01話:ダンジョン探索した後の帰り道
中学2年生の夏。
僕こと澤白悠は人口5000人程度の小さな町に住んでいた。山や海や森など自然一杯に広がるとてものどかでノンビリとした町だ。
「それじゃあ今日もドロップアイテムの買取お願いします。支部長さん」
「あぁ、わかったユウ坊。それじゃあ精算するからちょっと待っててくれな」
「はい、わかりました」
そして僕はさっきまで探索していたダンジョンで入手したドロップアイテムを冒険者ギルドで換金をして貰っている所だった。
今から数十年以上前、この世界には『ダンジョン』と呼ばれている不思議な場所が至る場所に突発的に生み出されていった。森の中や山の中腹、海底や繁華街のど真ん中など至る場所にダンジョンが生み出されていった。
このダンジョンと呼ばれている場所は世界全体としてはまだまだ把握しきれてない場所もあるから総数は把握しきれてないんだけど、日本だけで絞ると全国で200箇所も存在しているらしい。
今の所は一つの都道府県につき3~10程のダンジョンが確認されている。この田舎町にもダンジョンはあるのでそんな珍しいモノでもない。
そしてダンジョンの中には数多くのモンスターが生息しており、そのモンスターを倒す事で色々なアイテムがドロップする事が判明している。
さらにダンジョンの中には希少性の高いレア植物が生えていたり、希少なレアアイテムがランダムで落ちている事なども判明している。
そこで人々はダンジョンの中に入ってアイテムを手に入れてそれを売り払ってお金を稼いだり、ダンジョン内に生息する未知なる動植物を研究したり、自らの探求心からダンジョン自体の攻略を目指したりなど……近年ではダンジョン探索をする者達がどんどんと増えていっており、そんなダンジョンに入って行く者達の事を総称して“冒険者”と呼んでいた。
そして僕もそんな冒険者の一人だった。
「はいよ、査定終わったぜ。それじゃあ今日のアイテム買取額は12,000円だ。受け取ってくれ」
「はい、ありがとうございます。支部長さん」
「おうよ。はは、ユウ坊もだいぶお金が貯まってきたんじゃないか? そういえばユウ坊はダンジョンで稼いだ金は何に使ってるんだ?」
「冒険で稼いだお金の半分は冒険者向けの指南書とか装備とか消費アイテムを買うのに使ってますよ。だからもう部屋の中が冒険者用の道具で一杯になってきて困ってる所ですよ」
「へぇ、そうなのか。いやー、装備や消費アイテムを買うのはわかるけど指南書とかも買ってたんだな! そういやユウ坊は小学生の頃から凄い勉強熱心だったもんな。はは、ユウ坊は本当に偉いぞー!」
「はい、ありがとうございます! 冒険者たるもの知識が一番の武器になりますからね。それに新しい知識が蓄えられるのって凄く楽しいですから勉強も凄く面白いです!」
「あはは、そう言えるってのは本当に大したもんだよ! いやー、俺んところの子供達もユウ坊みたいな真面目なヤツに育ってもらいたいもんだな! あはは!」
支部長さんは大きく笑いながら僕のそんな事を言ってきてくれた。この朗らかで明るい支部長さんとの付き合いも気が付けばもう6~7年にもなる。
支部長さんは僕が冒険者を始めたばかりだった頃から色々とアドバイスをしてくれたし、困った時はいつでも気軽に相談に乗ってくれる本当に優しい人だ。だから今ではお互いに何でも気軽に話せる程の仲になっていた。
そして『冒険者ギルド』の支部長さんと6~7年の付き合いになるという事はつまり……僕が冒険者を始めたのもそれくらい前という事だ。
基本的に冒険者ライセンスには年齢制限はないので、何歳からでも冒険者ライセンスを取得する事は出来るんだ。
だから僕は小学一年の頃に冒険者ライセンスを取得して冒険者を始めたんだ。小学生が冒険者ライセンスを取得するのは違法でも何でもないから僕はすんなりと冒険者になる事が出来た。
まぁでもすっごく当たり前な話なんだけど、幾ら冒険者に年齢制限が無いとは言っても、小学生で冒険者を始める人は滅多にいないらしい。基本的に高校生とか大学生とかが暇になってバイト感覚で始めるのが冒険者という職業だって支部長さんも言ってたしね。
というかそもそも普通の小学生はバイトなんてしないで外で友達と遊んだり家でゲームしたりするのが当たり前だしね。だから何かよっぽど大きな理由とかが無ければ小学生が冒険者を始めるなんてあり得ないと思うよね?
でも僕が小学生の頃に冒険者を始めた理由には、特に何か大きな“野心”とか“高尚な目的”とかは一切何も無かった。
僕が冒険者を始めた理由は普通の高校生やフリーターの人達と同じでバイト感覚でお金を稼ぎたいと思ったからだ。だから物凄く俗っぽい理由で僕は冒険者を始めたんだよね。
でも何で小学生の僕がお金を稼ぎたいって思ったのかというと、それは……。
「あぁ、そうだ。それでユウ坊は残りの半分の金は何に使ってるんだ?」
「はい。残り半分は貯金してます。いつかお金がもっと沢山貯まったらお婆ちゃん家のリフォーム代に使おうと思っているんです。実はちょっと前からお婆ちゃんの足腰が少しずつ弱ってきているので、いつかバリアフリーの家にリフォームしてあげたいなって思ってて……」
「あぁ、なるほどな。はは、やっぱりユウ坊は家族思いの優しい坊主だな。よし、それじゃあそんなユウ坊の目標が叶うように俺も陰ながら応援しているよ! だからこれからも頑張っていけよ!」
「はい、ありがとうございます、支部長さん!」
支部長さんは大きく笑いながらもいつも通りの優しい口調でそう言ってきてくれた。
という事で僕が冒険者を始めた大きな理由は、大好きなお婆ちゃんのために何かしてあげたいと思って貯金をするために冒険者を始めたんだ。