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201/220

201ー聖獣の違い

「聖獣だって珍しいですよ」

「ロニー、なんだか慰められている気分になっちゃうわ」

「いえ、シュシュは綺麗でカッコいいですよ」

「でしょう? やだ、ロニーは分かっているじゃない〜」


 精霊獣が見えるぞ騒動は、ハル達の食事中ずっと続いた。裏技を披露したのはコハルさんなのに、我関せずと食べている。

 今日はこのベースに泊まるらしい。


 その日、ベースにいるエルフ達は、遺跡まで態々精霊樹を見に行っていたらしい。

 ベースを空ける訳にはいかない。だから、順番に数人ずつ交代でだ。

 見えるうちに、噂の精霊樹も見ておきたいと思うのは自然な事だ。

 精霊樹を見て戻って来た者の中には、号泣していた者もいたとかいないとか。


 その頃ハルは。


「もっしもっしかぁめよ〜、かぁめしゃ〜んよぉ〜♪」


 歌っていた。マッパでだ。

 プリップリのお尻をフリフリしながら、片手にタオルを持って。

 お昼ご飯を食べて、しっかりお昼寝もして、オヤツも食べてからのお風呂だ。

 

「アハハハ! なんだ、可愛すぎるだろう!」

「もう、いつもの事だ。風呂に入ったら必ずあれだよ」

「そうなのか!? なんだ、リヒト。役得だな!」


 そんなものなのか?


「ぶぶぶへッ!」


 これはシュシュだ。またイオスとルシカにお湯を顔面から掛けられている。


「もう、嫌だっていってるのにぃ!」

「けろ、しゅしゅ。きもちいーらろ?」

「そりゃそうなんだけどぉ! なんだけどぉ!」


 ――バッシャーン!


「ぶぶぶぶーッ!」


 なんだ、気持ち良いのか。なら良いじゃないか。動物虐待になるかも知れないと冷ッとしたぞ。

 ハルは椅子にちょこんと座り、頭がアワアワになっている。リヒトがワッシワッシと洗っている。

 やっぱりお手々は揃えてお膝の上だ。その丸いフォルムは本当に可愛らしい。


「ハル、まん丸だな」

「しありゅしゃん、しゃーねーんら」

「そうか?」

「しょうら。ようじたいけいら」

「アハハハ、そうかよ」


 その割には、最近お腹がポッコリしていないか?


「ぐふふッ」

「しありゅしゃん、わらうんじゃねー」

「おう、すまんすまん」


 だって、可愛らしいんだもの仕方がない。


「ハル、流すぞ」

「おー」


 ハルがギュッと目を瞑り、お顔を手で覆う。そのエクボのできるお手々も可愛いぞ。


「長老、良い筋肉してるな」

「そうか?」

「おう、腹なんてバッキバキじゃねーか」

「いつもハルを抱っこしているからな」

「なんだよそれ! アハハハ」


 長老の筋トレはハルなのか? ハルがダンベル替わりなのか?


「ハルは油断すると直ぐに勝手に飛び降りるからな。いつも緊張しているんだ」

「え、そうなのか?」

「ああ。ハルはやんちゃだからな」

「あんなに可愛いのにな」

「可愛いな。可愛いどころではないぞ」

「アハハハ! 長老もハルには勝てないか!」

「そりゃ、シアル。可愛い曾孫だ」

「そうだな。長老、良かったな」

「おう」


 みんな長老の娘の事を知っているんだ。だから、ハルの事を聞いて驚いた。

 孫を通り越して、曾孫だと!? と、みんな驚いた。

 何をどうやったら、曾孫が出てくるんだと。


「じーちゃん、しぇなかありゃうじょ」

「おう、ハル」


 長老の目尻が下がっている。

 ハルの小さな手で、長老の背中を洗う。ゴシゴシと身体全部を使って洗う。

 その後ろ姿のまた可愛いこと。


「ハル! 俺も洗ってくれ!」

「いーじょー」


 シアルが順番待ちだ。

 みんなで湯舟に入る。引き締まった身体のリヒトに、丸っこいハルがチョコンと抱っこされている。こうしてみると、みんなスマートだ。イオスだって、バキバキではないもののしっかりと筋肉がついている。ルシカが一番、細身だろうか。

 そんなメンバーの中、プヨプヨとした足をプランプランさせながら歌うハル。


「もっしもっしかぁめよ〜、かぁめしゃ〜んよぉ〜♪」

「ハル、その歌好きだな」

「かめしゃんのおうたら。帰ったりゃ、またふぃーれんかとのりゅんら」

「ハル、あれは聖獣様だぞ」

「らって、じーちゃん。しゅしゅもしぇいじゅうら」

「まあ、そうなんだがな。シュシュとは少し違うぞ」

「じーちゃん、しょっか?」

「ああ。水神様のお遣いだからな」

「えりゃいんか?」

「まあ、そうなるな」

「あら、あたしだって聖獣なのよ」

「シュシュはまだピヨピヨなのだろう?」

「やだ! 長老までそんな事言わないでよ!」

「アハハハ! そうか、シュシュはピヨピヨなのか!」

「だぁかぁらぁ、それを言わないでって」


 賑やかで平和な一時だ。シュシュは洗われるのは苦手らしいが、湯舟に入るのは好きらしい。

 しっかりお首まで入っている。

 大きなシュシュと、リヒト達が入っても余裕の大きさがある湯舟。


「ろのべーしゅにも、ふりょはあんのか?」

「おう、あるぞ」

「いいな!」

「だろう?」


 エルフ族は風呂好きなのか? そんな事は聞いた事がないぞ。

 

「ちゅぎは、夕ご飯らな」

「ハル、おやつ食べたとこだろう?」

「らって、りひと。順番ら」

「なんの順番だよ」


 ハルちゃんは、食べる事が中心のスケジュールらしい。

 だからそんなお腹になるんだよ。

 明日は朝から次のベースへと向かう。

 ソニルが管理者をしている南東のベースだ。

 その近くの遺跡と、もう一箇所精霊樹の反応があるらしい。

 そこに精霊女王がいれば一番良いのだが、そうでなくても何か手掛かりが欲しいものだ。


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