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ちびっ子転生者は手に負えないッ!Returns 〜精霊女王がピンチらから聖獣と一緒にちゅどーん!しゅりゅ〜  作者: 撫羽
第3章 あんしゅてぃのしゅ大公国ら!

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77ーにゃ〜

「あらやだ、何の騒ぎかしら?」


 領主邸に戻ってきた長老達。すると、沢山の領民が領主邸に押しかけていた。

 一体何事かと、最初のアヴィー先生の言葉だ。


「あ、ハルちゃ~ん! にゃあぁ~ん!」


 カエデだ。ハルを見つけて走って縋りついてきた。


「ほりゃ、泣いてりゅじょ」

「あら、ほんとだわ」


 確かに、『にゃあぁ~ん』とは言っていた。


「ハルちゃん、遅かったにゃあぁ~ん!」

「かえれ、ごめん。ろした?」

「周りに住んでる人達がアヴィー先生が来てるって噂を聞きつけてな。えらい騒ぎやねん。イオス兄さんが残ってた薬湯で対応してたんやけどもう無いねん。だからみんな待っててん」

「え? 私なの?」

「アヴィー先生にゃ~ん。待ってたにゃ~ん。遅いにゃ~ん」


 おやおや、カエデ。どうした。余程、心細かったのか? 久々の『にゃ~ん』3連発だ。


「よしよし、かえれ。もうらいじょぶら」

「ハルちゃ~ん!」


 ハルがカエデの頭を小さな手でナデナデしている。どっちが年上なのか分からない。


「アヴィー先生! お待ちしておりましたぞ!」

「騒ぎになってしまいましたか」

「周辺の集落の者達がやって来てしまいましてな。皆、同じ病で苦しんでいるのです!」

「まあ、大変。ルシカ、薬湯を作るわよ」

「はい」

「おりぇも手伝うじょ」

「ハル、お願いします」


 アヴィー先生とルシカ、ハルが邸に入っていく。

 大きなシュシュに乗ったままだが、いいのか? 誰も気付いていない様だが。


「あ、アヴィー先生だ!」

「先生! 俺達にも薬湯を分けてほしいんだ!」


 口々にアヴィー先生を呼んでいる。アヴィー先生、超有名人だ。


「待ってね。今から直ぐに作るわ!」

「おぉー! 有難い!」

「先生、ありがとう!」


 そんな騒ぎの中を堂々と奴が行く……


「ぅおッ! 虎だ!」

「先生! 危ないぞ!」

「でかッ!」


 奴とはそう、シュシュだ。態となのか? 態と元の大きさのままでいたのか?


「あらなぁに、嫌だわ。あたしはアヴィー先生のマブダチよぅ!」

「しゃ、喋ったぞ!」

「当たり前じゃない! あたしは聖獣なのよ、喋るくらいするわよ!」


 ああ、もう思いっ切り目立ってしまっている。あれだけ、アンスティノスでは目立たない様に小さくなっているんだと言われていたのに。絶対に態とだろう。


「驚かせてすまん。大丈夫だ。ワシ等の仲間なんだ」

「長老殿、仲間ですか?」

「ああ。本人も言っているが聖獣なんだ。安全だから大丈夫だ」

「驚きました。聖獣様をこの目で見る事が出来るなど……!」


 聖獣様と言った。獣人にとっては伝説の『聖獣様』なのだろう。

 カエデの両親が以前住んでいた集落でもそうだった。『聖獣様』と呼ばれていた。

 その伝説の『聖獣様』シュシュに乗ったハルが振り返る。


「かえれー」

「ハルちゃん、どうしたんや!?」

「おやちゅら」

「あぁ~……分かった。作っとくわ」

「ん」


 ハルはそれだけ言って、アヴィー先生を手伝いに行った。

 シュシュもそうだが、ハルさん。忘れているのか? 小さくなっていないと駄目だぞ。当たり前の様にシュシュに乗っている。


「まあ、この領地なら良いだろう」


 仕方ないといった表情で長老が言う。

 シュシュだけでも目立つのに、それにハルが乗っていると余計に目立つことこの上ない。


「長老、いいんか? シュシュめっちゃ堂々としてるで。超目立ってるで」

「もう、仕方あるまい」

「アハハハ!」


 リヒトは笑っているが、長老は仕方ないと言っているぞ。諦めの境地だ。


「ほな、自分はハルちゃんのオヤツ作っとくわ」

「カエデ、俺の分も頼む」

「はいにゃ」


 ルシカは薬湯作りで忙しい。なのでカエデに頼んだのだろう。

 そのハル自身も薬湯作りだ。一体何人の領民が発症しているのだろう。これは、想像以上に多いかも知れない。

 アヴィー先生の指示で、ハルとルシカも一緒に薬湯を作った。次から次へと作っていく。

 長老が念の為と言って、例の毒のある花の根っこを取っていた。それで直ぐに充分な量の薬湯を作る事が出来たんだ。

 順に薬湯を貰い、皆シュシュを見て軽くお辞儀をして帰る。ちびっ子も怖がる事なく、シュシュを撫でている。

 獣人にとっては『聖獣様』なんだ。伝説の……


「ふふふ、あたしは聖獣様だからぁ……」

「シュシュ、オヤツできたからハルちゃん呼んできてや」

「もう、カエデ。今あたしが話していたのよ。分かったわよ、ハルちゃんね。ハルちゃぁ~ん!」


 現金な奴だ。ヒューマンだとスキップをしている事だろう。軽い足取りでハルを呼びに行った。


「リヒト様、長老も食べてや」

「おう、美味そうだ」

「カエデ、すまんな。有難う」

「そんな事ないにゃ~ん!」


 おや、デレている。尻尾までユラユラと揺れている。


「かえれ~」


 ハルがまたシュシュに乗ってやって来た。後ろにはミーレもいる。


「あ、ハルちゃ~ん。オヤツできたで~。今日はアイスをのっけたパンケーキやで~!」

「食べゆじょ」


 平和だ。ハルさん、お疲れだったね。


「もう、凄い人だったのよ。びっくりしたわ」

「ミーレ、どうしてそんなに噂になったんだろうな?」

「最初に薬湯を飲んだ人達のご家族が、領主邸に行けばアヴィー先生に薬湯を貰えると話して回ったみたいね。それだけ患者さんがいたのだから仕方ないんだけど」

「なるほど、そうか。アヴィーがこの国で薬師をしていたのも無駄ではなかったのだな」

「長老、当然ですよ。アヴィー先生の薬湯は良く効く」

「アハハハ、しかしリヒト達は飲むのを嫌がっていただろう」

「それは子供の頃だ」


 いくら効果が高くても薬湯だ。良薬は口に苦しだ。ちびっ子にとっては苦いものなのだろう。


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