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28ー領主邸

 突然訪問したにも関わらず、門番はすんなりと取り次いでくれた。

 

「エルフの方には以前世話になったのですよ。長老様の事も覚えておりました」

「もしや、ソニルか?」

「はい、ベースの管理者をなさっている」

「俺もベースの管理者なんだ」

「では、最強の5戦士でいらっしゃる!?」

「ああ、そうだ」

「お目に掛かれて光栄です!」


 そう言いながら門番は敬礼をし、目をキラキラとさせて羨望の眼差しでリヒトを見ている。

 ちょっとリヒトの事を見直したかも知れない。でも最強の5戦士の中でも最強はソニルだからね。


「しょにりゅしゃんの方がちゅよい」

「ハル、それを言うな」

「アハハハ、すまんな。領主殿はおいでかな?」

「はい、長老様。直ぐに案内する者が参りますので」


 邸からザ・執事という様な恰好をした者がやって来た。


「よくお越し下さいました。ご案内致します」

「連絡もせずに急に来てすまんな」

「いえ、いつでもお越しください。エルフの方々なら歓迎いたしますよ」


 邸の中へと案内された一行。中は外から見て取れる様に木の匂いがする邸だった。中にも沢山の木が使われている。おばば様の家の様に天井には立派な梁がそのまま見える。

 決して華美な装飾はなく、落ち着いた邸の中だった。

 通された応接室も木枠を態と見えるように出したソファーに上質なクッション。

 

「このテーブル、1本の木じゃないか?」

「本当だな、リヒトでもそんなとこに目がいくものなのか」

「長老、どういう意味だよ」

「アハハハ、すまんすまん」


 皆長老と同じ事を思ったと思うぞぅ。直ぐに領主が部屋に入って来た。


「よくお越しくださいました! 長老殿、その節はお世話になりました」

「いやいや、突然押しかけて申し訳ない」

「とんでもありませんぞ。いつでも歓迎いたします」


 その領主、確かにネコ科の獣人らしい。知で治めているとか、人攫い集団を摘発したとかの話から勝手に想像していたネコ科とは全く風貌が違っていた。どちらかと言うと、シャープな感じの切れ者を想像していたリヒト達。

 前方に折れ曲がりながら垂れた耳に大きな眼、加えて短めの首、丸い顔、丸みを帯びた小柄な身体。その外見はまるで梟のようだ。かなりの丸みを帯びた輪郭でふっくらとした頬が肉付きも良く、少し垂れているようにも見える。そして太く短い尻尾。シャープや精悍とは程遠い風貌だった。愛嬌のあるこのネコ科は何なのだろう?


「ああ、私はスコティッシュフォールドという種類のネコ科なのですよ。少し珍しいかもしれませんな。ワッハッハ」

「ネコちゃん」

「おや、可愛らしいエルフくんですな」

「ワシの曾孫でハルといいます」

「はりゅれしゅ」

「おお、なんと可愛らしい。さすが長命種のエルフですな、曾孫さんとは驚きだ」

「紹介しておきます、ベースの管理者で皇族のリヒトです」

「リヒト・シュテラリールです。突然申し訳ありません」

「なんと、では最強の5戦士ですか!?」

「はい」

「らから、しょにりゅ……」

「ハル、黙っておこうな」

「ん」


 珍しくリヒトに叱られちゃった。また余計な事を言い出しそうだったからな。


「実は近くに参りましたものでカエデのご家族に会っていこうかと思いましてな」

「ああ、三毛の家族ですな」


 お、覚えているのか?


「うちの領地に来た者は大体覚えておりますぞ。元気にやっておりますよ。会っていってくだされ。喜びます」


 と、教えられ一行がやってきたのは広大な麦畑だった。

 一面、見渡す限りの黄金色だ。そよ風に麦穂が揺れている。その麦畑を十字に走る小道に木々が並んでいる。その中にもあった。キラキラと輝いてはいるがドラゴシオンで見たものよりは弱々しい精霊樹だ。しかもたった1本だ。


「おお、ここにもあったな」

「じーちゃん、けろこんなに木がありゅのに1本らけら。どりゃごしおんなりゃきっともっとありゅ」

「そうだな」

「ぶも」

「しょうなのか!?」

「ハル、ヒポポは何と?」

「もっといっぱいあったのが枯れちゃったって」

「そうか……この国には瘴気を浄化する魔石がないからな」

「しょうらな」


 しかし例の魔物騒ぎの跡、街を作り直した際に瘴気を浄化する魔石も設置したんだ。これからは、精霊樹の負担も減るだろう。だが、既に少なくなっている様だ。


「あー、何もみえねーぞ」

「本当ですね。光も見えませんね」

「弱っているのよ。輝きも弱々しいわ」

「シュシュ、そうなん? どっちにしろ自分には見えへんけどな」

「可哀そうな感じね」

「よっぽどだな」

「よし、いくじょ」


 と、言ってまた走るのかと思いきや、ハルは片足を上げてヒポポの背中に乗ろうと足掻いている。


「足が届いてねーじゃねーか」


 リヒトにヒョイと抱き上げられて、ヒポポの背中へ。そして、ヒポポはハルを乗せて走って……いや、浮いて移動する。

 麦畑の中の小道をヒポポが、ぶもぶもと移動していく。精霊獣だからなのか、大きな身体なのに軽やかに宙に浮かんでいる。

 6本ある足や、背中にある2対の翼も一生懸命パタパタと動いている。


「まただわ。あたしがハルちゃんを乗せたかったのにぃ」


 白い奴は放っておこう。そして……


「こはりゅ」

「はいなのれす。ありゃりゃ」

「ぶも」


 コハルがハルの亜空間から出て来て精霊樹を見るなり「ありゃりゃ」と言った。それ程弱っているのだろう。


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