218ーメタ爺再び
おばば様の家に行く前に、5人の龍王と長老達は城の中をうろついていた。ゾロゾロと……しかも国の偉い龍王が揃って城の中をうろついている。
それを先導しているのが、エルフのちびっ子ハルだ。なんだか大きな白い虎に乗っている。
周りは、何だ? と興味津々で見ていたが、ハルは相変わらずマイペース。
「いねーな」
「ハル、もっと裏手の方じゃないか?」
「じーちゃん、しょっか?」
「ああ、精霊樹の近くにいるかも知れん」
何を探しているのかというと、メタ爺だ。とかげの精霊獣だ。
以前は城の中を闊歩していたが、今日は城の中にはいないらしい。
「じーちゃん、なんれわかりゅんら?」
「ん? 魔力感知だ」
「なんらそりぇ?」
「ハルも使えるはずだぞ」
こんな最終話直前に来て、新しいスキルなのか?
「しょっか?」
「ああ、サーチの要領で魔力を探すんだ」
「ああ、ありぇか」
「できるだろう?」
「やったことねーな」
「アハハハ、試しにやってみると良い」
「よしッ」
ハルちゃん張り切って立ち止まった。え? 立ち止まった? まさかハルちゃん。
ハルはその場で、両手を胸にやり目を閉じた。それはワールドマップのポーズじゃないか。
どうやら探す時や感知したい時はこのポーズらしい。ハル限定だが。
長老はそんな事はしない。普通に何もしない。いつの間にかやっている。
その方がかっちょいいぞ、ハルちゃん。
「お、裏らな」
「だろう?」
「おー」
どうやら新しいスキルでも何でもないらしい。今までハルが使っていなかっただけだ。
そんなスキルが、きっとまだまだあるはずだ。何しろハルちゃんは、この世界に来てまだ1年経っていないのだから。魔法自体に馴染みがない。
「ハルちゃん、宝の持ち腐れやで」
「かえれ、しょっか?」
「そうやな。ハルちゃんはちょくちょくそれあるな」
「ハルちゃんはそんな事をしなくても、可愛いからいいのよ~」
白い奴は黙っていよう。ハルちゃん贔屓も程々に。
城の裏側へと出てきた一行。
裏庭には広大な畑と果樹園がある。
ハルが飲んでいた桃ジュースもこの果樹園で採れた桃で作ったものだろう。
野菜畑が広がり、その手前を入って直ぐに精霊樹があった。
その精霊樹がメタ爺の精霊樹だ。最古の精霊樹と精霊獣なのかも知れない。
神使であるコハルさんが、メタ爺には敬意を表している。
「めたじいー! きたじょー!」
ハルが大きな声で呼んだ。すると、1本の精霊樹からメタ爺が出て来た。
「おお、帰ってきたのか」
「めたじい、たらいま」
「おう、元気そうじゃな」
「おー、メタ爺もな」
ハルがメタ爺と話していると、5人の龍王達が何故か遠巻きに見て固まっている。
「バイロン(白龍王)、喋っているぞ」
「ああ、グウロン(黄龍王)、喋っているな」
「喋るのだな」
「なんだヘイロン(黒龍王)私は喋った事があるぞ」
「そうなのか? ランロン(青龍王)」
「ランロンは同じ系統だからじゃないか?」
「ホンロン(紅龍王)皆同じ系統だろうが」
「え、そうか?」
「トカゲだろう?」
「誰がとかげじゃ、ワシはこれでも龍だと言うておろうが」
ちょっと龍王達の名前が面倒だ。誰が誰なのか分からない。
それにしても、すっかりメタ爺はトカゲさんだと思い込んでいた。そういえば以前も違うと話していた。
どうやらメタ爺と龍王達は、交流がある訳ではないらしい。
「おばば様はよく話しているみたいだけど、俺達は見る事もあんまりなかったからな」
「そうなのですか、ホンロン様」
ルシカはよく覚えている。各龍王の名前なんて覚えられない。
野菜畑と麦畑の間の小道に、等間隔に針葉樹が植えてある。そこにも精霊樹が生えている。
どの精霊樹も元気そうだ。
「つんつん」
「これ、突くんじゃないと言うておろうが」
「らってめたじい、ちっしぇーかりゃな。アハハハ」
「お前さんは、やんちゃじゃのう。で、精霊女王は見つかったのか?」
「おー、元気らったじょ」
「そうかそうか。ありがとうな」
「どうってことねーじょ」
やはり態度は大きいハルちゃん。
「つんつん」
「だから突くんじゃないわい。ワッハッハッハ」
「アハハハ」
メタ爺も笑っている。この国は大らかだ。
メタ爺とじゃれたり、シュシュに乗って畑の中を走ったり。ハルは暫く思い切り遊んだ。
「めたじい、またくりゅじょ」
「そうかそうか。また元気な顔を見せてくれると良い」
そう言って、メタ爺と別れた。それからやっとおばば様の家に向かった。
おばば様の家はそんなに大きい訳じゃない。小さくもないが。
一人で住むには広すぎる。だが、こんなに何人も来ると狭く感じるだろう。
5人の龍王とリヒト達一行。みんなで紅龍王に乗っておばば様の家にやって来た。
そして紅龍王が、地面に降り立つと同時に背中から飛び降りるハル。
「とぉッ!」
「こら、ハル! だから飛び降りるんじゃないと言っているだろうが!」
長老がまた怒っている。心臓がキュッとなったか?
「じーちゃんが早く死んでも知らんぞ!」
「じーちゃん、らいじょぶら」
会話になっていない。この曾孫と曾祖父は、良いコンビだ。
そう言えば、アヴィー先生だけがいない。また後で、拗ねるんじゃないか?
「おばば様、アヴィーも後で来ると言っているんだが」
「ああ、構わないよ」
「すまんな、大人数で押しかけてしまって」
「何言っているんだい。長老達ならいつでも大歓迎だよ」
「おばば様、有難う」
やっぱりアヴィー先生も来るらしい。自分だけ仲間外れにしないでと、拗ねられるよりは良い。
お読みいただき有難うございます!
なかなか終わらな〜い^^;
もう少しお付き合いくださいね!
 




