204ー大人二人が
一度ベースに戻って来た一行。もう一箇所の精霊樹には翌日行くらしい。
お昼を食べたらハルはお昼寝だ。
スヤスヤとシュシュにくっついて、丸くなって眠るハルをジッと見ている……ソニルが。
「ああ、可愛いなぁ~」
「ソニル、見すぎだぞ」
「長老、いいじゃない。見ているだけなんだから」
そういう長老も、じっとハルを見ている。
「可愛いのぉ~」
「ね、本当に可愛い。このぷっくりとしたほっぺだよ」
「ああ、お口もな」
「うんうん、さくらんぼみたいな色をしているよ〜」
流石に大の大人が、二人並んでそうしているのはどうなのだろう?
ハルが知ると引かれてしまうと思うのだが。
「長老、ソニル様、いい加減にしてください」
「ちょっと引くで」
ほら、ミーレとカエデに言われてしまった。
「カエデ、茶を淹れてくれるか?」
「はいにゃ、ソニル様も淹れよっか?」
「うん。有難う」
ハルの眠っている部屋でお茶をするらしい。
ミーレまで座ってお茶を待っている。ミーレ姐さん、堂々としたものだ。
「で、長老。もう一つの精霊樹って?」
「ああ、それがワシが行った事のある場所じゃないんだ。だから明日の朝から、馬で移動だ」
「え? 長老が行った事のない場所が大森林にあるんですか?」
ミーレが驚いて聞いている。
「当たり前だ。この広い大森林だぞ。ワシが行った事のない場所の方が多いぞ」
「長老なら、そんな場所ないと思ってたわ」
カエデまでお茶を出しながら驚いている。長老はそう見える。なんでも物知りの長老だし、何処へでも行っている様な印象を受ける。
「さすがに大森林はな、ベース周辺しか行かないぞ」
「そりゃそうだよ。用がないもんね」
「そうだな」
「僕はこの辺りなら行った事がない場所なんてないよ」
「そうか?」
「うん、見回っているからね」
何気に真面目なソニルだった。
長老のワールドマップの情報と、ソニルの土地勘をすり合わせてみた。
「あれ? その辺りって確か薬草が自生している場所じゃないかな?」
「薬草か?」
「そう。たしか大きな樹はなかったと思うよ。ね、コニー」
「そうですね。その周辺だけ樹がなくて薬草が生えていますね。ああ、だからですか? 長老」
「多分そうだろうな」
「え? なになに~?」
「だからソニル様、精霊樹があるから普通の樹が生えなかったんじゃないですか?」
「ああ、なるほど~」
ベースの管理者であるソニルよりコニーの方がしっかりしている。
それは以前、一緒の時にも思った事だが。
ソニルの話によると、まるで薬草が自生している場所を丸く囲む様に樹が生えているらしい。
守っているかの様に見えるのだそうだ。
「あそこなら、なんだか納得だよ」
「はい、確かに」
「そんな場所があるんだな」
「僕達もね、薬草が自生しているからあまり踏み込まないようにしていたんだ。必要な時に摘む程度でさ」
だが、そこだけ陽が射して幻想的に見えるのだそうだ。
「そりゃ、ソニル様。当たり前です。そこだけ樹がないのだから陽も射しますよ」
「コニーったら現実的だね。もっとこうさぁ、夢ってもんがないのかなぁ」
「夢も何も本当の事ですから」
「アハハハ、そりゃそうだ」
明日は朝からそこを目指そうと話していた。
ハルがモゾモゾッと動いた。
「お、そろそろ起きるか?」
「ねえ見て、長老。ハルちゃんがむにゃむにゃして、赤ちゃんみたいなお口をしているよ」
「ああ、ハルはいつも寝入る時もあんな口をするぞ」
「可愛いね~」
と、また長老とソニルが二人で、ハルが眠っているベッド近くに移動している。
だから、ハルが目覚めたら引かれるぞ。
それから少ししてハルは目を覚ました。
目の前に、長老とソニルの顔があるのでキョトンとしている。
「なんら?」
「おはよう、ハルちゃん」
「ハル、良く寝たな」
「ん、ふわぁ~」
ああ、可愛い! と、二人の顔がにやけている。
「かえれ、ちゅぎはりゅしかのおやちゅら」
「はいな、ハルちゃん」
「あら、長老達は何しているの?」
と、シュシュに聞かれている。
シュシュも一緒に寝ていたからだ。いつも自分の胸のところにハルを抱えるようにして眠るシュシュ。大きなベッドをシュシュがほとんど占領している。
「あんまりそんな事をしていると、嫌がられるわよぅ」
と、シュシュにまで言われてしまった。
それでも、やめられない長老。可愛くて仕方がない。
「しゅしゅ、いくじょ」
「ええ、ハルちゃん」
「あれ? ヒポポは一緒に行かないの?」
「いくじょ、こはりゅとはいってんら」
え? どこに? みたいな。
「ソニル様、ハルの亜空間ですよ」
「ああ、そっか。そうなんだ」
ヨイショとシュシュに乗るハル。
「今日のおやちゅは何かな~」
「なんやろな~」
もうハルはカエデと一緒に部屋を出て行こうとしている。
まだ目が開ききれていないのか、ポヤンとシュシュに乗っているハル。
「ハルちゃん、まだ眠いの?」
「ん~、しょんなことねーじょ」
「そう?」
「じーちゃん」
「ん? どうした?」
「今日はもう行かねーのか?」
「ああ、明日の朝から行こう。馬でだ」
「しょっか」
「また見てみなさい」
「ん、ありぇらな。わーりゅろまっぷらな」
「そうだ」
シュシュに乗っているのだよ。今あのポーズで目を瞑ったら駄目だぞ。
「ハルちゃん、後でやで。今はやめときや」
「え、かえれ。しょう?」
「うん、そうやな」
カエデはよく分かっている。




