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ちびっ子転生者は手に負えないッ!Returns 〜精霊女王がピンチらから聖獣と一緒にちゅどーん!しゅりゅ〜  作者: 撫羽
第3章 あんしゅてぃのしゅ大公国ら!

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98/220

98ーあら大変

「パッパカ? 何だそれ?」

「お歌ら。りひと、知りゃねーのか? まらまららな」


 リヒトが知らないのは当然だ。だってハルの前世にあった歌なのだから。


「ハルちゃん、歌ってー。聞きたいわ」

「いいじょ〜」


 まるで幼稚園の遠足だ。


「おんまはみぃんな、ぱっぱぁかはっしりゅ。ぱっぱかはしりゅ、ぱっぱぁかはっしりゅ♪」


 リヒトの馬に乗っているハル。なのに、体を上下に動かしてリズムを取っている。


「アハハハ。ハル、ご機嫌だな」

「らって超たのしみら。馬の赤ちゃんらじょ」

「ハルは見た事がないか?」

「じーちゃん、ねーじょ」

「そうか。ワシはユニコーンのお産に立ち会った事があるぞ」

「じーちゃん、しゅげーな! ゆにこーんか!?」

「ハルちゃん、お歌の続きはぁ?」

「知りゃねー」

「またやん! またちょびっとやん!」

「アハハハ!」


 ハルちゃん、本当にご機嫌だ。

 そんなに馬の赤ちゃんが見たかったのか?


「動物はしゅき。けっこーしゅき」


 だそうだ。そういえば、精霊獣が出て来た時もとっても喜んでいる。

 シュシュやヒポポに乗るのも好きだ。カエデと初めて会った時は、ナデナデしたいとずっと言っていた。


「しぇいりぇいじゅうも、かわいーけろな。なんかちげー」

「どう違うんだ?」

「らってかわいしょうな時ありゅし」


 確かに。この国の精霊獣は弱っている状態で出て来る事が多い。精霊樹自体が弱っているのだから仕方ない。

 ニークが行った厩舎は、アヴィー先生が話していたように馬で直ぐの距離だった。そう大して時間は掛からずに、牧場らしきものが見えて来た。


「長老、あれじゃねーか?」

「そうだろう」

「あれ? あれ、走って来るのニークじゃないですか?」

「あ、ホンマや。ニークさんや」


 イオスとカエデがニークを見つけた。

 慌てて、走って来るらしい。


「ニーク! どうした!?」

「あ! リヒトさん、長老、ハルくん達も!」


 パカパカとニークに近寄ると、本当にニークは慌てていたらしく息を切らしている。


「皆さん来ていたんですね! すみません、助けてください!」


 ハアハアと息が上がっているのに、ニークは一気にそう言い頭を下げた。


「馬の赤ちゃんが産まれたと聞いて、ハルが見に行くと言い出したから来たんだ。何かあったのか?」

「それが……」


 厩舎のオーナーの奥さんが産気付き、それにニークは立ち会っていた。

 小さいが無事に男の子が産まれたそうなのだ。

 だが、何故か奥さんの出血が止まらない。そして、もう産まれたと言うのにまだ痛みに苦しんでいるという。

 そして、産まれた男の子も呼吸が安定しないのだそうだ。

 奥さんも、出血が多いのでこのままだと命が危ない。ニークは薬湯を取りに、店に戻ろうとしていたところだった。


「イオス、ルシカに薬湯を頼みに走ってくれるか?」

「長老、分かりました。ニーク、どの薬湯を持ってくるんだ?」

「ああ、増血と……」


 ニークが、奥さんの状態を考慮して薬湯の指示を出す。


「カエデはハルと一緒にいな」

「分かった」


 カエデが、ヒョイと馬から降りる。と、イオスが馬で走るのかと思いきや、イオスも馬を降りた。


「カエデ、手綱を持って付いて行けるか?」

「うん、大丈夫や」

「よし、頼んだぞ」


 と、言って小さな風が起こったかと思うとシュンッと消えた。


「あー、イオス兄さん瞬間移動や。ええなぁ。かっこええなぁ。羨ましいわ」


 街中は人も多い。そんな街中を馬では走れない。なら、瞬間移動の方が早いのだろう。


「何よ、カエデ。反則技を覚えたいの?」

「瞬間移動なんか反則のうちに入れへんやん。エルフやと普通やん」

「まあ、そうね。でも、カエデはエルフじゃないでしょう? カエデが出来る事をすれば良いのよ」

「……シュシュ、びっくりやわ」

「何よぅ?」

「シュシュも偶には良い事言うんやな」

「偶にじゃないわよ! あたしの知能の高さを知らないの?」

「あー、はいはい」


 こんな時でも、シュシュとカエデは姦しい。シュシュは喋ったら駄目なんだぞぅ。


「バカな事を言ってないで、ほらカエデ。ちゃんと手綱を持ちなさい」

「はーい」


 ミーレに叱られてしまった。


「じーちゃん、診る?」

「そうだな。診てみるか。まだ痛みがあるというのに引っ掛かるな」

「らな」


 ハルちゃん、君はお産を知っているのか?


「ハル、分かるのか?」

「分かんねー」


 なんだよ! 分からないのか。


「ニーク、とにかく診せてもらえるか?」

「長老、お願いします!」

「長老、行ってくれ。馬は俺が見ておく」

「リヒト、頼んだ」


 こっちです。と、ニークに案内されて厩舎の奥にある家へと入って行った。長老に抱っこされて、ハルも一緒だ。

 奥に案内されると、お産婆さんらしい女性がいた。ニークを見て驚いている。


「ニーク、もう薬湯を持って来てくれたの!?」


 そんな訳はない。ニークは瞬間移動も転移もできない、普通のヒューマンだ。


「アヴィー先生のご主人が偶々いらしたのです! 診てもらいましょう!」

「え!? アヴィー先生の? じゃあ、エルフ!?」

「ワシはエルフですぞ。ちょっとよく見える目を持っているので、診せてもらえますかな?」


 よく見えるどころの騒ぎではない。本人でさえ知らない事まで見える。鑑定眼の、最上位スキル神眼だ。

 エルフ族の中でもこの神眼を持っているのは長老だけだ。


「よ、宜しくお願いします! 妻を助けてください!」


 お産婆さんの後ろで、旦那さんらしき男性が頭を下げている。

 小さな布団の上に、産まれたばかりの赤ちゃんが寝ている。少し元気がないようだ。


ハルちゃんを応援して下さって居る皆様、今年はハルちゃんの書籍化も決まりました。

有難うございます。

来年は、皆様の手に取って頂けるよう頑張ります。

よろしくお願いします!

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