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55ー気合ら

「ありぇ? りゅしかの矢の色が違うじょ」

「ハル、初めて見る?」

「みーりぇ、初めてら」

「あれはね、ダークエルフだけが使える闇属性魔法の矢でダークアローって言うのよ」

「おー、かっけーな」

「ふふふ、イオスもできるわよ」

「しょうなのか?」

「おう、できるぞ。ダークエルフは闇属性魔法が得意だからな。ウインドアローより威力が高いんだ。変わりに俺達は聖属性魔法が使えない」

「どっちにしろ自分には真似でけへんわ」


 なんやかんやと外野が話している内にルシカがあっさりと巣を撃ち落とした。

 その巣には……


「なんだこれ、卵か?」

「そうだな、卵を温めておったのだろうな」


 所謂鶏の卵より二回りほど大きく、まだらな模様がはいっている。色味的にはウズラの卵だ。それが、3つ並んでいた。


「危機一髪じゃねーか!?」

「アハハハ、そんな事もないだろう」

「いや、長老。俺達だとあんなブラックガネットを打ち取る事はできねーぞ。そしたら知らん間に卵が孵っていただろうよ。そしたら大変だ」

「そうかもな」

「じーちゃん、こりぇ食べりぇゆ?」

「ああ、食えるぞ。卵は濃厚らしいぞ。ブラックガネットも美味いらしい」

「そうなのかッ!?」

「ああ。丸焼きにしたら美味いそうだ」

「丸焼きか!? そりゃ美味そうだ」


 はい、丸焼きにしましたよ。ブラックガネットの丸焼きと、ブラックガネットの卵で作った野菜とチーズがたっぷり入ったキッシュだ。


「うましょうらな!」


 ハルが丸焼きのそばにしゃがみ込んでずっと見ている。


「ハハハ、ハルそんなに見なくてももうすぐ食べられますよ」

「しょっか!」


 そしてまたあの音が……


 ――キュリュリュリュ~


「ハル、また腹が鳴ってるぞ」

「いおしゅ、しゃーねーんら」

「ハルちゃん、腹ペコ仮面やなぁ」


 トーマスさん一家とみんなで丸焼きを囲む。ルシカお手製のキッシュも美味しそうだ。


「りゅしか、りゅしか、もういいか?」

「はい、いいですよ。食べてください」

「やっちゃ」

「ハル、クリーンしなさい」

「あい」


 ミーレに言われてクリーンをし、早速切り分けてもらったブラックガネットの丸焼きに齧り付く。


「んめーな!」

「アハハハ。ハル、ゆっくり食べなさい。沢山あるんだからな」

「ん、じーちゃん」

「なあ、長老よう。『クリーン』て何だ?」


 え? クリーンも知らないのか? てお顔のハル。ほっぺが膨らんでいて、お口はモグモグと動いている。


「あたちも食べるなのれす」


 ああ、コハルも出て来てしまった。トーマスさんの家族が驚いているぞ。


「ああ、この小さいのも聖獣様だ」


 トーマスさんが軽くそう説明するが、家族は放心状態だ。そりゃそうだ。何処からともなくポンッといきなり白い子リスが出て来て、しかも喋っている。あ、いや、今はほっぺを膨らませて食べている。


「ワハハハ。エルフさんは何でもありだ!」


 そんな事はない。こんなに聖獣に懐かれているのはハルだけだ。


「で、長老。『クリーン』て何だ?」

「魔法だ。我々は『生活魔法』と呼んでいる。ほんの僅かな魔力で発動できるんだ。クリーンなら汚れを落とす魔法だな」

「そんな事ができんのかッ!?」

「そこのカエデも出来るぞ」

「なんだちびっ子! スゲーじゃねーかッ!」

「だから、ちびっ子ちゃうっちゅうねん」


 カエデも獣人族の中では魔法がかなり使える方だ。日々の努力の成果だ。


「カエデも最初は魔法が使えなかったんだ。毎日訓練したからだな」

「なあなあ、俺らでも使えるか!?」

「そうだなぁ……」


 長老の目がゴールドに光った。神眼で見ている。


「まあ、使えんこともないが……なんせ皆魔力量がな、少ないな」

「でも僅かな魔力量で使えんだろう?」

「そうだが……まあ日々の訓練次第ってとこか」

「長老、俺ら風呂がないんだ。食べる時だけじゃなくてな、不衛生なんだよ。だから食中毒も起こしやすい。でも、クリーンが使えたらそれも減らせるんじゃねーか?」

「そりゃそうだな。ルシカ、食べたら少し指導してやってくれ」

「はい、分かりましたよ」

「なんだよ、兄ちゃん。料理もできて弓もスゲーし、魔法も教えられんのか!?」


 カエデを指導したのもルシカだ。ルシカは丁寧に教えてくれるだろう。適任だ。


「おっしゃん、気合ら」

「ん? 魔法か?」

「しょうら。とぉっ! て、気合れしゅんら」

「ん、意味が分からんぞ」


 ハルもリヒトの母や長老から直々に魔法を教わったのに。今更、そんな事を言うのか。


「コハル、この辺りにも植えとくか?」

「そうなのれすね。植えるなのれす」


 精霊樹の事だ。この辺りは湿地帯で自然が残ってはいる。だが、木々が少ない。そして、皆が食べているブラックガネットだ。魔物化したものがいたという事は、瘴気も浄化できていないのかも知れない。


「じーちゃん、植えりゅのか?」

「ああ、その方が良いだろう」

「おう」


 まだまだ、ほっぺに沢山肉が入っていそうだ。お口の周りが脂でベトベトだぞ。


「ハルちゃん、美味しいわね」

「ん、んまいな」


 ああ、シュシュまでピンクのお鼻にも脂が付いている。

 ルシカが見兼ねてハルのほっぺとシュシュの口の周りを拭いている。


「だが、ハル。先にお昼寝だ」

「ん、分かっちゃ」


 ハルは食べたら眠くなる。まだまだお昼寝が大事なお年頃だ。


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