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196ー南西の遺跡

 南西のベースを出て近くにある遺跡へと向かう。

 ユニコーンが力強く地面を蹴って走る。リヒトのユニコーンの前には、ハルがチョコンと乗っている。ぷよっぷよの足をぷらんぷらんさせながら。


「ハル、どうした?」

「しぇいれいじょうおー、ろこいったんらろ?」

「本当だな。てっきり、アンスティノス大公国にいると思っていたけどな」

「ほんちょらな。けろ、ちょっちなぁ~」

「ん? どうした?」

「わんぱたらな」


 ハル、探すのにワンパターンも何もない。もしかして、飽きてきたか?

 ハルは遺跡調査の時も、後半飽きていた。

 同じことの繰り返しが、苦手なのかも知れない。


「アハハハ、飽きたか?」

「じーちゃん、ちげー」

「そうか?」

「しょうら。けろ、わんぱたらな。もうちょっちな~」


 何が言いたいのだろう?


「おもんくねーじょ」


 なんだ、結局そこなのか? それは飽きているのだろう?


「早くたしゅけないとら」

「だから、こうして探しているんだろう?」

「りひと、らからな。もっとこう、一気にらな」

「ハル、精霊女王を直接サーチするのは無理だぞ」


 長老がとても大切な事を言っているぞ。


「じーちゃん、しょうなのか?」

「そうだ。精霊王くらいでないと精霊女王の居場所を察知するのは無理だ。ワシ等の能力ではできないんだ」

「しょうなのか」


 だから精霊樹を探していたんだ。それに、精霊樹のところに行くと言って、精霊女王は行方不明になった。精霊樹が唯一の手掛かりなんだ。

 ハルの気持ちも分からなくはない。


「じーちゃん、しぇいれいじゅにいなかったら、ろーしゅんら?」

「そうだな。その可能性もある。だから、精霊獣に行方を聞くしかないんだ」

「なるほろ~」


 ハル、納得したのかな?

 しかし、ハルの言う事も一理ある。もしも、精霊樹のところにいなかったらどうするのだ?

 別の場所に留まっているという可能性はないのか?


「精霊女王は普通の樹に留まる事はない。と言うか、留まれないんだ」

「ろーしてら?」


 精霊女王は超自然体だ。現実世界の物である普通の樹に留まる事はできないらしい。

 精霊樹は普通の樹とは違う。精霊獣が産まれる超自然体の物だ。精霊女王の子供と言っても良い。

 今はコハルの裏技で、皆普通に精霊樹や精霊獣を見る事ができているが、本来ならエルフ族でも見る事ができない物なのだ。

 それを忘れてはいけない。


「むじゅかしいな」

「アハハハ、地道に探すしかないな」

「しゃーねー」


 南西のベースに来るまでに、ちゅどーん! して、少し発散したのではなかったのか?

 刺激の欲しいお年頃なのだろうか。

 そんな話をしながらユニコーンを走らせ、遺跡に到着した。


「さあ、ハル。精霊樹を探そう」

「りひと、しょこら」


 ハルが人差し指で遺跡の中を指している。ぷにっぷにの手の甲には、精霊王から授かった印が光って反応している。


「ん? なんだって?」

「このいしぇきの、しぇいれいじゅは、しょこにありゅじょ」

「あんだって?」


 またリヒトが、どこかのおじさんの様になっている。時々ハルの言っている事が分からなくなるらしい。


「ハル、そこだな」

「しょうらな」


 長老はもう分かっている。遺跡の中の一点をじっと見ている。

 太古の昔に作られたというエルフの遺跡。ハルの前世でいうと古代ローマの遺跡の様だ。建物全部が残っている訳ではない。

 柱や土台は残っているものの、壁や天井はほとんど風化してしまっている。

 ヘーネの大森林の大自然の力には抗えないのだろう。

 だが、ここでもフィーリス殿下の天才的な能力が発揮されている。

 なんとかこれ以上風化させないで、残せないものかとフィーリス殿下が研究を重ねた。

 その結果、この遺跡全体にそれ用のシールドが施されてある。

 そんなシールドを展開できるのは、ここにいる長老くらいだ。

 フィーリス殿下が原理を考案し、長老が実際にシールドを張る。

 そうして、実現化できた特殊なシールドだ。エルフだけでなく、魔物以外は誰でも遺跡に入る事ができる。多種族の者も、時折遺跡に入っている。

 前回の遺跡調査の切っ掛けもそうだったが、エルフの遺跡近辺には鉱石や珍しい薬草などが採取できる。それを採取しに来た者達の、セーフティーゾーンになっているのだ。

 魔物が侵入できないからだ。

 このヘーネの大森林で、魔物が出没しない場所なんて皆無だ。有り得ない。

 その上、とんでもなく強い。リヒト達ベースのメンバーだけでなく、エルフ族はいとも簡単に討伐している。ハルだって、ちゅどーん! 一発で倒していたりする。だが、他種族はそうはいかない。

 そんな事ができるのは、エルフ族かドラゴン族くらいのものだ。

 ドラゴン族が本気を出すと、国一つが無くなってしまうが。


「長老、もしかしてあの遺跡の中央で光っている樹か?」

「そうだ。よく倒されなかったものだ」

「ど真ん中じゃねーか」


 リヒトが言うように、遺跡の中央にキラキラと輝きながら精霊樹が3本、三角に並んで生えていた。

 遺跡の中央、元は何だったのかは分からない。だがそこは、精霊樹を囲むように鉱石が低い壁の様に積まれていた。

 だから誰も入らなかったのだろう。


「これは、もしかしたら太古の昔はエルフ族には見えていたのかも知れないぞ」

「じーちゃん、しょうらな」

「ハル、分かるのか?」

「りひとはわかんねーのか?」


 ちびっ子のハルに言われてしまった。リヒトはヒーロー枠なのに、締まらない。かっちょいい時もあるのだが。


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