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191ー討伐開始

 討伐隊が木の上で待機している。低木の陰に身を潜めている者達もいる。

 討伐隊が乗ってきた、ユニコーンやお馬さん達はみんな慣れているのか? ちゃんと躾けられているのか? 少し離れた場所で、お利口さんにも大人しく待っている。


「じーちゃん、ありぇか?」


 ハルも一応小さな声で聞いている。長老に抱っこされて、木の上にいた。

 他のエルフ達は皆既に弓を構えている。総隊長の合図待ちだ。


「ハル、大人しく見ていなさい」

「分かっちゃじょ」


 コハルもハルの肩に乗っている。今日は最初からコハルが出たままだ。結構やる気なのだろう。

 討伐隊が見据える先には、20頭対20頭のベアウルフの群れ。20頭といっても『おおよそ』だ。『約』だ。ざっと見た限りでは、それ以上の数がいるのは明白だ。

 どちらの群れも、10頭程のベアウルフが率いていて残りは大型のベア種だ。一つの群れには、きっと30頭近くはいる。いや、もっとか?

 討伐隊に全く気付く気配もなく、睨み合っている。一触即発だ。緊迫した空気が漂っている。

 この戦いを制した群れが、大好物のレッドベアビーの蜂蜜にありつけると言う事だ。

 たかが、蜂蜜。だがベア種にとっては、されど蜂蜜。

 なにしろ、大好物なのだ。何をおいても、蜂蜜。とにかく蜂蜜。その中でも、レッドベアビーの蜂蜜は珍しい上に超美味。これは何としても手に入れたい。食べたい。ベロリンと舐めたい。

 そんな欲望が渦巻くベア種の群れを見つめるエルフ達討伐隊。

 守備隊20名プラス、総隊長、それにリヒト達が。長老やハル以外はもう弓を構えている。

 カエデまで弓に魔法の矢を番えて、イオスの隣で構えている。

 以前は、数本の魔法の矢を出すのが精一杯だったカエデも成長している。流石にエルフには劣るものの、今ではしっかりとした矢を番え戦力になるつもりだ。

 討伐隊の皆が、総隊長の合図を待っている。総隊長のポースは両方の群れが動き出すのを待っているのだろう。相打ちになってくれれば、手間が省ける。

 それを見定めているのだろう。

 ずっとエルフに見られているとも気付かずに、睨み合っているベア種の群れ。

 とうとう先頭にいるベアウルフが動き出した。

 両手を大きく広げて挙げ、ガオーッと威嚇しながら前進して行く。それを合図に両方の群れが入り乱れ、組み合い戦い出した。

 同じベア種でも、ベアウルフに付き従っている大型のベア種がベアウルフに叩き倒されている。力の差が明白だ。

 腕を大きく回し、薙ぎ払うベアウルフ。すると、大型のベア種が吹き飛んでいく。

 その時だ。先頭で様子を見ていた総隊長の腕が挙がった。

 エルフ達の中にも、緊張した空気が漂い出す。

 その総隊長の腕が勢いよく振り下ろされると同時に、一斉に魔法の矢を放つ。

 グリーン色に輝く魔法の矢が、入り乱れるベア種の群れへと次から次へと命中して行く。


「やっぱリヒト様凄いな」

「あんなに複数の矢を同時に出せるのはリヒト様くらいだ。しかも全部の矢を命中させているだろう」

「そうなんや! だって何本同時に出してんの? あれ、4本はあるやんな」

「おう、そうだな。カエデ、飛ばすなよ。自分の魔力量を考えて射るんだぞ。魔力切れになるぞ」

「分かってるって!」


 イオスとカエデだ。余裕ではないか?


「じーちゃん、おりぇもやりてーじょ」

「ハルは弓がないだろう?」

「なくても平気ら」

「アハハハ、そうだったな」

「おう! やりゅじょ!」


 ハルが構える。弓を持っていないのに、弓を持つ様に構えると緑色の魔力でできた弓が現れた。

 そこに、緑色に輝く矢を番えシュンッと放った。

 以前ベアウルフの群れを討伐した時にも、ハルは魔法の弓矢を使っていた。だが、今回はそれがバージョンアップしていた。

 リヒトまではいかないが、2本同時に矢を出して射ったんだ。


「ハル、2本か!?」

「おー、1本じゅつらと、めんろくしぇーかりゃな」

「アハハハ、面倒なのか」


 相変わらず、規格外のハル。長老は高みの見物だ。ずっとハルを抱っこしたまま、見ている。


「ハル、魔力を込め過ぎだ」

「え? しょっか?」

「ああ、そこまで込めなくてもいいだろうよ」

「しょっか、よし!」


 またハルが魔法の弓に矢を番えて射る。シュンッと勢いよく飛んで行き、ベア種に命中した。


「ほんちょらな。これくりゃいれいいのか」

「ハル、いちいち弓を出さなくても風属性魔法があるだろう? 忘れたか?」

「あ、しょうらった。けろ、みんな弓らから、おりぇもやりてー」

「そうか、アハハハ」


 まあ、好きにすれば良い。ずっと魔法で弓を保てるのも、ハルの魔力量が膨大だからだ。

 でも、きっとハルは『ちゅどーん! やりてー』とか思っているのだろう。

 昨日からずっと『ちゅどーん!』と言っていたからな。


「じーちゃん、まらか?」

「ん? なにがだ?」

「まら出たりゃ、らめか?」

「まだだな。もっと数を減らすのだろう」

「減りしゅぎりゅと、ちゅどーんできねーじょ」

「アハハハ、ちゅどーんか」

「おう。今日はやりゅじょ」

「やるなのれす」


 コハルは小さな体を曲げたりしている。それは、準備運動なのか? フッサフサの尻尾が可愛いではないか。

 コハルの飛び蹴りもなかなか威力が高い。頭を狙って蹴りを入れるから脳を揺さぶられる。そこにハルが『ちゅどーん』すれば、一発で大抵の魔物は倒れる。

 恐るべしちびっ子コンビだ。


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