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第十四話 黒い噂と豪華な食事

「では、参ります」


 再びスミスが歩き出すと、数十人の兵士を引き連れた女王一行は彼の後ろをついて行った。


 あの鉄格子の扉から邸宅の扉へは、ずっと一本道だったのだが、その道の両側にはどこまでも続くグラジオラスの花畑が続いていた。


 エレナが上を見上げると、そんなグラジオラスの花で出来たアーチが邸宅の方まで続いている。


 しばらくあるくと、徐々に350m程の横幅のある巨大な階段が現れた。


 エレナ達がその階段を上っていくと、登った先には8対の兵士の銅像が置かれていた。


「……はあ、はあ」


 幸い階段の段数はそこまで多くなかったが、ここにくるまでおよそ30分ほど歩いたため、王宮に来て運動不足だったエレナの息切れはかなり激しかった。


「この階段を上った先が、イザベラ様のおわす邸宅でございます」


 スミスがそういったとき、マークはエレナの様子に気づいた。


「エレナ様、大丈夫ですか?」


 マークはエレナの威厳を落とさないよう、こっそりと耳打ちする。


「だ、大丈夫……ぜん、ぜん」


 マークは、ドレッドに頼んでエレナに身体強化の魔法をこっそりかけてもらおうかと考えた。だが、村に行ったリオスの仕事を自分にやらせたり、他にも自分の仕事を、エレナにいつも大量に増やされていることを思い出す。


「どうされましたか?」


 スミスが異変を感じて立ち止まったが、マークは「いえ、何もありません」と返答する。


 エレナはそれに対して何も言わなかったが、マークをじとーっと睨み付けていた。

 だが、自分のドレスを後ろから持ち上げてくれている兵士達を見ると、皆防具に身を包んでいるにもかかわらず顔色一つ変えていない。


「(言えない……少し休みたいだなんて)」


 エレナは、死ぬ気で階段を上りきった。


「……つ、れた」


 小さな声でそう呟いた時。


「ようこそ、おいでくださいました……、女王陛下」


 鈴のような美しく、凜とした女性の声が響く。


「初にお目にかかります。私は……」


 女性はその場に跪き、その銀色の瞳をエレナに向けて名乗る。


「イザベラ・エル・ユーシアと申します」

「エ……エレナ・ユーシアです……」


 エレナと違って、くすんでいない艶やかで、綺麗で、腰まで伸びた金髪。女性にしては172cmと身長が高い。透き通るような白い肌に、長いまつげ。人々が見とれてしまうほどの整った顔立ち。エレナのみに着けている女王のドレスに似通ったドレスを着ている。

 彼女の一挙手一投足が、高貴さを放っており、その美しさに思わずエレナも見とれてしまう。


「本来であれば当家の者全員で出迎えねばならないところを、私のみの無礼、どうかお許しください」

「い、いやいや、全然大丈夫ですよ!むしろわざわざ出迎えてくれてありがとうございます」


「……」


 素直にエレナが頭を下げると、イザベラは、目を見開いて驚いた様子でエレナのことを見つめていた。


「あの、どうかしました?」


 エレナが訪ねると、イザベラは答える。


「いえ、陛下が私のような一貴族に頭を下げられたことに驚きまして……どのように返答したら良いのか分からず」


「あ、そういう……大丈夫ですよ、あまり気にしなくても。私なんて、元はただの村娘ですから!」


 エレナがニコリと笑う。


「いえ、それでも陛下に無礼を働くわけにはいきません。当家の品位も関わって参りますので」


「そ、そうですよね……」


 苦笑いをするエレナ。


「それでは、ここからは私が、皆様をお食事の場まで案内いたします」


 イザベラは「ありがとう」とスミスに一言告げ、履いている高いヒールをコツコツと鳴らしながら進んでいく。

 未だヒールで上手く歩けず、痛みに耐えながら歩いているエレナにとって、決して姿勢を崩さず上品に歩くイザベラの姿を見て、エレナは思う。


「(私なんかより、よっぽど女王様みたい)」


 一目でわかる、女王としてのオーラの違い。

 自分が女王であることにすら、罪悪感が芽生えるほど、洗練された振る舞いに、エレナは思わず下を俯く。

 食事の場に行くまで、イザベラは一言も喋ることはなく、ただ淡々と歩いた。その時間が、エレナの心を更に不安にさせる。


 邸宅内は、赤と金を基調とした木造の建物だった。所々に美しい絵画や、宝石。柄が金で出来たレイピアなど、様々な高価なものが置かれていた。

だが、エレナにはそれらに関心を寄せる心の余裕もない。


「どうぞ、皆様こちらの席にお座りください」


 長い廊下を抜けた先には、黄金のシャンデリアが数十も天井に吊された、とてつもなく広い食堂だった。部屋の中心には、広い食堂の端から端まで届く程の巨大なテーブル。勿論豪華な装飾がついた豪華な仕様。そしてその上には、エレナが城に来てから食べた事も無いような、様々なごちそうが、机の端から端までずらーっと並べられていた。


「こんなに沢山……食べれるのかな」


 小さな声で呟きながら、エレナ達は、多様な宝石がちりばめられた豪華な椅子に座った。


 エレナとドレッド、マーク。それに護衛の数十人の兵士。これだけいても、食べきることが出来るかどうか。エレナ達一行が皆同じ不安を持つと、それを見透かしたようにイザベラが言った。


「無理に食べきる必要はありませんが、できるだけ多く、皆様が食べることが出来るようご用意しました。取引の話は、食事の後にいたしましょう……食事の前に交渉が決裂しては、折角の料理が味気なくなってしまいます」


 イザベラのその一言から、その場にいたエレナ一行は感じ取った。イザベラは、自分たちの交渉を成立させるつもりが、今のところないと言うこと。

 そして、この豪華な料理は、王との交渉が決裂しても、王宮との関係を穏便にするための詫びの意味も込められている。そうなってしまえば、表面上の王宮とイザベラの信頼関係を壊すようなことが出来なくなる。イザベラの影に流れる黒い噂。密偵などを送り込んでもしバレでもすれば、たちまち内乱。


「うむむ……この料理、食しても良いものか」

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