212ー心配だった
精霊女王がルシカのユニコーンに乗って、ベースへと戻る一行。ルシカが緊張している。ソニルのユニコーンに乗せて欲しいと、直談判していた位にだ。
「そんな、私ですか? 畏れ多いですよ。ソニル様、お願いします」
「ええー、僕だって畏れ多いよ!」
なんて会話があったらしい。
ハルちゃんはいつもの様に、リヒトの前に乗っている。足をプランプランさせながら。
精霊女王が気になるのか、ちょこちょこ後ろのルシカを見ている。
「ハル、危ないぞ」
「りひと、へいきらじょ。けろ、ありぇらな」
「なんだ?」
「しぇいれいじょうおーも、ゆにこーんに乗りゅんらな」
「アハハハ、何だそれ?」
「らって、しぇいれいじょうおーらじょ。フワ~リフワフワって飛ぶのかと思ったじょ」
「なるほどな」
「しょれに、きれいらな」
「おう、そうだな」
「ぴっかぴからな」
「あははは、そうだな」
呑気な事を言っている。ハルが魔物のお口の中に落ちて行った時には驚いた。『しゅぺしゃるちゅどーん!』と言って出て来た時はもっと驚いた。
そのネーミングはどうなんだ? いや、そこじゃない。
ベースに到着すると、見知らぬ綺麗なお姉さんが一緒だったから他の者達も驚いていた。
それはそうと、精霊女王の姿は誰にでも見えるのだな。精霊王は見えなかったぞ。
「ふふふ、見えるようにしているのよ~。今はその方が便利でしょう? ハルちゃんやコハルちゃん、それと長老も見えるかしら。他の人達に見えないと、ぶつかっちゃうじゃない?」
ぶつかるか? そんな問題なのだろうか?
なんだか呑気な精霊女王。
実際のところ、あの魔物のお腹にはどれ位の時間いたのだろう? と、聞いても時間の概念が違い過ぎてよく分からなかった。
「そうね~、少し眠っちゃったかしら?」
なんて言っている。いつでも出る事ができたのだろう。なら、先に出れば良いのに。人騒がせだ。
「だって意外に硬かったのよ」
はいはい、そう言ってましたね。それでも余裕ではないか?
精霊王が心配していたぞ。
みんな揃ってベースの食堂で、ルシカの料理を待っていた頃だ。
突然真っ白な大きな光が現れて、一箇所に集まりどんどん人型になったかと思うとそこに現れたのが。
「しぇいれいおー!」
「ハル、助け出してくれたのだな!」
と、心配していた精霊王が現れた。まさかまさかの登場だ。
世界樹を離れても大丈夫なのか? と、言うか皆に見えているぞ?
「ああ、見える様にしているんだ。ハル、長老、リヒト、世話をかけた」
「精霊王様、とんでも無い事です」
思わず、長老やリヒト達が席を立ち、跪いている。
ハルは一人、ちびっ子用の椅子に座ったままだ。もう手にはフォークを持っている。
ルシカの料理はまだかと待っている。
「ああ、楽にしてくれ。本当に今回は迷惑を掛けた」
「ご無事で良かったですな」
「本当だ。呑気なのだから」
あらら、精霊王にも呑気だと言われている。
「何百年も行方が分からないなんて、心配するだろう」
「あら、そんなに経ったかしら?」
なんだと? 何百年もあの魔物の中にいたのか?
「だから、すこ~し眠っちゃったの。ふふふ」
これは少しじゃないな。がっつり爆睡したのだろう。
精霊王も大変だ。心配して態々ハルに捜索を依頼したのだぞ。
「こんなに可愛いエルフのちびっ子がいたのね。知らなかったわ」
「ハルは特別だ。私も加護を授けている」
「あら、私も授けちゃったわ」
そう、どんどん無敵になっていくハルちゃんの加護。その本人はよく分かっていな様だけど。
「まらかな~。はりゃへったな~」
精霊王が来た事はもう良いらしい。
「しぇいれいおーも、りゅしかの飯をくってくか?」
「アハハハ、そうか?」
「うん、うめーじょ」
「長老、良いのか?」
「勿論です、宜しければご一緒にどうですかな?」
「なら、頂こう」
長老も対応に慣れてきたらしい。にこやかに普通に喋っている。
それよりも、ソニルとコニーが固まっているぞ。精霊女王だけでもとんでもない事なのに、精霊王まで出てきた。もうキャパオーバーだ。
そこに両手にトレーを持ったルシカが調理場から出て来た。
「ハル、お待たせしまし……た……!?」
そりゃ驚く。精霊女王の隣に見た事の無いとってもピカピカした男性が座っている。
しかもオーラが違う。普通じゃないと直ぐに分かる。
「りゅしか、しぇいれいおーらじょ」
「え……!?」
危うく、トレーを落としそうになった。危なかった、ハルちゃんの昼食が。
「ルシカ、ご一緒されるそうだ。精霊王様にも食事を頼む」
「え、ええ。長老。直ぐにお持ちしますね」
「あ、ルシカ兄さん。自分も手伝うわ」
カエデが立って行った。カエデは結構普通だ。
シュシュも普通だった。相変わらずハルちゃんの側で、ルシカの食事を待っている。
何気にこの今のメンバー、とんでもなく珍しい。有り得ない。
聖獣に精霊獣だけでも珍しいのに、精霊王と精霊女王だ。
精霊王が世界樹の側を離れる事なんて、普通はないらしい。だが、余程心配だったのだろう。
今回、精霊王の姿を皆が見る事ができたのは、世界樹から離れているという事もあるのだそうだ。
世界樹の側にいる時は力が強すぎて、精霊王が見える様にしていても見えない者がいる。その者が持つ魔力量によるらしい。
世界樹から離れるなんて、滅多にない事だ。
「私が世界樹から離れた事等、何千年ぶりだろうか?」
と、いう程に珍しい。それ位に心配を掛けたと言う事だ。
あと1、2話で完結するつもりが…
いやいや、もう直ぐ完結しますよ。^^;




