194ーヒポポ!?
無事に討伐を終えて、蜂蜜もたっぷり集めて帰って来た一行。
帰る途中で、討伐隊の総隊長ポースが、リヒトの父に……
「あんなに可愛いちびっ子なのに、とんでもなく強いな! それに聖獣が2頭ってか!」
と、ハルやコハル、シュシュの事を話していた事は、ハルちゃんは知らない。
鬼強いハルちゃんチームだ。
「りゅしか、りゅしか、はにーましゅたーどしょーしゅは、何の肉にかけりゅんら?」
もうお肉だと決めつけている。
「何にしましょうか?」
「うしゃぎ! うしゃぎがいいじょ!」
「はいはい。ハルは兎の肉が好きですね」
「らいしゅきら! 超うめー!」
もう昼食に気がいっているらしい。
さっきまで張り切って、ちゅどーん! していたのに。
「うさぎがいいなのれす!」
「美味しいわよねー」
コハルとシュシュも兎肉希望らしいぞ。
これはまた、ドラゴシオン王国にヒュージラビットを狩りに行くか?
「今度行ったら、もっと沢山狩ってきましょう」
「らな! しょりぇがいいじょ!」
まだリヒトのユニコーンに乗っているというのに、ハルがご機嫌に足をパタパタさせている。
「ハル、ジッとしてろよ」
「りひと、らいじょぶら!」
ハルちゃん、ちゅどーん! で、発散したらしい。普通の3歳児ではあり得ない。
「それにしても、楽勝だったな」
「そりゃそうだろう。元々、守備隊だけで討伐する予定だったんだ。フォークスとスティーグが無理矢理捩じ込んだのだろうよ」
「長老、父上と兄上にもう少し落ち着くように言ってくれよ」
「アハハハ、リヒト。あれでも落ち着いた方だろう。まだまだ動いていたいのだろうな」
だからと言って、討伐隊にまでお邪魔するのはどうなんだ?
もう現役は退いたというのに。
「ミエークに、リヒトの代理をしてもらっている事もあるからだろう」
「あー、それはなぁ」
リヒトも長い間、ベースを留守にしている。その間ずっとミエークが代理を務めてくれている。
「らから、おりぇらけれ行くっていったんら」
「ハル、それはあり得ないぞ」
「しょっか?」
「そうだよ」
リヒトとハルは、もう本当の兄弟の様だ。何百歳も年が離れているが。
「ハル、昼飯前に風呂行くか?」
「おー」
ユニコーンを馬番に預け、邸に入りながらリヒトがハルを誘った。
シュシュがさりげなく離れて行こうとしている。
「こら、シュシュ」
あ、イオスに見つかった。
「あたしはいいわよぅ!」
「シュシュも入りましょうね。あの乱闘の中を走っていたのですから」
「ええー! 平気よぅ!」
なんて、言いながら風呂へと引き摺られて行く。
「おかえりなさい。あら、お風呂なの?」
ミーレが出迎えてくれた。
「みーりぇ、しょうら。風呂いってくりゅじょ」
「カエデも入ってきなさい」
「うん、サッと入ってくるわ」
最初の頃は、自分は風呂なんて勿体無いなんて言っていたカエデ。もうそんな事を言う事もなくなった。
小さな事だが、どんどん意識が変わっているんだ。
さて、風呂に入ると。
「もっしもっしかぁめよ〜、かぁめしゃ〜んよぉ〜♪」
やっぱり歌ってしまうハルちゃん。今日はご機嫌だから、いつもよりノリノリでお尻をフリフリしている。
「アハハハ、ハル。尻が!」
リヒトがウケている。
片手にタオルを持って、プリップリのお尻をフリフリしているハル。
「ほら、ハル。座れ。流すぞ」
「おー」
そして、やはり。
――バッシャーン!
「ぶぶぶーッ!」
シュシュが思い切り、お湯を掛けられていた。
「ハルちゃーん! 助けてー!」
「気持ちいいじょー」
ハルはもう頭が泡だらけだ。ちょこんと座って、リヒトに洗われている。
何故か両手は揃えてお膝の上だ。
全体的に丸いフォルムが、可愛いやら可笑しいやら。
「ぶも」
ええ!? この鳴き声は!?
「な、ひぽも気持ちいいな」
「ぶも」
ガッシガッシと、長老がヒポポを洗っていた。精霊獣って風呂に入る必要があるのか?
気持ちいいらしいから、良しとしよう。
「よし、ハル。流すぞ」
「おー」
そこにリヒトの父と兄が入ってきた。
「なんだ、お前達早いな」
「もう入っていたのか……て、ええ!?」
ほら、スティーグがヒポポを見て驚いている。
「ぶも?」
「長老、精霊獣も風呂に入るのか?」
「ワハハハ、ワシも知らなかったぞ。ヒポポ、流すぞ」
「ぶも」
大人しく、バシャーンと大きな体にお湯を掛けられているヒポポ。カバさんは水が平気だからだろうか。
シュシュの様に嫌がったりはしない。気持ち良さそうだ。
「あたしはいいの! 本当にクリーンでいいのよ!」
シュシュは嫌らしい。いつも無駄な抵抗をしている。
――バシャーン!
「ぶへッ! お願いだから顔はやめて!」
「シュシュ、ほらまだ泡があるから」
――バッシャーン!
ブルブルブルと体を振って水気を飛ばすシュシュ。
「うわッ! 止めろって!」
そして、サッサと湯船に入って行く。湯船に入るのは好きらしい。
ヒポポものっしのっしと入っていく。
広い風呂だから良いが、普通なら虎のシュシュと大きなカバさんが一緒には入れないぞ。
ヒポポが背中の羽根をヒョコヒョコ動かしながら、気持ち良さそうにススイ〜と泳いでいる。
「アハハハ! 何をやっているんだ」
「じーちゃん、背中ながしゅじょ」
「おお、ハル。有難う」
「ハル、父様も頼む」
「おー、いいじょ」
賑やかな風呂だ。旅の間は皆が揃って風呂に入る事もなかった。ましてや、昼間から風呂なんて、そんな機会もなかった。
クリーンで済ます事が殆どだ。
こんな平和な日も良いだろう。




