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ちびっ子転生者は手に負えないッ!Returns 〜精霊女王がピンチらから聖獣と一緒にちゅどーん!しゅりゅ〜  作者: 撫羽
第3章 あんしゅてぃのしゅ大公国ら!

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81ー薬湯作り

 近くの集落に立ち寄ると、案の定寝込んでいる患者さんがいた。

 

「お薬を持っているわ。飲んだらすぐに楽になるわよ。でも、暫くは安静にしていてね」

「アヴィー先生、有難うございます!」


 と、アヴィー先生が薬湯を持って来てくれているぞと、あっという間に広まった。

 彼方此方から、領民が出てくる。ワラワラと。


「多いな……」

「じーちゃん、足りりゅか?」

「ハル、ルシカと作っておくか?」

「しょうらな」


 アヴィー先生が患者を診ている間に、ハルとルシカはまた薬湯作りだ。

 野原で作る訳にもいかない。いや、大丈夫なのだろうけど。

 

「ハル、ルシカ、此方のお宅を借りられるわ!」


 アヴィー先生が叫んでいる。そんな交渉もしていたのか。アヴィー先生のコミュ力は計り知れない。

 アヴィー先生が交渉してくれた家の片隅を借りて、ハルとルシカがジャブジャブと魔法で出した水で根っこを洗っている。家主達がポカーンと見ている。


「ハル、頼みます」

「ん、分かっちゃ」


 ハルが根っことルシカが出した薬草を空中で纏める。そして、ハルの手の動き1つで粉砕されていく。

 家主達はもうこれ以上口が開かないぞという位に口を開けて驚いている。

 そりゃそうだ。魔法の使えないヒューマンにとっては目の前で起こっている事が理解できないだろうし、見るのも初めてなのだろう。


「ハル、もらいますよ」

「ん」


 と、またハルとルシカの手の動きで根っこや薬草が、ウルルンの泉の水と少しのポーションが合わさっていく。そして、最後の仕上げだ。


「くりーんしといたじょ」

「ありがとう」


 ハルがクリーンしたというガラスの容器に、手の動きだけで入っていく。

 あっという間に薬湯の出来上がりだ。


「これは収納しておきましょう。まだ必要になりそうですからね」

「ん」


 ルシカが腰につけている小さなバッグ。そこに、とても入りそうもない大きさの容器が吸い込まれていく。もう、家主達は目が落ちそうだ。

 マジックバッグもこの国では滅多に見られない高価な物だ。なので、何が起こっているのか理解できていない様だ。


「エルフの方々は想像もつかない力を持っておられるのですな」

「ふちゅーら」


 話していた家主の頭の上に『?』がポンポンと飛んでいる。ハルの言葉が理解できないらしい。


「ふふふ、エルフではそう特別な事ではないのですよ」

「そうなのですか……」

「アヴィー先生もこうして作っておられますよ」

「アヴィー先生の薬はよく効くのです。ですので、時々購入しに行ってました」

「あら、そうなの? ありがとう」

「でも、もうアヴィー先生は居られないのですか?」

「私の1番弟子がお店を継いでくれているわ。大丈夫よ、腕はいいから」

「そうですか! なら安心ですな」


 アヴィー先生の1番弟子。ニークの事だ。アヴィー先生がいなくなっても、ニークがしっかりと店を守っている。店名も『薬師アヴィーの店』のままだ。


「もう私はいないのだから、ニークの店にすれば? て、言ったんだけど」

「そうだな、違いない」

「でも、ニークには思い入れがあるんじゃないのか?」

「リヒト、どんな思い入れよ」

「そりゃあ、アヴィー先生とずっと一緒だったんだ。ニークの知識も技術もアヴィー先生直伝だろう? だからじゃないのか?」

「しょうらな。ばーちゃんは師匠らけろ母親代わりなんら」

「まあ、ハルちゃん。ハルちゃんの母親代わりもいいわね!」

「これ、アヴィー」


 長老が若干呆れている。仕方がない。アヴィー先生はハルのファンクラブ会長だから。

 

「あたしだってハルちゃんの母親になるわ!」


 シュシュだ。何を競っているのだ。意味が分からない。何れにせよ、虎はハルの母親にはなれない。

 それにしても、ハルにとって『母親』というワードは嫌悪するものだった筈だ。

 前世で散々迫害され、管理され、傷付く言葉を毎日浴びせられた。大人を信用しない要因の大きな1つになっていた筈だ。


「ばーちゃん、ありがと」

「ハルちゃん!」


 ハルをヒシッと抱き締めるアヴィー先生。ハルもニコニコして抱かれている。

 どうやら、こっちの世界に来ていろんな事を経験して、長老やアヴィー先生、リヒトを始め色んな人達に愛されて嫌なワードもそうでなくなっているらしい。


「あたしも! あたしもハルちゃんに抱き着きたいの!」


 小さいままで喋るものだから、周りにいた獣人達が驚いてシュシュを見ている。

 シュシュはもう隠すつもりがないのだろうな。堂々と喋っている。


「これ、シュシュ」

「あら、もういいじゃない」

「長老様、一体これは?」

「ああ、すまんな。実は聖獣なのだよ。白い虎の聖獣なんだ」

「なんとぉッ!?」


 ほら、周りの皆がとんでもびっくりしているぞ。


「長老、もう元の大きさに戻ってもいいでしょう?」

「シュシュ、最初からそのつもりだったのだろう?」

「あら、そんな事ないわよぅ」


 ああ、目が泳いでいる。これは嘘だ。最初から狙っていたらしいぞ。


「もういいじゃない。ヒューマンはいないんだし。獣人だけなら大丈夫でしょう?」

「ね、そうよね」


 どっちがアヴィー先生で、どっちがシュシュの言葉なのか分からないぞ。いつもの事だが。


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