205ーすぺしゃる
「りゅしか、おやちゅら」
「ハル、起きましたか」
シュシュに乗ってハルちゃんの登場。ハルが食堂に入って行くと、相変わらずルシカは調理場にいた。どこのベースに行っても、ルシカは料理をしている。
ちゃんとシェフがいるのだけども。
仲良くみんなのオヤツを作っている。
「きょうのおやちゅは何ら?」
「今日はアップルパイを作りましたよ」
「おおー!」
「ハルちゃん、アイス載せられるみたいやで」
「おおぉー!」
そりゃ、載せる一択だろう。ハルは生クリームも好きだが、アイスはもっと好きだ。
「のしぇりゅじょ! いっぱいのしぇりゅ!」
「はいはい、そうやんなー」
カエデがルシカの手伝いをしている。
食堂に入ると自然にルシカの側に行く。
ハルの世話をする時はミーレに、普段は師匠のようなイオスの側に。
みんなに可愛がられて、カエデもどんどん明るく可愛くなっていく。
「カエデ、俺も」
「私も」
「あ、俺もアイス有りで」
「あたちもなのれす」
「ぶも?」
リヒト、ミーレ、イオスにコハルだ。ぶも? と疑問形なのはヒポポ。
アイスが何なのかを知らないらしい。
長老とソニルもハルの部屋にいたはずだが、どこに行ったのだろう?
「うめーな」
「ハルちゃん、美味しいな」
「美味しいなのれす」
「ぶもー」
「うん、さっくさくでちゅめたいじょ」
それはアイスを載せているから冷たいんだ。
「ぶぶもッ!?」
ヒポポがアイスを食べて、小さな目を見開いている。冷たくて驚いたのかな?
先にアイスだけ食べてしまった。気に入ったらしい。
「ハル、ほっぺに付いてますよ」
「いいんら、またちゅくかりゃな」
「アイスやもんな、そら付くわ」
「しょうしょう」
なにが、そうそうなのだか。
「ルシカ、あたしアイスだけもっと欲しいわ」
「はいはい」
シュシュは一口が大きい。もうアイスがなくなっている。
アップルパイだってそれはハルの何倍だ? という大きさだ。
「りゅしか、おりぇもあいしゅほしーじょ」
「ハルは食べてからですよ」
「ハルちゃんまだあるやん」
「らってほしいんら」
「あんまり食べたらお腹壊すで」
「しょお?」
「そうやで。ハルちゃんはまだちびっ子やからな」
「かえれらって、ちびっこら」
「なんでやねん、カエデちゃんはもう大きいっちゅうねん」
賑やかなハルちゃんチームだ。
ハルのほっぺにアイスが付いている。生クリームもそうだが、高確率でほっぺに付ける。
大きなお口を開けて食べているのに、どうしてだ?
「らって、もっとお口いっぱいにしてーんら」
いっぱい頬張りたいらしい。
モグモグとお口を尖らせて食べている。コハルさんのほっぺも膨れている。
「ぶも」
「おや、おかわりですか?」
「ぶもも」
「はいはい」
ヒポポも最初は食べなかったのに、それが今では何でもよく食べる。
これは、おばば様の元に帰った後に大変ではないか? おばば様と仲良く食事をしてほしいものだ。
「それで、長老はどうした?」
「じーちゃんは、しょにりゅしゃんとろっか行ったじょ」
「そうなのか?」
「しょうら。おきたりゃ目の前にいたけろな」
「目の前か?」
「しょう。ありぇはらめら」
「ふふふ」
ミーレが笑っている。ハルが眠っている間に、長老とソニルが何をしていたのかを知っているから。
「ハルちゃんの事が可愛くて仕方ないねんて」
「おりぇもじーちゃん、しゅきらじょ。けろ、あんな事はしねー」
どんな事だと思っているのか。ただハルの寝顔をニヤニヤと見ているだけなのだが。
「あんまな、みりゃりぇたくねーよな」
「ハルちゃん、分かってんの?」
「かえれ、そりゃわかりゅじょ」
なんだ、分かっていたのか?
「けど、今日はソニルさんの方が酷かったやんな。ミーレ姐さん」
「そうね、ふふふ。二人共一緒よ」
「え、しょにりゅしゃんもか?」
「そうやで」
「ええー……」
きっと長老はいつもの事なのだろう。だからハルも敢えて何も言わない。
だが、まさかソニルもそうだとは思わなかったらしい。
そこにやって来た、今話題になっていた二人だ。
「今日は何だ?」
「香ばしい良い匂いがする~」
長老とソニルだ。
「じーちゃん、あっぷりゅぱいら。あいしゅちゅきらじょ。しゅぺしゃりゅら」
「アハハハ、スペシャルなのか。ルシカ、ワシももらおう」
「僕も~」
何もなかった様に話すハルは、大人か?
「長老、それで明日はどこまで行くんだ?」
「ああ、それをソニルと話していたんだ」
二人で相談していたらしい。
何故かと言うと、その場所は。
「谷間になっている場所なんだよ。一番底にあるんだ」
ソニルが薬草が生息している場所だと言っていたそこは、ハルの前世で言うと断層なのかも知れない。
大森林の中で、地面が割れたのかと思えるような谷間がある。
そこを降りて行くと、広くなっている場所がありその中央らしい。
樹々がそこだけ避けて生えているかの様に、薬草だけの場所があるのだそうだ。
「普通の馬だと降りられないよ。ユニコーンで飛んで行かなきゃ」
「そんな場所なのか?」
「そうなんだ。僕達もそこに生息している薬草が必要な時しか行かないし」
ユニコーンで行けるのなら問題はないだろう。
「え? あたしどうすんの?」
「シュシュは小さくなるか?」
「そうなの? 降りられないかしら?」
「シュシュ、無理だよ。足場がないんだから」
「そうなの? どんな場所なのかしら、楽しみだわ」
そうだった。シュシュは色んな景色を見るのが好きだと以前話していた。




