211ー精霊女王
「どうやって出ようかしら? と、思っていたらこの子達が落ちてきたの」
「無事れ良かったじょ」
「有難う。可愛らしいあなたはハイエルフかしら?」
「おりぇは、ハイエルフとハイヒューマンのクォーターら」
「まあ、珍しいわね」
「私はその子の曾祖父で、エルヒューレ皇国の長老です。ご無事で何よりですな」
「有難う。本当に心配かけちゃったわね」
この口ぶりだと、もしかして自分で脱出できたのではないか? 余裕があるぞ。
「でもねぇ、意外と硬かったのよ」
はいはい。硬そうですね。巨大な樹の魔物だから。
「あなたはちびっ子なのに強いわね」
「はりゅら」
「ハル?」
「しょうら。この小っしぇりしゅは、こはりゅら」
「ハルもコハルも有難う。助かったわ」
そう言いながら、ハルの額にチュッとした。するとハルの額が光った。ペカーッと白く光ったんだ。
「精霊女王、それはもしや?」
「ハルに私の加護を授けたわ。お礼よ」
ハルの加護がどんどん無敵になっていく。世界樹の加護も持っている。そこに精霊女王の加護だ。もう、無敵ではないのか?
「いつでも見たい時に精霊だけでなく、精霊樹や精霊獣が見えるわよ。私とも念話ができるわ」
「おー、しょっか。ありがちょ」
「とにかく一度ベースに戻りましょう」
「りゅしか、りゅしか」
「はい、お腹が空きましたか?」
「ん、ぺこぺこら」
「ベースに戻ったら何か作りましょう」
「やっちゃ」
「ちょっと待って、コハルちゃん」
「はいなのれす」
精霊女王が引き留めた。
何だ? まだ何かする事があるのか?
「あの魔物が燃えた跡に、実を植えてくれないかしら?」
「いいなのれす」
まだプスプスと燻っている。イオスとコニーで落とした魔石等を回収していたところだ。
トレント系は果物や蜂蜜などを落とす。それを忘れてはいなかった。
「あの燃えた跡は魔素が多くなっちゃうわ」
「わかったなのれす」
コハルが何処からか、精霊樹の実を取り出す。どんどん地面へと吸い込まれる様に消えて行く。
「さすが聖獣だわ」
感心している精霊女王。結構呑気だ。
ポヤポヤしている。天然なのか? もうこれ以上天然はいらないぞ。
ハルだって、ある意味天然が炸裂しているのだから。
「長老、お願いなのれす」
「ああ、任せなさい」
はい、もう何も言わない。思い切りやっちゃって下さい。
ハルが魔物の口の中に落ちて行って、長老は本当に心配していたんだ。顔色が変わった位にだ。
なのに『すぺしゃるちゅどーん!』なんて叫びながら、魔物の幹を破って出て来たハル。
もしかして、態と口の中に落ちて行ったのか? コハルと一緒に気持ち良くスポーンと落ちて行った。
それにしても、あんなに心配を掛けてはいけない。
その長老が魔法杖を出し、静かに詠唱した。グリーンゴールドに煌めく球体がついたエンブレムの魔法杖を、コツンと軽く地面を小突き掲げる。
「ピュリフィケーション、ヒール」
コハルが実を植えた場所だけでなく、ハル達がいる谷全体に白い光がヴェールの様に下りてきて地面に消えて行った。
これは今までとは比べものにならない最大級だ。長老、思い切りやったのか?
「まあ、ふふふ」
「長老、マジでやり過ぎだ」
「何を言っている。まだまだ抑えておるわ」
抑えているらしい。なら長老の本気ならどうなるのだろう。
コハルがうえた精霊樹の実から、ポコンと芽が出てそのままぐんぐん育ち立派な精霊樹になった。
元々あった精霊樹には、実が幾つも生っている。
そして、地形的に魔素が多かった谷が浄化され、緑がイキイキとし出した。
「ハイエルフの長老って凄いのね」
「これで魔物は発生しないでしょう」
「ええ、有難う。ハイエルフには昔から力を借りているわ。あら、精霊獣も一緒なのね」
「ぶも」
ヒポポだ。ずっと一緒に来てくれていたヒポポ。
「有難う、あなたが協力してくれていたのね」
「ぶも」
「それにしても、心配しましたぞ。精霊王もそれは心配しておられた」
「精霊王は心配性なのよ。ふふふ」
いや、誰だって行方不明になれば心配するぞ。しかも何十年、いやもしかしたら何百年なのではないのか?
「大丈夫よぅ、消えたりしないもの」
「しぇいれいじょうおーは、ちゅえーのか?」
「ふふふ、私は大した事ないわよ。ただ、魔物には負けないわね」
「おー、しゅげーな!」
と、言いながら魔物に食べられちゃっていたのは誰だ?
「しぇいれいじょうおーも、りゅしかの飯食べりゅか?」
「あら、良いのかしら?」
え? 精霊女王って、人の食べ物を食べるのか? 食べないイメージがあるのだけど。
「精霊獣と同じよ。食べなくても平気だけど、食べる事もできるわ。あなたは色々食べたみたいね」
と、ヒポポを撫でる。分かるのか?
「大森林の精霊獣ではないのね? 何処の子かしら?」
「ぶもぶも」
「まあ、そうなの? それは有難う」
会話をしている。そりゃそうだろう。精霊女王だ。精霊獣の言葉も分かるのだろう。
「一緒にべーしゅに行くじょ」
「ええ、ハルちゃん。有難う」
もうハルちゃんなんて呼んでいる。
魔物から出てくる時も、しっかり手を繋いでいた。リヒトに抱きかかえられた時には、精霊女王がハルを抱っこしていたりした。
魔物のお腹の中で、仲良くなっちゃったか?
お読みいただき有難うございます!
コメントを有難うございます!
私の趣味で続けていたハルちゃんreturnsを、楽しく読んで頂けていた様で嬉しいです!
リリやロロのお話と違って、returnsは思い付きで始まりプロット等もなく、100%私の趣味でした。^^;
ご存知の方もおられると思うのですが、新作も投稿し始め、書籍化作業も重なってしまいました。また余裕ができたらハルちゃんを書きたくなるかも知れません。
その時は是非読んで頂けると嬉しいです!
あと一話か二話程度で完結になる予定です。
最後まで、宜しくお願いします!
 




