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30ー再会

「ぷふッ」

「姉さん、どうしたん?」

「カエデ、ヒポポの尻尾……ククク」

「な、めちゃ可愛いやろ?」

「とっても可愛いわ」


 で、精霊女王の件はどうなった?


「ひぽ?」

「ぶもも」

「しょっか」

「ハル、何と言っている?」

「ずっと前に来たんらって。でもしゅぐ行ったって」

「どこに行ったのか分からんのか?」

「ひぽ?」

「ぶも」

「わかんねーって」

「そうか。しかしここには来たんだな」

「じーちゃん、じゅっとじゅっと前らって」

「ずっと前か……もしかしたら何百年も前なのかも知れんな」

「らろ?」

「何百年どころじゃないなのれす。何千年なのれす」

「コハル、分かるのか?」

「精霊樹が教えてくれたら分かるなのれす」


 なんだって? コハル、もっと早くそれを言おう。時々コハルはこんな事がある。まだ何が大切かをしっかり判断できないのかも知れない。

 じゃあ、コハルは精霊樹を見つけたら精霊女王が来たのか分かるって事なのか? 精霊樹って樹だよ。教えるってどうやって教えるんだ?


「精霊樹が教えてくれないと分からないなのれす。ヒポポは精霊獣に聞いているなのれす。その方が確実なのれす」


 なるほどね。どっちでも良いけどさ。本当に、そういう大切な事は早く言おうね。

 何千年も前に精霊女王がやって来て、また直ぐに移動した。それはアンスティノスの中だろうか? ここだけ見てもドラゴシオン王国にあった精霊樹とは違う。元気がないし何本も枯れてしまったのだろう事が分かる。精霊女王がやってきた時はまだ精霊樹が残っていたのだろうか?


「カエデ!」

「ねーちゃん!」


 と、ハル達の元へとカエデの家族がやって来た。元気そうだ。少しふっくらしたかも知れない。健康的になった。弟は以前会った時より身長が伸びている。

 麦畑の作業をしていたのだろう。作業着のような格好で、頭には三角巾の様な被り物をつけていてエプロンもしている。だが、以前よりずっと見綺麗な恰好をしている。良かった。生活も楽になったのだろう。幸せそうだ。


「とーちゃん、かーちゃん、ソラ!」


 カエデが走り寄る。カエデの長い尻尾が嬉しそうにヒョコヒョコと動いている。


「アハハハ。かえれもはえーな」

「本当だ」


 カエデが素直に真っ直ぐに両親に抱き着いた。カエデは自分が小さな頃の記憶がない。人攫いに攫われるまでの記憶がないんだ。だから、両親の事も庇った弟の事も覚えていなかった。それは、奴隷紋をつけられた影響だった。

 だが、両親に会ってからカエデは少しずつ変わったんだ。最初は覚えてないと言って遠慮をしていたが、そのうち直ぐに『とーちゃん、かーちゃん』と呼ぶようになった。

 記憶にはなくても、何か感じるものがあったのだろうか。

 両親と弟が小さな村にいた頃にはよく仕送りをしていた。自分は何も使う必要がないからと言って給金の殆どを仕送りしていたんだ。

 そして、移住が決まった時にホッとした。これからは危険なこともない。食べ物に不自由する事もない。平和に暮らせると喜んだんだ。


「元気やったか? ソラ、ちょっと身長伸びたんとちゃうの?」

「そうやで。おれ、もっと大きくなるねん」

「凄いなぁ。お腹いっぱい食べてんの?」

「有難い事にな、今はちゃんと食べていけてるんだ」

「良かったわ」

「カエデも髪が伸びたわね。女の子らしくなっちゃって」

「そうかな?」


 久しぶりの家族との対面だ。いくら話しても話は尽きないだろう。


「カエデ、取り敢えず領主の邸まで戻ろう」

「うん、長老。とーちゃん達も一緒にいいやんな?」

「もちろんだ」

「え、いやいや。とーちゃん達はいいよ」

「そう仰らず。一緒に参りましょう」

「長老様、お世話になってばかりで」

「なんの。カエデも元気にしてましたぞ」

「皆さまのお陰です。有難うござます」


 おや。ハルちゃんが大人しい。もしかして、また以前の時みたいに拗ねてるのか?


「はりゃへった」


 お腹が空いたらしい。


「もうお昼ですね」

「ん、りゅしか。ひりゅ飯はろーしゅんら?」

「さあ、どうなるでしょう?」

「領主邸でお呼ばれじゃないの?」

「シュシュ、どうでしょうね」

「なんれもいいけろ、はりゃへったじょ」

「ハル、抱っこしようか?」

「いおしゅ、お手々ちゅなぐ」

「そうか?」

「ん」

「ハルちゃ~ん、あたしが乗せてあげるわよ~」

「ん、こんろな」

「あら、冷たいわ」


 白い奴は1頭でも姦しい。皆で領主邸まで戻ってきた。すると、領主が待っていた。


「おお、良かった。会えましたか」

「領主様、ありがとうございます」

「いやいや、久しぶりだろう。皆さんと一緒に昼を食べていきなさい」

「そんな、申し訳ないです。私達は別で……」

「構わんよ。遠慮せんでいい」

「ありがとうございます」


 良い領主じゃないか。折れ耳でポテっとしていて、どう見ても頼り甲斐があるとか統率力があるといった雰囲気ではないのだが。

 どうやら本質は領民思いの良い領主らしい。獣人だから、ヒューマン至上主義のような事もない。領民から好かれているのも理解できる。


「はりゃへった」

「ククク……」

「らってりひと、仕方ねーんら」

「小さいからよく腹が減るんだろう?」

「しょうら」


 ハルちゃん、お腹が空くのは元気な証拠だ。


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