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25ーみんな元気らった

「ひぽ、しぇいりぇいじょーおーを知りゃねーか聞いてほしいんら」

「ぶも」


 ヒポポは返事をしている。そして、大きなカエルの精霊獣に向かいぶもぶもと話をしている。時折返事をしているのか、頭を上下に動かしている。一緒に平たくて短い尻尾も動いているのが見ていて何とも可愛らしい。平たい尻尾の先についている小さな葉っぱ3枚もヒラヒラと動いている。


「ぶもも」

「しょっか」

「ハル、何と言っているんだ?」

「じーちゃん、しりゃねーって」

「そうか。まあ、この国の精霊樹も精霊獣も元気だからな」

「しょうらな」

「ぶもぶも」

「しょう?」

「ぶも」


 ハルにしか言葉が分からないというのはとっても不便だ。


「この国のしぇいりぇいじゅはみんな元気らけろ、しょうじゃないしぇいりぇいじゅがあるって」

「あんだって?」


 またリヒトだ。いい加減にハルの舌足らずな喋り方には慣れて欲しい。


「リヒト様、この国の精霊樹はみんな元気ですが、そうじゃない精霊樹もあると言ってますよ」

「おう」


 ルシカは完璧だ。


「やっぱりゅしかは頼りになりゅな」


 ほらみろ、またハルに言われている。


「慣れだよ、慣れ」


 じゃあリヒトは未だに慣れていない事になってしまうぞ。

 さて、ドラゴシオン王国にある精霊樹は全部回った。次はどこに行くのかな?


「近場から回るか?」

「ん~、あんしゅてぃのしゅが気になりゅけろな」

「そうだな。そっちを先に回ってみるか?」

「ぶも」

「しょのほうが良いって」

「そうか。じゃあ、行くか。アンスティノスへ」

「大変そうだな」

「だろうよ。なんせ状況から考えても1番精霊樹が弱っていそうだからな」

「ああ、あのゴタゴタがあったからな」


 リヒトが言うゴタゴタ。ハイヒューマンの最後の生き残りだったスヴェルト・ロヴェークが魔石に魔物を閉じ込めアンスティノス大公国の2層と3層に出現させるという暴挙にでた事だ。

 最後は自爆して終わった。その際、ハルは危険を顧みずスヴェルトを救おうとしたが駄目だった。あの時、近くにいた長老は勿論、エルフの精鋭が皆でシールドを展開しアンスティノスは大事には至らなかった。ハルもリヒトに覆いかぶさられ、無事だった。

 偶々、各ベースの管理者である最強の5戦士が集まっていた。だから、出現した魔物も討伐できた。あの時、流石にリヒト達だけではそうもいかなかっただろう。


「今日は村に泊まっていってくれ」


 鬼人族の村へと戻って来た一行に、ヤセさんがそう言った。


「また、ルシカの料理を教えてやってほしい」


 おやおや、ここでもルシカの料理は好評だ。


「長老、構いませんか?」

「ああ、もちろんだ。今日はもうユックリさせてもらおう」


 と、いう事で鬼人族の村にお泊りする事になった一行。


「おーにしゃんこっちら! 手ぇのなぁりゅ方へ! おーにしゃんこっちら! 手ぇのなぁりゅ方へ!」


 早速ハルが子供達と遊んでいる。小さな手をパンパンと叩きながら目隠し鬼ごっこだ。

 ハルが歌い出した歌が、今では鬼人族の子供達も一緒に歌っている。ハルの前世にあった歌だ。異世界交流になっているぞ。


「ハルちゃんは可愛いなぁ」

「なによ、カエデ。しみじみと」

「だって、ミーレ姉さんホンマにそう思わん?」

「そうね、天真爛漫だわ」

「そうやんな」

「ブハハハ」

「イオス、何笑ってんの?」

「だってミーレ、見てみろよ。ハルが歌いながら尻振ってるぞ」

「フフフ」

「可愛いなぁ」

「あれ、テンポをとってるつもりか? ズレてねーか?」

「いいんじゃない」

「そうそう、可愛いからいいねん」


 ルシカ以外の大人は夕飯の用意ができるまで休憩だ。

 もう、鬼人族の里の空は夕焼けだ。子供達はお家に帰らなくていいのか?

 夕食はルシカと鬼人族の奥さん達が作ったご馳走に舌鼓をうち、ハルちゃんはもうぐっすりと眠っている。その脇にはいつも通りシュシュとヒポポが横たわる。隣のベッドにはカエデが寝ている。

 長老やリヒト達大人はのんびりと晩酌だ。


「精霊王に直接依頼されるとは、不思議な事もあるものですなぁ」


 鬼人族の村長と一緒らしい。もちろんヤセさんもいる。


「それまでワシ等でも精霊樹や精霊獣というものを認識しておらんかった」

「ワシも初めて聞きましたぞ」

「ハルといると驚く事ばかりだ」

「アハハハ。リヒトでも驚くか?」

「長老、そりゃそうだろう」

「本当ですね、精霊獣なんて知りませんでしたから」

「ハルはその精霊獣に乗っているけどな」

「確かに」

「ハルはシュシュにも乗るし」

「リヒト様、あの亀もですよ」

「あれば俺もびっくりした。城の中庭を闊歩してんだから」

「イオスも止めてくださいよ」

「いや、だってルシカ。殿下も一緒だったし」

「ああ、フィーリス殿下か」

「長老、そうなんですよ。あの2人は碌な事をしません」

「ふぉっふぉっふぉっふぉ、元気ですな」

「村長、元気なのは良いのだが」


 平和な時間だ。のんびりと大人たちがハルの話をしている。

 鬼人族の村の空は、空気が澄み切っていて一面に煌めいている星が幾分近くに見える。心地よい夜風の中、大人たちの話は続いた。


「じゃーなー!」

「村長、世話になった」

「いえいえ、楽しかったですぞ」

「ワシもだ」

「またいらしてください。いつでもお待ちしてますぞ」

「ありがとう。今度はエルヒューレの酒でも持ってこよう」

「おお、それは楽しみだ」


 よい関係が築けたようだ。ハルも子供達に手を振っている。

 さて、次はアンスティノス大公国だ。行く前から大変そうな予感がする。1番瘴気の浄化が進んでいなかった国だ。精霊樹は元気だろうか?


「みんな集まってくれ。転移するぞ」


 長老の周りに集まる一行。ハルはイオスに抱っこされながらまだ手を振っている。

 長老が魔法杖で半円を描くと一行の姿は消えていた。


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