24ーデケーかえりゅしゃん
「結界を壊したのはお前か……?」
「排除するか……?」
「我等はこの地を守護するものか……」
「通すわけにはいかんか……」
やはり、そうなるか。話し合いでは解決できなのだろうか?
「おしッ、やりゅじょッ!」
なんて言いながら、小さな身体で屈伸をしているハル。ああ、やはりヤル気だ。
「ハル、大丈夫か?」
「じーちゃん、りゃくしょうら」
「アハハハ、そうか」
「こはりゅ、いくじょ!」
「はいなのれす!」
コハルがポンッと出てきた。そして、タッタッタッタと走っていくハル。その横をフワリと飛びながら移動するコハル。
「やるか……」
「くるか……」
狐さん2匹も臨戦態勢だ。ハルとコハルが高くジャンプした。
「たぁー!」
「はいぃー!」
はい、出た。ハルちゃんの必殺技!
「ちゅどーーーんッ!」
「どぉーーん!」
ハルとコハルのドロップキックが炸裂だ。狐さん、手も足も出ない。
「ちびっ子だったからか……」
「舐めていたか……」
キュウゥと尻尾を丸める狐さん2匹。
「すまんな、ワシ等はこの奥の精霊樹に用があるんだ」
「なんと……」
「精霊樹と……」
「ああ、通らせてもらうぞ」
「それならそうと……」
「言ってくれたら……」
「いやいや、やる気だったのはそっちだろう?」
「ぐ……」
「ぐぐ……」
どうやらちびっ子だからと舐めていたらしい。そして、精霊樹に用があると聞いて自分達は関係ないと分かった様だ。蹴られ損だ。
「きちゅねしゃん、わりーな」
「ぶも」
そう言いながら小さな手をフリフリしている。狐さんは一体何の為にやられたのか分からない。そして一行はその奥へと進む。
「ハル、分かるか?」
「じーちゃん、あしょこら」
「おう、キラキラしとるな」
「ん、元気ら」
ハルが指差す方にキラキラと光る精霊樹があった。ハルの手の甲の印も光っている。
その精霊樹は小さな祠の様な建物の脇にご神木の様に生えていた。さっきの狐さん達はこの祠を守っていたのだろう。赤い鳥居こそないものの、祠の前には赤い前掛けをつけた狐さんの石像がある。鬼さんといい狐さんといい、ハルの前世に通じるものがある。
「ハル、精霊獣に聞かんとな」
「何をら?」
「精霊女王を知らんかと聞くんだ」
「しょっか、わしゅれてたじょ」
「そうだな」
曽祖父と曾孫、2人揃って忘れていたとは。しっかりして欲しい。
「ぶもッ」
「ん、わかっちゃ」
「ハル、ヒポポは何て言ってんだ?」
「わしゅれりゅなって言わりぇた」
「そりゃそうだ。それが本題だからな」
リヒトの言う通りだ。精霊樹と精霊獣を綺麗だね、キラキラだねと見学するツアーじゃないんだ。精霊女王を助け出す目的があるんだ。旅に出る前は、あれ程早く行くんだ、ピンチだと言っていたハルなのに。
シュシュとコハルだけで行くつもりだったハル。その決意はどこへいった?
「しぇいれいじゅとしぇいれいじゅうがキラキラしててわしゅれてた」
「あんだって?」
またリヒトがどこかのおじさんの様になっている。
「リヒト様、精霊樹と精霊獣があまりにも綺麗だから忘れていたという事じゃないでしょうか?」
「しょうら、しゃしゅがりゅしか。頼りになりゅな」
「関係ねーだろう?」
「りひとより頼りになりゅじょ。飯もうめーし」
「飯かよ!」
「らいじ、飯はらいじ」
「ああ、分かったよ」
リヒトが呆れている。ハルちゃんの基準がイマイチ分からない。飯基準なのか?
「ぶもぉッ」
ヒポポが一声鳴いた。すると……
「まじ……!?」
「これはまた、デカイのう」
と、ハルと長老が驚いている。
「え? 何なん? 今度はどんな精霊獣なん?」
見えないカエデが聞いている。
「カエデ、それがなぁ……」
「超でけーかえりゅしゃん」
ハルが『超でけー』というのも無理はない。前世の日本にはいないだろうサイズ感だ。
体長40~50センチはあるだろうか、ハルの顔よりも大きい。エメラルドグリーンの体色で頭に小さな角が2本。そしてやはり背中には2対の葉っぱでできた翼がある。
目も横に大きいのだが、開いているのか閉じているのかよく分からない。でっぷりとした下膨れの体形だ。そして、大きな声で一鳴きした。
「グワァッ」
「でっけー鳴き声らな」
「アッハッハッハ、これまた大きなカエルだ」
「大きいなのれす。でもまだ子供なのれす」
「しょうなのかッ!?」
「なんとッ!?」
曽祖父と曾孫が同じ顔をして一緒に驚いている。
「グワッグワッ」
「ぶもぶも」
「しょうなのか。どりゃごしおんで1番子供のしぇいれいじゅうなんらって」
「ほう、そうなのか」
「俺には全然見えねーぞ」
「私もです」
「俺もだ」
「私も」
「自分なんてなんも見えへんし」
「でっぷりした大きなカエルなのよ。綺麗な色だわ。エメラルドグリーンて言うのかしら?」
「ほうほう、で?」
「で? て何?」
「しやから、どんなんなん?」
「なんかカエデ、偉そうね」
「なんでやねん、普通やん」
「そう? 背中にね小さな2対の葉っぱでできた翼があるのよ。パタパタ動かしているわ」
「かわいいやん」
「カエデ、だから大きなでっぷりとしたカエルよ?」
「あ、そうやった」
相変わらず、ネコ科の2頭はかしましい。
ちゅどーん!
久しぶりです。
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