213ー一緒に帰る
「人の食べ物を食べたのも、何千年ぶりだろうか?」
とは、精霊王の言葉。
「私は何百年か前に頂きましたわ」
とは、精霊女王。
「ぶもぶも」
これはヒポポ。この旅で初めて食べたけど、美味いんだ。とでも言っているのだろう。
「まあ、美味しいなら良かったわ」
いいらしい。
これはきっと、おばば様のところに帰っても一緒に食べるのだろう。
おばば様は一人だから、賑やかになって良いかも知れない。おばば様なら、喜んでくれるだろう。
「美味しいものだな。ルシカ、本当に美味しい」
「それは、有難うございます」
ルシカもこの状況に慣れてきた。普通に精霊王と話をしている。この料理は、どうこうと説明までしていたりする。
「うめーな」
「ハルちゃん、おかわりあるで」
「おー」
「カエデ、あたしもおかわり欲しいわ」
「シュシュ、食べんの早いな」
ハルとカエデやシュシュもいつも通りだ。ミーレもいつも通りハルの隣に座っているし、イオスも気にせず食べている。
コハルさんはどうした?
「こはりゅ、こりぇうめーじょ」
「美味しいなのれす」
しっかり貰って食べていた。ほっぺが膨らんでいる。和やかな食事風景だ。
「信じらんない。ねぇねぇ、コニー。僕は夢を見ているのかな?」
「いえ、ソニル様。現実ですよ」
ソニルはまだ、精霊王と精霊女王がいるこの状況が信じられないらしい。そりゃ、そうだ。
ハル達がやって来るまで、精霊樹や精霊獣の存在を知らなかったし、見る事だってできなかったのだから。
「長老、私たちは先に戻る」
と、まだ優雅に食事をしながら精霊王が言った。そりゃそうだろう。世界樹を離れてまでやって来ているのだから。
「え? 精霊王様、私はエルフ達と一緒に戻りたいですわ」
やはり呑気な精霊女王。
「何を言っている。私と一緒に戻るぞ。皆心配している」
「えぇー、でもぉ」
だってハルちゃんが可愛いしぃ。なんて言っている精霊女王。
「戻ったりゃまた会いに行くじょ」
「だって、ハルちゃ〜ん」
どうやら、ハルのファンクラブ会員が増えたらしい。
「こりぇ、超うめー」
「ハルちゃん、どれや?」
「こりぇりゃ、トマトしょーしゅの肉」
「ハルちゃんは、トマトソース好きもんなぁ」
「うん、しゅき。らいしゅき」
と、ほっぺにトマトソースがついている。
「ふふふ、ハルちゃんは可愛いわぁ〜」
「ハル、ほっぺ拭きましょう」
「ん、またちゅくけろな」
いつもの事だ。こうして皆で食べると、より美味しいのだろう。
「長老達は転移か?」
「はい。大森林の各ベースには転移の魔法陣を置いておりますからな」
「長老なら、そんなものは必要ないだろう?」
「アハハハ、そうですな。しかし、他の者が移動するのに便利です」
長老ほど、転移できる者はいない。だが、各ベースに転移できるだけで利便性は跳ね上がる。
と、言ってもエルフしかそんな事はできない。いくら転移の魔法陣があったとしても、そこに魔力を流さないといけない。
ヒューマン族やドワーフ族だと魔力量が足らない。逆にドラゴンだと、飛べるので必要ない。
「精霊女王、食べたら帰るぞ」
「はいは〜い、分かりましたぁ」
おやおや、拗ねている。
「だってぇ、やっと出て来たのにもっと大森林の中にいたいわ」
「けろ、おりぇりゃも、じーちゃんの転移れ帰りゅじょ」
「そうなのね、ならいいわ」
少しお転婆さんなのだろうか? 好奇心旺盛なのだろうか?
「それで精霊女王、全部の精霊樹を回れたのか?」
「いいえ、食べられちゃったから回れなかったわ。でも、大丈夫みたいだわ。ね、長老」
「精霊女王をお探しするのに、ワシ等が行ってきましたぞ」
「本当に手間を掛けた」
そうそう、大陸の精霊樹を確認して、精霊樹の実を植えたりもした。
「ハル、有難う」
「いいじょ。元気れみちゅかって、よかったじょ」
「ハルちゃん、有難うね」
「おー」
食事を終えて、精霊王と一緒に精霊女王が戻って行った。
「ハルちゃん、絶対に会いに来てちょうだいね〜!」
と、精霊女王は最後まで言っていた。
「ハル、魔物の中で精霊女王は捕らわれていたのか?」
「じーちゃん、ちげー。おりぇとこはりゅが落ちたとこれ、寝てたんら」
やっぱり呑気だ。少〜し眠ってしまったなんて程度ではないじゃないか。
ハルとコハルが落ちても気付かなかったのか?
「起こしたんら。逃げりゅじょってな」
「アハハハ! そうなのか?」
「しょうら。ネムネムらったじょ」
よく中から出てこられたものだ。
「しぇいれいじょうおーは、ちゅえーんら。きっと、自分れしゅぐに出りぇたんりゃ」
「そうなのか?」
「しょうら」
ハルが言うには、ハルの『すべしゃるちゅどーん!』あれで魔物を突き破れたのも、先に精霊女王がその部分を削ぎ落としてくれたからだそうだ。
だから、ハルでも簡単に破って出る事ができたのらしい。
「ならハルだけならヤバかったのか?」
「りひと、しょんな事もねー」
どっちなんだ?
「こはりゅもいりゅしな。しゅぺしゃりゅらしな。よゆうら」
「余裕なのかよ」
「しょうら。しゅぺしゃりゅらからな。へへん」
凄いだろう? と、言いたいらしい。コハルまで一緒に胸を張っている。
「スペシャルなのれす」
はいはい。それでもみんな心配したんだ。
お読みいただき有難うございます!
多分、次で終われると思います!^^;




