、王宮にいる女王の元に連れ帰ることです。その後の事は、エレナ様……貴方が好きにお決めください」


 マークの真剣な眼差しを見て、エレナは不安そうにミルヴァや商店街の方を見る。

 そして、エレナは気づく。血が、一滴も垂れていないことに。


「分かった……」


 エレナは自ら青の魔方陣の方へと走る。


「エレナ様……」


 初めてエレナが素直に言うことを聞いた事に、一瞬驚くマーク。

 エレナが青の魔方陣の上に立つと、徐々に彼女の体が歪み始めた。


「マークは、来ないの?」


 エレナの問いかけに、マークは不器用な笑みを浮かべながら言う。


「私は、団長に加勢して参ります」


「そっか……分かった。お願いね、マーク」


 マークの事を信じ切ったように後を託したエレナに向け、マークは剣を鞘に収めて跪いて一言。


「仰せのままに」


 マークは、エレナが転送されるのを見届けた後、赤の魔方陣に黄色の魔方陣を重ねて足下に展開。


 マークは超人的な跳躍力でジャンプすると、商店街の人々の群れの中心へ降り立つ。


「エレナ様はこちらで確保した。打てば仲間に当たるぞ!」


 そう叫ぶと、商店街の人々の攻撃が一瞬で止る。

 次の瞬間。マークも商店街の人々の群れへと切り込んでいく。


 2対数百。多勢に無勢。敵は一般人とはいえど、一級品の魔道具を無尽蔵に使って攻撃してくる。


 だが、マークとミルヴァは臆すことなく彼らに立ち向かった。

 その戦いぶりは、まさに芸術と言っても良い程だった。

 ミルヴァは戦いの中で、一切魔法を使わなかった。その剣技と研ぎ澄まされた勘、戦いの中での発想力。それについてくる事ができる肉体。


 魔王との戦争を生き抜いてきた彼女にとっては、有象無象の集団の魔法攻撃は全て単純に見え、緊張感もさほどない。


 只淡々と一人ずつ、攻撃を全て躱しながら、一体を確実に急所に浴びせていく。


 反してマークの戦い方は、ミルヴァとは違って非常に華やかだった。

 決して強い威力の魔法が放てるわけではない。だが、彼は多彩だった。

 自然を操る緑の魔方陣で炎を生み出し、それを黄色の魔方陣(拡大 縮小)で巨大化。

 更にそこに水色の魔方陣(無形の物を操る)を展開することで、炎の温度を縮小する。

 そして、殺さないように、熱すぎない巨大な炎の玉を作り上げ、ミルヴァの以内反対側の陣営に、その炎を放つ。

 早すぎず、遅すぎない。絶妙な速度の炎の玉が、彼らに逃げる余裕を与え、同時に注意を引く。

 そして懐に忍ばせていた短剣に小さな緑の魔方陣を展開させ、巨大な炎に向けて投げる。

 自然の物を操る緑の魔方陣が、炎を破裂させる。


 ドカン!


 けたたましい轟音と共に、炎は花火のように爆ぜ、いくつもの小さな火の玉となって敵に襲いかかった。


「きゃあー!!」


「ぐあああ!!」


 敵の悲鳴が、金の亡者達の悲鳴が、響き渡る。


「剣と違い、炎は例え皮膚が硬くても、お前達に痛みを与える。抵抗を続けるのなら、炎は更に熱くなるぞ」

 

 たった一発の炎で、敵は半壊。

 ミルヴァはもう半分を目にも止らぬ早さで次々と斬っていく。


「くそ……どうしてこんな!こんなはずじゃ!」


 八百屋の亭主がうろたえ、一歩後ずさったその時。


「お前が、最後の一人だ」


 ミルヴァの刃が、八百屋の亭主の首筋を捉える。


「な……ぁ」


 驚き、戸惑いを隠しきれない八百屋の亭主。

 だが、彼は自らを奮い立たせる。


「うおおおおおおお!」

 右手に持っていた剣をミルヴァめがけて振り上げた瞬間。


「遅い、素人め」


 ミルヴァが八百屋の亭主の首を斬ると、その衝撃で八百屋の亭主は3m程ふっとばされた。


「ぐおっ!」


 吹き飛ばされた場所で、八百屋の亭主は意識を失う。


「後は子供と老人を除き、動ける物の急所は全て、一度斬った。次の私の斬撃は、確実にお前達の命を奪う」


 気づけば、敵のほとんどがマークの炎によって倒れているか、ミルヴァの剣撃によって吹っ飛ばされていた。

 ミルヴァの脅しによって彼らが攻撃に一瞬の躊躇を覚え、静寂が続いたその時、マークが口を開く。


「お前達、命が惜しければ武器を捨て、降参しろ」


 確実に、その場にいる全ての人間が、マークの言葉を聞いた。

 だが、誰一人として武器を捨てる物はいなかった。

 理由は一つしかない。


「降参なんてしたら、俺達殺されちまう」

「どれだけ盗んだと思ってる。どれだけ傷つけたと思ってる」


「国中でテロを行い、壊し、盗み、果てには女王を誘拐してるんだ。殺されるに決まってる」


 次の一撃を加えれば、もう彼らに命はない。だがなおも、彼らは立ち上がる。


「この子一人じゃ、こんな世界を生きてけない……」


 アイラの両親も、再び武器を握って立ち上がる。背後で震えている、アイラをかばうように。


「俺達は、この子の為にも死ねない」


 そしてまた、彼らは口々に言う。


「死にたくない」……と。

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