215ーよく戻った
「ハル、先に報告だ」
「ええー、おりぇいらねくねー?」
「精霊王にも会わないといかんだろう」
「ええー」
「ハル、僕は待っているのだぞ」
「うん、ふぃーれんか」
ハルちゃんが直接精霊王に依頼されたのだろう。ハルがいらない訳がない。
皇帝や皇后も同席して、城の中で一番近くに世界樹が見える部屋に揃ってやってきた。
もちろん、ハルちゃんチーム揃ってだ。
「ハル、呼び掛けてくれるか?」
皇帝が少し緊張気味にハルに声を掛ける。
以前なら長老やリヒト達も緊張していたところなのだが、南東のベースで一緒に食事をした。
その為、皆には緊張が伺えない。皆、自然体で待っている。
ハルがトコトコと前に出て、世界樹に向かって声を掛ける。
「しぇいれいおー、帰ってきたじょ」
と、ぶっきらぼうにハルが声を掛けると、部屋の中が白く光り出し光の粒子が集まり人型となった。
おやおや? その人型が今日は二つあるぞ? と、いう事は。
そこには、世界樹自身の精霊であり精霊王が立っていた。いや、宙に浮いていた。
ハルと良く似た、エメラルドの様なグリーンが入ったゴールドの髪が輝きながらフワリと靡いている。
その精霊王に寄り添うように、精霊女王が一緒にやって来た。
腰まであるエメラルドグリーンが入ったゴールドの髪が、煌めきながら揺れている。宙に浮くその二人の姿は神々しく、淡く優しくそして力強く輝いている様だ。
二人仲良く寄り添っている。
「ハルちゃん、お世話掛けちゃったわね」
「おー、どうってことねーじょ」
ハルは変わらずポヨンポヨンの幼児体型で普通に立っているが、ハル以外の全員が跪いていた。
「皆、楽にしてほしい。此度は世話になってしまった」
精霊王がそう声を掛けると、やっと皆顔を上げた。
「これは精霊王様!」
皇帝だ。前回は精霊王を見る事が出来なかったのに、今回は見えているらしい。
「皇帝も世話を掛けた」
「ふふふ、お世話になっちゃったわね」
相変わらず、精霊女王はのほほんとしている。これは、おおらかと言っても良いのか?
「ハルちゃん、有難う」
「気にしゅんな」
「ふふふ、また一緒に遊びましょうね」
「おー」
また? 精霊女王にとっては、魔物の体内からの脱出は遊びのようなものだったのか?
「楽勝らったからな」
「そうね〜」
「すぺしゃるなのれす」
確かに、スペシャルちゅどーん! と叫んでいた。どこがどうスペシャルなのだか。
「精霊女王が私達の魔力をコントロールしてくれている。だから皆に姿が見えているだろう?」
「そうなのですか? 私共が拝見できるのは有り難い事です」
「皇帝、そう気を張るな。気軽にしてくれてよい」
「有難うございます」
精霊女王が無事に戻って、精霊王もホッとしたのだろう。以前とは違って表情が柔らかい。
それに精霊王と精霊女王、この二人寄り添って仲睦まじい。
「ヒポポも有難う。態々、手助けしてくれたのね」
「ぶも」
短い尻尾がヒョコヒョコと揺れている。
そして、ハルちゃんは。
「ぶふへッ……」
また小さな精霊達に囲まれていた。
「らから、なんも見えねー」
――ハル〜
――ハル〜、ありがとう!
――ハル〜、あそぼう〜!
「あらあら、みんな近寄り過ぎなのよ。ハルちゃんが埋もれちゃうわ。うふふ」
精霊女王に言われて精霊達が離れると、ふぅ〜と息をつくハル。
「見ちゅかって、良かったじょ」
「ああ、ハル、長老、リヒト達も有難う」
「いえ、良い経験をさせて頂きましたぞ」
「長老、そう思ってくれるか?」
「はい、楽しい旅でした」
「そうか、長老の魔法には私も感心したがな」
おや、知っているのか? 程々にと言われているのに、長老はいつもスルーして遠慮ない感じで魔法を使っていた事を。
「ワッハッハ。まあ、程々です」
「長老、よく言うよ」
「しかし長老は、まだまだ本気ではないだろうに」
あれで、まだまだなのか?
「じーちゃんは、しゅげーかりゃな」
と、ハルが自慢する。ハルにそう言われると、長老は嬉しそうに眉が下がる。
可愛い曾孫に自分の事の様に自慢されるのは、さぞかし嬉しいのだろう。
「ハルちゃんとコハルちゃんの、ちゅどーん! は、最高だったわ」
「しょうらろ? ちゅどーん! は、ちゅえーんら」
「強いなのれす」
ヒポポの頭に乗っているコハルまで胸を張っている。
「精霊王に返すなのれす」
「コハル、実か?」
「はいなのれす」
「コハルに預けておこう」
この先コハルが見て、この場所は精霊樹が必要だと思ったら植えて欲しいと、精霊王が言った。
「また旅に出る事もあるだろう」
「ヒポポを送って行ったら、しばらくはゆっくりしますよ。」
「じーちゃん、おばばしゃまのとこれ、お泊りしてー」
「おう、そうだな」
「うしゃぎ狩るんら」
「アハハハ、兎か」
ハルの大好物、ヒュージラビットだ。
まだルシカが沢山持っているだろうに。
「毎日食べてー」
「アハハハ」
「ハルは可愛い。この世界に愛されている。ハル、よくこの世界に来てくれた。よく精霊女王を探し出してくれた。感謝するぞ」
「えへへ〜」
おや、珍しくハルが照れている。
お読みいただき有難うございます!
不覚にも、昨日は投稿するのを忘れてしまいました!
申し訳ないです。
完結まで頑張ろう!
いつも有難うございます!
 




