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03話:ダンジョン配信者を初めて早数年……。

 それからニ年が経過し、僕は高校一年生になった。


 あの日、支部長さんから配信キットを貰った僕は配信のやり方について勉強をしていき、それからすぐにダンジョン配信を始めていった。


 という事はつまり僕がダンジョン配信を始めてから二年近くが経つんだけど、でも……。


『は、はい! と、という事で今日の配信はこれで終わりにします! きょ、今日も見てくれてありがとうござました!』


あさか:おつー

kurati:お疲れさん

Tom:お疲れ様ー


『は、はい! 沢山のおつコメありがとうごじゃ……こ、こほん。ありがとうございます。そ、それじゃあまた次回もよろしくお願いします。お、お疲れさまでしたー』


―― 本日の配信は終了致しました。


「……うぅ。最後に舌をかんじゃった……」


 僕はちょっと涙目になってヒリヒリとする舌を手で押さえながらそう呟いていった。今日も反省点の多いダンジョン配信となってしまった。


 という事で支部長さんから配信者キットを譲り受けてから、僕は出来る限りダンジョン配信を行うようにしていた。


 流石に強いモンスターが出現するダンジョンでは探索に集中したいから配信はしないようにしてるんだけど、その代わりにゴブリンとかスライムとか比較的弱いモンスターしか出現しない場所では積極的に配信するようにしていた。


 そんなわけで僕は今現在は週に三回くらいのペースでダンジョン配信をしている。それを二年近くも続けてきてるのだからそれなりには頑張ってる方だと思う。


 だけど僕のチャンネル登録者数は全然伸びる事もなく悲しいくらいの過疎チャンネルと化していた……。


 現時点のチャンネル登録者数は100人くらいだし、今の配信も最大同接はたったの10人くらいだった。しかも見に来てくれてたのは全員身内というね……。


「はぁ、やっぱり僕ってこういうの向いてないんだなぁ……」


 僕はダンジョンを出てすぐ近くの木陰に座りながらそう呟いていった。


 実は僕は昔から人前で喋ろうとするといつも凄く緊張してあがっちゃうんだ。学校の授業中に発表する時も、目の前には先生と友達だけしかいないという状況であっても緊張しちゃって顔が赤くなってしまうんだ。


 まぁそれくらい緊張しやすい僕だから、配信をしていても画面の向こう側に人がいると思うと緊張しちゃって上手く喋れなくなってしまうんだ。だからさっき舌をかんだのも珍しい事ではなく日常茶飯事だった。


「はぁ、せめてこの上がり症だけでも克服できないかなぁ……って、あれ?」


―― ぴこん♪


 そんな事を思っていると僕のスマホから急に通知音が鳴り出した。これは僕がチャンネル登録している人が配信を始めた通知音だ。そして今配信を始めた人は誰かというと……。


「って、あっ! ルリちゃんの配信だ!」


―― “如月ルリちゃんによる東京ダンジョン探索配信!” が始まりました。


 僕のスマホの通知画面にはそんな文字が映し出されていった。なので僕は急いでスマホをタップしてルリちゃんの配信サイトに飛んでいった。


『リスナーのみんなー、こんルリー! ファーストライブ所属のダンジョンライバーの如月ルリだよー! 今日も見に来てくれて本当にありがとー!』


Takabe:こんルリー!

浅見:こんルリー!

ゆき:こんルリー!

asougi:こんルリー!

志倉:¥5,000 今日も楽しいダンジョン配信お願いします!


『みんなコメントありがとー! って、あー! 志倉さんもスパチャありがとー! 今日も楽しくダンジョン配信をしていくから最後まで見ていってねー!』


「おぉー、今日もルリちゃんの配信は物凄く盛り上がってるなー!」


 僕はルリちゃんの配信画面をすぐに開いていったんだけど、開始してからたった数分しか経ってないのにルリちゃんの配信の同接は既に10000人を超えていた。このままのペースなら今日の同接ランキング一位も簡単に取れちゃいそうだ。


 という事で今僕が見ているのは“如月ルリ”という女の子の配信だ。東京で活動している超人気配信者で年齢は18歳の高校三年生だ。ちなみにチャンネル登録者数は最近200万人を突破した。


「いやこんなにも超人気な配信者が僕とたった二つしか年齢が違わないなんて本当にビックリとしちゃうよね」


 そんな大人気のルリちゃんは普段から自身の事をエンジョイ系配信者と自称しており、ダンジョンの中をゆっくりと探索して色々な動植物を観察したり、ダンジョンの構造を見ながら、感想を言って巡り回って行くというゆるい感じの配信をやっている。


 だからルリちゃんの配信はリスナーの皆と一緒に和気あいあいとした雰囲気でダンジョンツアーをしているといった感じかな。


 そしてルリちゃんはダンジョンの中を探索をしていきながらも、巧みな話術やリアクションを繰り返していって、見ているリスナー達を全力で楽しませるという配信者の鏡と言えるような素晴らしい女の子だった。


「しかもルリちゃんってお喋り上手なだけじゃなくて、ルリちゃんの容姿も物凄く可愛いんだよなー!」


 画面越しで見ているルリちゃんは凄くスレンダーな身体つきに、明るい茶髪の編み込みヘア、可愛いネイルにピアス、クリクリとした可愛い目に小さい顔付きなどなど……もうとにかく全てが非常に可愛いらしい女の子だった。


 僕の中でルリちゃんは東京出身というもあって、僕の印象ではかなり垢ぬけた陽キャなアイドルという感じの女の子だった。やっぱり東京の女の子は皆垢ぬけてるんだろうなー。


「これで僕と同じ高校生だって言うんだから都会の子は本当に凄いよなぁ……せめて僕もこういう皆を楽しませる話術とかだけはしっかりと見習わないとだよね!」


 という事で僕はそんな反省をちゃんとしていきつつも、そのままルリちゃんの楽しいダンジョン配信を見ていく事にした。

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