22ーカエルさん
「ぶもッ」
またヒポポが一声鳴いた。
すると今度は……
「ゲロッ」
「お、でっけーな」
「ヒキガエルか?」
「じーちゃん背中に翼がありゅじょ」
「おう、今度は2対あるな」
さっきの小さなカエルさんよりずっと大きい。ハルの両手よりも大きい。
やはりスカイブルーの体色をして頭には角がある。そして、ハルが言っていた様に背中には葉っぱでできた2対の翼がある。
「さっきの精霊獣よりも歳をとっているなのれす。でも、メタ爺程じゃないなのれす」
「ほう、メタ爺はそれ程か」
「お年寄りなのれす」
まあ、爺と呼ばれる位だからね。
「あと、100年位で喋れるようになるなのれす」
「100年か!?」
「そうなのれす」
それは、メタ爺が凄いというべきなのか?
「ここの精霊樹や精霊獣はみんな元気なのれす」
それは良かった。それよりもハルちゃん、もう限界だね。
「ああ、ミーレ」
「はい。ハル、来なさい」
「ん……みーりぇ」
ミーレに抱っこされて即寝落ちだ。頑張った。
「それより長老、精霊獣に精霊女王の事を聞かなくても良いのか?」
「……リヒト! お前偶には良い事を言うな」
「なんだよ、偶にはって」
そうだ、大事な事を忘れていた。精霊女王のピンチで精霊樹を探していたんだ。精霊樹が元気かどうかの確認ではない。ま、それも1つの目的だが。
「忘れておったわ。アッハッハ」
「長老……笑い事じゃないぞ」
「今度から聞くさ」
「それで良いのかよ」
「地域の精霊樹は繋がっているとコハルが言っておっただろう。大丈夫だろう」
長老まで大事な事を忘れるなんて、どうした? お年か?
「リヒト、ワシはまだまだ元気じゃぞ」
「いや、なんも言ってねーし」
「そうか? 何やら少々嫌な感じがしたもんでな」
長老、こんな時は鋭い。さすが、アヴィー先生の旦那様だ。
丸くなってお昼寝中のハルのそばには、大きなシュシュとヒポポ。2頭が寄り添う様に……いや、まるで母親の様に添い寝をしている。
「ハルが寝てしまうと動けないからなぁ」
「私達には見えませんからね。リヒト様、お茶をどうぞ」
「ルシカ、ありがとう……これ、何だ?」
「桃大福ですよ。美味しいですよ」
「ルシカ兄さん、大福のバリエーション増えたもんな」
「ハルが好きですからね」
鬼人族に教わった大福だ。ルシカはそれを少し発展させていた。ハルに、苺を中に入れると美味いと言われてからだ。
その時々の旬の果物を入れる様になった。今日は桃らしい。美味そうだ。食べたいぞぅ。
「あぁ〜、この甘さ控えめの白餡にジューシーな桃がええわぁ〜」
カエデが絶賛している。
「でしょう? 白餡に果物がよく合うのですよ」
お、ルシカの自信作らしい。丁寧に水出しした緑茶らしきお茶も出てきた。和風だね。
「美味いな、甘さがちょうどいい」
「本当。ルシカ、美味しいわ」
「うまッ」
皆の評判も良いようだ。
「けど、あれやな。自分は精霊樹とか全然見えへんねんな。残念やわ」
「カエデ、魔力操作はしていますか?」
「え、最近はもうしてへん」
「魔力操作は続けると良いですよ。魔力量が増えますからね」
「ルシカ兄さん、そうなん!?」
「はい、教えましたよ?」
「あぁ〜、今日からまたするわ」
「はい、そうですね」
ぶっちゃけ、今回はハルがいないと動けない。精霊樹や精霊獣がハッキリ見えるのもハルだけだ。何よりヒポポまでハルの添い寝をしている。お手上げだ。
「長老は見えるのか?」
「精霊獣はまだちゃんと見えるぞ。意思を持っているのだろうな」
長老の知識によると、ただそこにある精霊樹よりも何かしら少しでも意思を持っているものの方が見えるのだそうだ。だから、長老には精霊樹が光ってぼんやりとしか見えなかったとしても精霊獣は見えるのだそうだ。
「余程精霊樹が弱っていない限りは見えるがな。しかし、精霊獣にこんなに種類があるとは思わなんだ」
「だよな。ヒポポにメタ爺、鳥に今度はカエルだ。次は何だろうな」
「葉っぱの翼が可愛いわね」
「メタ爺の尻尾も可愛いやんな?」
「小さな葉っぱ3枚だろう?」
「イオス兄さん、そうそう。ヒョコヒョコ動いてんの」
「あら? ヒポポの尻尾はどうだったかしら?」
「姉さん、平べったくて短いねん。しかもその短い尻尾の先にな、小さな葉っぱが3枚ついてるねん。もう後ろ姿は笑い出しそうやで」
「今度はちゃんと見ておくわ」
なんの話しをしているのだか。ハルがお昼寝から起きるまでは、大人の皆は休憩タイムだ。
「良かったらこれを食べてみてくれ」
鬼のヤセさんが遠慮気味に持ってきた。ぷるんぷるんとしていて、上にはきな粉がたっぷりとかけてある。これからの季節に良いよね。
「これは何というのですか?」
興味津々でルシカが聞いた。
「これは、里に伝わっている『わらび餅』という菓子だ。冷やして食べると美味い」
「珍しいですね、見た事も聞いた事もありません」
「この里でだけ食べられているのだと思う」
そう説明しながらも、ヤセさんはまだミーレをチラチラと見ている。ちょっと意識しているぞ。まさか、自分よりずっと年上だとは思わなかったよね。しかも、そこそこ強いんだ。ミーレ姉さんを舐めてはいけない。




