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【短編】シリーズじゃないシリーズ

5年留学してたら婚約解消された……けど逃がさない

作者: 千東風子

『婚約者が留学から5年帰って来ないのだが』の別視点です。


よろしくお願いいたします。

m(_ _)m


 

「彼女にとっては弟、いや、ただの近所の子どもか。お子様はお子様らしい相手を選びな」


 そう言ってきた奴は、僕の婚約者と元々縁談があった奴だ。


 確かに僕は彼女より年下で、気が弱く、彼女より遥かに弱くて(物理で)、相応しくないと言いたいのだろう。


 どちらからともなく手が出て、殴り合った後に不思議に気が合ってしまった。

 子ども(自分)に縁談をかっ(さら)われた上に、僕よりは弱いし、なんか戦意が悄気(しょげ)たというか。


 ボロボロの奴が「1年くらい留学して、成長期を越えてぐんと大人になった姿を見せて、男なんだと彼女に意識させてからが勝負だ」って言って、僕も「そうなんだ!」ってなったんだ。……なっちゃったんだ。


 彼女とは週に1回会っていたのに、留学したら会えなくなる。寂しいけれど、関係を変えるきっかけになるならと、留学した。


 ここで計算違いが起こるなんて、思いもしなかったんだ。


 1年経っても僕の背はほとんど変わらず、留学先の友人たちからも「(天使が)大人の男……?」と憐れま(笑わ)れる始末。

 意地になって、もう1年もう1年と留学を伸ばすうちに、やっと16歳を過ぎた頃から1年で関節が(きし)むほど背が伸びて、声も落ち着いた。


 さあ、堂々と帰国しようとしたところで、実家からとんでもない手紙が来た。


 婚約解消!? なんでぇっ!?


 確かに1回も帰国しなかったけど、彼女に手紙や贈り物は頻繁に送っていたし!! 返事もあったし!!


 慌てて帰国して彼女の家に突撃し、彼女の顔を見た瞬間に涙が溢れてきた。


 好きだ。

 僕は、ずっと寂しくて、彼女に会いたかったんだ。


 ……彼女も?


 ごめん。

 ごめんなさい。

 ちっぽけな僕のプライドのせいで、5年もごめんなさい。


 僕は、誰に何を言われても、彼女との関係を自分で考えて決めなければならなかったんだ。

 誰かにこう言われたから……なんて、子どもの言い訳でしかないじゃないか。


「で? 今のこの状態がお前の言う『大人』なのか?」


 彼女にトドメを刺されて、更に泣くしかなかった。


「私はお前の泣き虫なところも愛でてていたつもりなんだがなぁ」


 僕は、逆に、君を泣かせたい。


 湧き出た渇望に自分でも戸惑った。

 けど、まずは彼女の回りの()どもを叩き潰し、僕が唯一の男にならなければならない。

 手始めに、留学すれば? と適当なことをぬかして僕を遠ざけた(あいつ)から始末することにしよう。


 今度こそ間違わない。

 だから、勝手に僕を諦めていないで、とっとと絆されてね。


 どのみち、逃がすことはないから。




読んでくださり、ありがとうございました。



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