表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/103

02話:支部長から配信者キットを貰っていく

 僕の両親は仕事で出張に行く事が非常に多い。だから僕と妹の浅香はこのノンビリとした田舎町でお婆ちゃんと一緒に子供の頃からずっと暮らしていた。


 お婆ちゃんとは子供の頃からずっと一緒に過ごしてきた事もあって、僕も浅香もお婆ちゃんの事が凄く大好きだった。


 だけどそんなお婆ちゃんも年齢のせいか、足腰など体調面が少しずつ衰え始めてきており、年々階段の上り下りとかも大変そうになっていた。


 だから僕はそんなお婆ちゃんのために冒険者となってお金を稼ぐ決心をしたんだ。お婆ちゃんの身体にピッタリそうな寝具とか座椅子とかを買ったり、家のリフォームをしたいと思って冒険者を始めたんだ。


(そしてそんな目標を持って冒険者を始めてからもう7年近くが経過したなんて、時が経つのは本当に早いよね)


 僕が冒険者になったばかりの頃はダンジョンの出入口付近にある薬草を採取したり、鉱石を採掘したりとか簡単な作業ばかりを行っていたけど、冒険者を始めて7年近く経った今ではそれなりに強いモンスターも一人で倒せるようになっていた。


 ここまで僕が冒険者として強くなれたのは毎日しっかりと修行や訓練を頑張ってきたからというのもあるけど……でも僕が冒険者としてここまで強くなれた一番の理由はこの町に住んでる先輩冒険者さん達に沢山の指南、指導をして貰ってきたからだ。


 さっきも言ったようにこの町の人口はたったの5000人程度だ。だから必然的に若い冒険者の数も非常に少ないんだ。というよりもこの町に住んでる10~20代の冒険者なんて僕しかいない。


 だから僕が冒険者になると言ったら、この町に住んでた全ての冒険者達や元冒険者達……まぁ具体的に言ったらほぼ全員が爺様、婆様達になるんだけど、そんな熟練の先輩達が喜んで僕に冒険者のイロハを叩きこんでくれたんだ。


 そんな沢山の先輩達の指導があって僕はここまで強くなれたといっても過言ではない。そしてそんな先輩達から貰ってきた沢山の恩を返すためにも、僕にもいつか後輩の冒険者が出来たら先輩達から貰ってきた知識や技術の数々を伝授してあげたいな。


「よし、それじゃあ精算もこれで終わりだな。あ、そうだ。そういえば最近ネット界隈で“ある事”が盛り上がってるらしいんだが、ユウ坊はそれ知ってるか?」

「え? ネットで盛り上がってるって何の話ですか? ネットでダンジョン関連の新しい情報でも発表されたんですか?」

「あぁ、いや、ダンジョン関連の新しい情報って訳じゃないんだけどさ……何か最近ネット界隈で“ダンジョン配信”ってのが流行ってるらしいぞ」

「え? ダンジョン配信?」


 支部長さんは唐突に聞いた事のない言葉を発してきたので、僕はキョトンとした表情を浮かべながらすぐに聞き返していった。ダンジョン配信って何だろう……?


「そうそう。ダンジョン配信。今都会の若者達の間で少しずつ流行り出してるんだってさ。自分達のダンジョン探索の様子とかを自動操作されるドローンカメラで撮影して、それをインターネットで生配信するっていう仕組みらしいんだ」

「えっ、都会ではそんな事が流行ってるんですか!? ダンジョン探索の様子を生配信するなんて凄く面白そうですね! 僕はあんまりネットとかやってないから知らなかったですけど、今の若い子達は色々と面白い事を考えているんですねー!」

「あはは、ユウ坊だって物凄く若いヤツだろ! まぁそれでさ、つい先日に東京本部の冒険者ギルドの会合に出席した時に、ダンジョン配信初心者キットっていうのをサンプルで一個貰って来たんだ。ギルド本部のお偉いさん方はダンジョン配信が今後大流行りすると予想しているらしくて、これから冒険者ギルドでも配信関連の商品をバンバンと販売する考えらしいんだ」

「へぇ、なるほどー。確かにダンジョン配信が全世界中に流行るようだったら、これに先駆けてダンジョン配信関連の商品を販売していけば冒険者ギルドとしても大きく儲けられますもんね」

「あぁ、そうなんだ。という事で良かったらこのサンプルキットをユウ坊にやるよ。勉強が得意なお前さんならすぐに配信とかそういうネット周りの事も理解出来るだろ?」

「え……って、えっ!? 良いんですか!? で、でもこれってかなり高価な物なんじゃないんですか? だって配信用のキットという事は撮影用の自動ドローンも入ってるって事ですよね?」

「あぁ、そうだな。まぁそれなりに高価なシロモノだな。でもどうせこんなド田舎な町でそんな若い子達の遊びをやれる冒険者って数が限られてるからな。ってかこの町は爺様婆様な冒険者ばっかりなんだから、多分ユウ坊以外にこんなハイテクな機械は使いこなせないだろー! ぷはははっ!」

「ま、まぁ、それは確かに」


 さっきから言ってるようにこの町に住んでる冒険者や元冒険者の年齢層は僕よりも三回り以上も年上の人達ばっかりだ。


 だからスマホとかパソコンの使い方がわからないから教えて欲しいって僕に言って来る爺様婆様な先輩もそれなりに多かったりもする。


「はは、だよな? だからこれはユウ坊にやるよ。どうせ使いこなせるのはユウ坊しかいないんだから遠慮すんな。説明書とかも一式ちゃんと入ってるし、勉強熱心のユウ坊ならすぐに使いこなせると思うから是非とも頑張ってくれ!」

「は、はい! わかりました! ありがとうございます、支部長さん!」

「おうよ」


 そう言って僕は支部長さんからダンジョン配信の初心者キットを受け取っていった。そのキットの中には撮影ドローンやマイク、ヘッドホンに動画撮影、編集アプリなど配信に必要なモノが全て詰まった豪華なキットとなっていた。


(ダンジョン配信か……はは、何だか面白そうだし、早速帰ったらダンジョン配信について勉強も頑張ってみようかな!)


 という事で支部長さんから配信キットを貰った僕はそんな事を思いながら今日はそのまま帰路へとついていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ