203ー大サービス
ハルさん、お歌よりも先にヒポポに聞いてもらわなければならない。
「ひぽ、きいてくりぇ」
「ぶも」
ワラワラと集まって来た精霊獣に囲まれて、大きな体のヒポポが頭を上下に動かしながら聞いている。
ついでに短い尻尾も、フリフリと揺れている。
「かぁわいいぃ~! なんて可愛いんだよぉ〜!」
ソニルがいると賑やかだ。カエデとシュシュが仲間になって、かなり賑やかになったのだが。
賑やかに華やかになる。華やかになるのは、ソニルの見た目の所為だ。
セミショートのブルーゴールドの髪が、動く度にフワフワと揺れている。とってもキュートだ。
まさかエルフ族で最強の戦士だとは思えない。
「ソニルさんって強いのにな」
「本当よね~」
カエデとシュシュだ。自分達より賑やかな者がいると、逆に大人しくなってしまうらしい。
で、ヒポポさん。どうだったのだろう?
「ぶもぶも」
「しょっか! なりゃ、ちゅぎかもな!」
「ぶも」
お、なんだか良い感触ではないか?
「ハル、どうだって?」
「じーちゃん、あと一個まわってかりゃ帰りゅっていってたって」
「おお、そうか。ならその『あと一個』がどこかだな」
「あー、しょっか」
そうなる。ハルが思っているこの近くにあるらしい精霊樹、そこが『あと一個』の精霊樹なら良いのだが。
このヘーネの大森林には、どうやら精霊樹は遺跡の中にあるらしい。長老のワールドマップで見た限りではそう予測される。
だが、この近くに遺跡ではない場所にも一箇所精霊樹の反応がある。
それがどうも異質に思える。だからハルは、そう思ったのだろう。それに、もう一個と言われると、一番近い場所だとも思ってしまう。
そこに何か手掛かりでもあると良いのだが。
「で、これでお終いなの? 他には何もしないの?」
「ソニル様、ちょっと煩いですよ」
「コニーったら酷い!」
他国では、この後お決まりの様にヒールとピュリフィケーションをしていた。新しい精霊樹の実を植えたりもしていた。
だが、ヘーネの大森林にある精霊樹はどれも元気だ。だからその必要はない。
「ええー。見たかったなー。その精霊樹の実っての? 絶対に見たかったよー!」
「見るなのれすか?」
「え!? コハルちゃん、いいの?」
「はいなのれす」
コハルさん、本当にエルフ族には寛大なのだね。
それだけ、信頼しているという事なのだろう。
「こはりゅ、いいのか?」
「いいなのれす。大サービスなのれす」
そういってどこからか精霊樹の実を採り出す。クリスタルの様にみえるりんごの形をした不思議な実だ。
その実がコハルの手を離れ、フワリフワリと地面へと吸い込まれていく。
「なんて綺麗なんだ!」
「一つだけにしておくなのれす」
「コハル、それがいい」
「はいなのれす。長老、頼むなのれす」
「よし、任せなさい」
「長老、抑えてな」
「リヒト、当然だ。ここにはそう必要もないだろう」
とか言いながら、きっとやり過ぎるんだろう? それは、振りだろう?
長老が魔法杖を取り出した。やる気満々だ。それを、掲げて静かに詠唱する。
「ピュリフィケーション……ヒール」
精霊樹だけでなく、辺り一面にキラキラと光りながら白い光が降りていく。
光が消えると、地面に吸い込まれていった精霊樹の実が、そこからポコンと芽が出てグングンと伸びていき若木になり、見る見るうちに成木となった。元気にキラキラと光っている。
その上、精霊樹がより輝き出した。そして白く光りながら精霊樹の枝が伸び、葉っぱが出てその先に芽が出て花が咲き、みるみるうちに精霊樹の実が生った。
ツヴェルカーン王国でも、同じ事があった。
「長老、だからさ。毎回言うけどやり過ぎだ」
「ワハハハ! まあ、良いだろう」
それを見ていたソニルとコニー。ポカンと口を開けて見ていた。言葉もないらしい。
「なに!? 何なの!? 長老って規格外もいいとこじゃない!」
「ソニル、ワシは長老だからな」
意味が分からない。長老の側で何故かハルが自慢気にお腹を……ではなく、胸を張っている。
「ハル、何で自慢気なんだよ」
「らって、りひと。おりぇのじーちゃんら」
「アハハハ、そうだ。ワシはハルの爺ちゃんだ」
この曾祖父と曾孫のコンビはどうなんだ? うえぇ~い! と、ハイタッチをしたりしている。
「凄いや。長老って本当に敵わないよ」
「エルフ族一ですからね」
「そうだね」
なのに、あのキャラだ。ソニルだってエルフ族で一番強い。なのにあのキャラだ。
エルフ族はみんなそうなのか?
イメージを壊すのが趣味なのか?
そしてお決まりの様にハルちゃんが歌い出す。
「とぉんぼぉのめぇがぁねぇは みじゅいりょめぇがぁねぇ~」
お手々を広げてパタパタ動かしながら、ついでにお尻もヒョコヒョコと振っている。カエデも一緒になってフリフリしている。長い尻尾が、ユラユラと揺れている。
カエデは明かるくなった。最初の頃は、ハルに一緒にしゅるじょと言われても、えぇー! と、戸惑っていたのに。最近では、呼ばれる前に参加している。
ついでにコハルまでフヨフヨと浮きながら尻尾をフリフリしている。
ちびっ子コンビは可愛らしい。
「ええー! 可愛いぃ~! 僕もー!」
と、大の大人のソニルまで参加だ。
それはもう、良いだろう。
遅くなりました!
すっかり投稿した気になってました!
申し訳ないです!(><)




