20ー畑にいっぱい
「ハルちゃん、何があるんや? 自分には全然分かれへんわ」
「光って眩しいぞ」
カエデはやはり見えていない。リヒトは強く光って見えるらしい。
ハルが指差す方向。野菜畑と麦畑の間の小道に等間隔に針葉樹が植えてある。そこに、同じ様に何本もの精霊樹が生えていた。しかもどれも元気だ。ハルが言うようにピカピカしている。
針葉樹よりも精霊樹の方が多い位だ。
当然、それだけの数の精霊獣もいる筈だ。
「ここではワシが1番古いんじゃ。あっちは皆同じ系統の精霊獣じゃのぉ」
メタ爺が話すとリヒトが聞いている。
「とかげなのはメタ爺だけなのか?」
「誰がとかげじゃ。これでも龍じゃ」
「えぇ~ッ!?」
龍だって。尻尾に葉っぱが生えている龍なんて、あら可愛い。リヒトが驚くのも無理はない。何処からどうみても龍には見えない。可愛らしい大きな瞳のとかげさんだ。
ハルがシュシュに乗って、並んで生えている精霊樹の方へと走って行く。その傍らを飛ぶようにヒポポが行く。え、飛ぶ?
あのカバさん、飛んでいるぞ。いや、浮いていると言う方が近いか? とにかく地上から数十センチほど浮いて移動している。あの背中にある小さな翼でよく飛んだものだ。走った方が早くないか? 翼を一生懸命動かしているが、6本の脚も動いている。
「ああもう、シュシュまで走って行っちゃったわ」
「ほら、ミーレ。追いかけろよ」
「イオスが行きなさいよ」
「ミーレ、お前なぁ……」
「だってシュシュは早いじゃない。虎なのよ」
シュシュの後を少し遅れてカエデが走っている。
「カエデも早いわね。流石ネコちゃんだわ。尻尾が可愛い」
「ハハハハ、それよりヒポポだろ」
「飛んでいるわね」
「ああ、飛んでるな」
呑気なミーレとイオスだ。ちょっと出番が少ないね。
精霊樹の生えている場所に到着したハルちゃん。
「ぶもぉッ」
またヒポポが一声鳴いた。
すると、精霊樹から一斉に何かが飛び立った。
「おぉー、きれいら」
「ほんと、綺麗だわ」
「え? 何なん? 教えてや。自分全然見えへんねんて」
「カエデ、精霊樹から一斉に小さな鳥の精霊獣が飛び立ったのよ。しかも色とりどりよ。とっても綺麗だわ」
「シュシュ、そうなん?」
シュシュがカエデに説明した通りだ。ヒポポが一声鳴くと色とりどりの精霊獣が一斉に飛び立ったんだ。
「おばばしゃまんとこの精霊獣と一緒なんか?」
「ぶも」
「しょっか、仲間なんら」
「ぶもも」
「地域の精霊樹や精霊獣はみな繋がっているなのれす」
「しょっか」
おばば様の家の裏にあった精霊樹の精霊獣が、小さな鳥で鮮やかなコバルトブルーの体色だった。ここでは、ブルーだけではない。ピンクやオレンジ、グリーンにイエロー。まるで7色いるかの様に色んな色の鳥さんだった。
その鳥さん達がみなハルの直ぐ上を飛び回る。歓迎してくれているのだろう。
チチチチと鳴きながら、小さな翼をパタパタと動かして飛んでいる。
おまけに精霊まで寄ってきた。
ああ、またハルの周りが精霊達で光って見える。
――ハル~
――会いたかったの~
――来たの~
「ぶぶへッ、みんにゃ前がみえねー」
ハルが精霊達に囲まれて、またもや棒立ちだ。身動きできないでいる。時々ハルの顔面にアタックしてくる精霊もいて、ハルが吹き出している。
「ぶもも」
「集まりすぎなのれす」
「ぶもッ」
――わかったなの~
――ハル~、今度遊ぼう~
「おう、ありがちょな。みんな元気らな」
――げんきぃ~
――げんき、げんきぃ~
本当に元気そうだ。小さな精霊より精霊獣のヒポポの方が偉いのか?
――ひぽぽ~
――ひさしぶりなの~
お、知っているんだな。
――おばばさま元気~?
「ぶもも」
可愛らしい。大きな体に小さな翼があるカバさんに、小さな精霊達が群がっている。メルヘンだ。心なしかヒポポも笑顔の様に見えてくる。
「ハル、ヒポポ、ここの精霊樹は元気か?」
やっと、長老達がやって来た。おや、メタ爺もやはり飛べるのだな。長老の肩に止まっている。
尻尾の葉っぱをフリフリしながら、背中にある翼の葉っぱもプルプルと動かしている。
「ぶもッ」
「元気らって。ここは精霊も多いし精霊樹も多い。いいとこら」
「なあハルちゃん。自分気付いた事があるんやけどな」
と、カエデが言い出した。
「自分は精霊が見えへん、精霊樹も見えへん。なのに何でヒポポとメタ爺は見えるんやろ?」
「しりゃねー」
「ぶもも」
「え、何て言うてんや?」
「ヒポポは一緒に行くから見える様にしているなのれす。メタ爺は古いからそれだけの力があるなのれす」
「へえ〜、凄いんやな」
「かえれ、鳥しゃんは見えねーのか?」
「うん。おばば様とこの鳥さんは見えたんやけどな、ここは見えへんわ」
「まだ若いなのれす」
どうやら精霊樹に依るらしい。
「自分も見たいわぁ」
残念ながら1番魔力量が少ないカエデには見えないらしい。
「カエデ、私も見えないわよ。光が集まっている様にしか見えないわ」
「ミーレ、マジか?」
「イオスは見えるの?」
「いや、小さな光が沢山飛んでいる様にしか見えねーぞ」
「そうですね、私もです」
「俺は羽根のある生き物が光りながら飛んでいる様に見えるぞ」
「ワシは精霊はリヒトと同じだが精霊樹や精霊獣は見えるぞ」
どうやら、魔力量で見え方が違うらしい。この見え方から考えると、長老がやはり1番多いらしい。次にリヒトか。訓練が嫌いなミーレ姉さん、頑張ろう。




