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31ーカエデの家族

「パンがうめー」

「本当ですね、小麦が違うのでしょうか?」


 早速、お昼ご飯をご馳走になっちゃっているハル達。ハルは焼き立てのパンが気に入ったようだ。少し大きめの焼き立てパンを両手で持って齧り付いている。ぷくぷくとした小さなお手々が可愛いぞぅ。


「ふわっふわら」

「麦の良い香りがしますね」

「うちで育てている麦を使ってます。挽きたてで焼き立てなので美味いでしょう」

「うめー」


 と、パンに齧り付いているハル。ちゃんとオカズも食べようね。


「なるほど、やはり挽きたては美味しいのですね」

「おや、料理をなさいますか?」

「ああ、ルシカといいます。彼は我々の食事担当ですな。料理が上手いのですよ」

「それはそれは。エルフの方々が食べておられるものに興味がありますな」

「みなさんと同じですよ」

「りゅしかの飯は超うめー」

「おやおや。アハハハ」


 ハルちゃん、どこに行ってもマイペースだ。


「このしゅーぷもうめーな」

「ハルちゃん、お肉も美味しいわよ」

「本当に驚きですな。私は聖獣様というものを見た事がなかったのですが、喋れるのですな」

「あら、なあに。あたしは特別よ」

「シュシュはまだピヨピヨなのれす」


 コハルがいた。シュシュより格上の聖獣だ。小さいけど。


「やだ、コハル先輩。ピヨピヨはやめて」

「賑やかですみませんな」

「いえいえ、何を仰います。聖獣様にお目に掛かれるだけでも奇跡の様なものです」


 おや、奇跡だと。実は精霊獣もいるのだけどね。今はハルの亜空間の中だ。

 お昼を食べたらハルはお眠だ。ここでもいつもと変わらず、コクリコクリとし出した。


「ハルちゃん、お昼寝やわ」

「すみませんな、まだ幼いもので」

「とんでもありませんぞ。部屋をご用意しましょう。このままだと可哀そうですな。今日は皆さまもゆっくりとしていってください」


 と、ハルとシュシュはいつも通りお昼寝だ。

 その間、カエデは両親や弟とずっと話していた。両親と弟に囲まれ、笑顔で楽しそうに話していた。こんな日が来るとは、カエデも両親でさえも思いもしなかっただろう。

 幼い頃に人攫いに攫われたカエデ。奴隷紋を付けられずっと奴隷だった。

 カエデが生きているのか死んでいるのかさえも知る事ができなかった両親。姉の顔も知らなかった弟。

 あの時、リヒトとハルが気付かなかったら今頃は何をしていただろう。

 ソニル・メリーディが村を見つけなかったら?

 ほんの少しの偶然と必然。それがこの家族を幸せに導いた。それに関わっているのがハルとリヒトだ。リヒトが早くにカエデの奴隷紋に気付いていた。そして解呪した。ハルは攫われてもカエデを信じていた。カエデの人生が変わった出来事だ。

 両親はずっとカエデを心配していた。どうする事もできないが、それでも無事でいてくれと願っていた。そして、ソニル・メリーディが両親のいる村を発見した。そこから両親の行く末も変わっていった。

 偶々どちらもエルフが関わっていた。偶々、2人のベースの管理者がいた。偶々、リヒト達が人攫い集団を壊滅にまで追いやった。それらは全て偶然なのだろうか?

 今更考えても仕方がない事だ。今、カエデも両親も幸せなんだ。それでいい。

 さて、そろそろハルが起きる頃だ。


「シャケ!」

「またハルちゃん変な寝言を言ってるわ」


 ハルは時々寝ぼけて変な寝言を大きな声で言う。ミーレやシュシュはもう慣れっこだ。


「ハル、起きたの?」

「ん~、みーりぇ。よく寝たじょ」

「そう、良かったわ」

「ちゅぎはりゅしかのおやちゅら」

「ハル、ここはどこだか覚えているの?」

「え……ろこらっけ?」

「ほら、やっぱり覚えてないわ。アンスティノスに来たでしょう?」

「ああ。かえれの」

「そうよ。だから、多分ルシカのおやつは無理よ」

「しゃーねー」

「ほら、起きなさい」

「ん」


 のそのそとベッドから起きてきたハル。ちょっと寝ぐせがついているぞ。


「みーりぇ、どこ行くんら?」

「まだ近くに精霊樹があるって長老が言っていたわよ?」

「え、しょう?」

「ハルも分かるんじゃないの?」

「ん〜、まら慣れてねーんら」


 そう話しながらミーレがハルの寝ぐせを直している。ミーレは、こんな事は器用なのに料理は全くといって良いほどできない。

 やっと部屋から出てきたハル。シュシュに乗っている。まだポヤポヤとしていて寝起きだ。


「ハル、起きたか?」

「じーちゃん、しぇいれいじゅがあんのか?」

「ああ、近くにあるぞ。ハル、いい加減にワールドマップの見方を覚えなさい」

「ん、しゃーねー」


 と、そこにルシカがやってきた。エプロンをつけて、手にはトレイを持っている。


「ああ、ハル。起きましたか。ちょうど今日のおやつができましたよ」

「りゅしかのおやちゅ!」

「はい、みなさんもどうぞ」

「おやおや、これはまた何ですかな? 見た事がありませんな」

「ハルが大好きなのですよ。大福といいます。今日は頂いたいちじくを中に入れてあります」

「いちじく!」

「はい。ハル、どうぞ」

「いたらきま~しゅ」


 あぁ~んと大きなお口を開けて、ハムッと大福に齧り付くハル。


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