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第十六話 価値の見方

「槍の勇者、槍田勇人の神器たる、天啓の槍。この3つの神器であれば、私は薬を差し出しましょう」


 イザベラの宣言と共に、辺りは静まりかえる。


「……」


 その3つの神器は、ユーシア王国を象徴する、何よりも大切な武器。死んだ3人の勇者の生きた証。元々資産には入れていなかったため、国の財政に痛手はない。だが……。


「本当に……本当に、それを渡さないと駄目?」


 声を震わせながら、エレナは小さな声で言った。

 だが、イザベラは冷たく言い放つ。


「ええ、それ以外の条件では交渉を受け入れない。女王様がここに来る前から、そう決めておりました」


 きっと、家を守るという大義や、政治的なんらかの策略があるのかもしれない。それでもエレナは、イザベラとの会話の節々から漏れ出た思いを感じ取る。


 決して気持ちが通じ合わない、この感覚。

 自分から夫と立場を奪った男の妻に対する、底なしの憎悪を。


「そう……だよね」


 きっと分かりあえない。いくらエレナが歩み寄ろうとしても、イザベラは拒絶する。


 そう簡単に、上手く行くわけがない。

 国を、守るということが。


 震える拳を握りしめたエレナの瞳から、涙がこぼれた。




 静寂は、続いた。そこにいるすべての人間が、エレナの次の言葉を待ち続けた。



 彼女は、どう答えるのかと。



「分かりました……」


 絞り出すようなエレナの言葉に、兵士達全員が驚いたように目を見開いて顔を上げる。


「3人の勇者の神器、お渡しします……それくらいしなきゃ、イザベラさんもやっぱり、納得できないよね」


 涙を流しながらも、エレナは、笑顔で言った。どこまでも、自分を拒絶する相手にすら、思いを、愛情を向けて……。


「まさか、本気で言っているわけではありませんよね。勇者のもつ神器は、魔族との戦争を終わらせたユーシア王国の栄光を示すもの。そう易々と手放しては、国民にも、戦争を共に戦った他国にも、示しがつきません。3つの神器を渡すと言うことが、どういう意味なのか……村娘の出だからといって、分からないではすみません。決して」


 誰よりも先に、エレナの申し出に対し口を開き、考え直すよう口を開いたのは、マークでもドレッドでもなく、イザベラ自身だった。


 表情こそ変わらないが、その声色は大きく乱れ、凜々しさを少し失っている。


「ごめんなさい……色々私なりに考えたけど、やっぱり私には、そういう意味とか良く分からないし、先を見通せる知識もない……本当、女王として最低だと思う」


 涙を拭い、イザベラの目を再び真っ直ぐ見つめて言った。


「でも、そんな私を、ユートは女王にした……だから私は、ユートが信じた私を信じて、私なりに一生懸命考えて選択した道を、進んでいこうって、決めたの」


 エレナの言葉にとうとう、これまで保っていたイザベラの凜々しさが崩れた。


「勇者の神器の価値も分かっていない無知な村娘の女王など……交渉に値しない!」


「槍の勇者、槍田勇人の神器たる、天啓の槍。この3つの神器であれば、私は薬を差し出しましょう」


 イザベラの宣言と共に、辺りは静まりかえる。


「……」


 その3つの神器は、ユーシア王国を象徴する、何よりも大切な武器。死んだ3人の勇者の生きた証。元々資産には入れていなかったため、国の財政に痛手はない。だが……。


「本当に……本当に、それを渡さないと駄目?」


 声を震わせながら、エレナは小さな声で言った。

 だが、イザベラは冷たく言い放つ。


「ええ、それ以外の条件では交渉を受け入れない。女王様がここに来る前から、そう決めておりました」


 きっと、家を守るという大義や、政治的なんらかの策略があるのかもしれない。それでもエレナは、イザベラとの会話の節々から漏れ出た思いを感じ取る。


 決して気持ちが通じ合わない、この感覚。

 自分から夫と立場を奪った男の妻に対する、底なしの憎悪を。


「そう……だよね」


 きっと分かりあえない。いくらエレナが歩み寄ろうとしても、イザベラは拒絶する。


 そう簡単に、上手く行くわけがない。

 国を、守るということが。

 震える拳を握りしめたエレナの瞳から、涙がこぼれた。




 静寂は、続いた。そこにいるすべての人間が、エレナの次の言葉を待ち続けた。



 彼女は、どう答えるのかと。



「分かりました……」


 絞り出すようなエレナの言葉に、兵士達全員が驚いたように目を見開いて顔を上げる。


「3人の勇者の神器、お渡しします……それくらいしなきゃ、イザベラさんもやっぱり、納得できないよね」


 涙を流しながらも、エレナは、笑顔で言った。どこまでも、自分を拒絶する相手にすら、思いを、愛情を向けて……。


「まさか、本気で言っているわけではありませんよね。勇者のもつ神器は、魔族との戦争を終わらせたユーシア王国の栄光を示すもの。そう易々と手放しては、国民にも、戦争を共に戦った他国にも、示しがつきません。3つの神器を渡すと言うことが、どういう意味なのか……村娘の出だからといって、分からないではすみません」


 誰よりも先に、エレナの申し出に対し口を開き、考え直すよう口を開いたのは、マークでもドレッドでもなく、イザベラ自身だった。


 表情こそ変わらないが、その声色は大きく乱れ、凜々しさを少し失っている。


「ごめんなさい……色々私なりに考えたけど、やっぱり私には、そういう意味とか良く分からないし、先を見通せる知識もない……本当、女王として最低だと思う」


 涙を拭い、イザベラの目を再び真っ直ぐ見つめて言った。


「でも、そんな私を、ユートは女王にした……だから私は、ユートが信じた私を信じて、私なりに一生懸命考えて選択した道を、進んでいこうって、決めたの」


 エレナの言葉にとうとう、これまで保っていたイザベラの凜々しさが崩れた。


「勇者の神器の価値も分かっていない無知な村娘の女王など……交渉に値しない!」

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