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19ー城の裏側

「メタ爺、精霊樹まで案内してくれんかの?」

「なんじゃ、じーさんに爺と言われとうないわ」

「アハハハ、確かにな」


 長老も話が進まない。ここはルシカの出番だろう。


「メタ爺様、私達は精霊樹を探しているのです。宜しければ、案内して頂けませんか?」


 そうだよ、それだよ。やっぱルシカは頼りになる。


「ついて来るとよいぞ」


 ノッシノッシとメタ爺じゃなくヒポポが進む。こうして見ていると、城にいる者でも精霊獣が見えている者とそうでない者もいるのがよく分かる。

 ハル達一行が歩いて行くから皆避けてくれているが、メタ爺だけだとどうだろう?


「見えとらんから蹴とばす奴が時々いるんじゃ。昔は皆見えておったのにのぉ。エルフもそうじゃ。今は見えん奴も多くなったのぉ」


 あらら、蹴とばされていたらしい。可哀そうに。

 メタ爺の話しぶりだと、かなり昔から城にいる様だ。精霊が見えていた時代のエルフも知っているのだろう。一体いつからなんだ?


「精霊樹はこの世界の始まりである世界樹と一緒に生まれたなのれす。その精霊樹と一緒に精霊獣は産まれるなのれす」


 おや、コハルが亜空間から出てきた。自分から出てくるなんて珍しい。いきなり、世界の始まりの話をし出したぞ。


「おや、お前さんは聖獣か?」

「そうなのれす。創造神の神使なのれす」

「そりゃあ、ご苦労なこった」

「はいなのれす」


 コハルがメタ爺にペコリとお辞儀をした。珍しい。


「1番古いかも知れない精霊獣なのれす」

「おー」

「コハル先輩、あたしの時と態度が全然違うわ」

「当たり前なのれす。シュシュはピヨピヨなのれす」

「ふぉっふぉっふぉっ、ピヨピヨか」


 城の中を行き、裏庭へと出た。城の表側は庭園の様になっていたり池があったりするのだが、裏庭には広大な畑と果樹園があった。

 ハルが飲んでいたさくらんぼジュースもこの果樹園で採れたさくらんぼを搾ったものだろう。あんずや桃も実の重さで枝が撓む程生っている。

 もう直ぐ収穫なのだろう野菜も沢山ある。トマトにきゅうり、ナスにとうもろこし。豊かな畑だ。

 その手前を入って直ぐに精霊樹はあった。やはり、リヒト達には淡く光っている様にしか見えていない様だが、ハルの手の甲の印は光っている。


「じーちゃん、3本目ら」

「この精霊樹はおばば様の家にあった精霊樹より古いのか?」

「しょうら」

「この精霊樹は少し霞んで見えるぞ」

「じーちゃん、しょう? なんれら?」

「老人なのれす」

「精霊樹にも歳が関係あるのか?」

「長い年月、瘴気を浄化しているので疲れているなのれす」

「こはりゅ、ろうしたらいいんら?」

「ピュリフィケーションと、ヒールなのれす」


 精霊樹に浄化と回復。コハルの言う事だから間違いはないのだろう。


「ぴゅりふぃけーしょん、ひーりゅ」


 白く輝く光が精霊樹を包み込み、ゆっくりと消えていった。


「おお、お前さん。良い魔力をしとるな。ワシにもヒールしてくれんかの?」

「いいじょ、ひーりゅ」


 とかげのメタ爺の体も光が包み込む。


「おお、生き返るのぉ~」

「ハル、精霊樹がハッキリと見える様になったぞ」

「え、長老スゲーな。俺はまだ光って見えるだけだぞ」

「自分なんかなんにも見えへんわ」


 おやおや、魔力量によって精霊樹の見え方が違うらしい。1番魔力量が少ないのは、猫獣人のカエデだ。


「なあなあ、シュシュは見えてんの?」

「何言ってんのよ。当たり前じゃない。あたしは聖獣なのよ」

「けど、ピヨピヨなんやろ?」

「煩いわね、コハル先輩に言われるのは仕方ないけど、カエデに言われたくないわよ」


 何処にいても、ネコ科の2人はかしましい。


「コハル、精霊樹が弱っていたらピュリフィケーションと、ヒールが良いのか?」

「そうなのれす」

「ワシも元気になるぞ」

「精霊獣にもか?」

「良いなのれす。精霊樹と精霊獣はいつも同じ状態なのれす」

「ほう、それで生み出す精霊樹を元気にすれば精霊獣も元気になると」

「そうなのれす」


 ハルはもう全然違う方向を見ている。広い畑の向こうには、一面黄金色に染まっている麦畑が広がっていた。

 広大な野菜畑に麦畑。この場所で国の殆どを賄っているらしい。働いている竜族の数も多い。


「じーちゃん、どりゃごしおんはいい国らな」

「ハル、どうしてそう思う?」

「果物や野菜に麦もたくしゃんあって元気ら。ピカピカら」

「そうだな……」


 ハルはそんなところを見ていたのか。と、ハルが走り出した。


「行くじょ!」

「ハルちゃん、何処に行くの!?」


 慌ててシュシュが追いかける。


「しゅしゅ、みえねーか?」

「え? なあに?」


 ハルが立ち止まり、シュシュの背に手をやり遠くを指さす。短い指だ。いや、そんな事はどうでもいい。

 ハルが指差した方をシュシュも見ている。


「ハルちゃん、スゴイわね」

「な、しゅげーな」

「みんな元気なのれす」

「こはりゅ、しょうらな。よかっちゃ」

「ハル、急に走り出してどうしたんだ?」

「りひと、見えねーか? あしょこ」


 また、短い指で前方を指さす。


「これはまた、素晴らしい」

「な、じーちゃん」

「ああ、本当に良い国だ」

「えりゅひゅーれも負けてりゃんねーじょ」

「本当だな」


 ハルちゃん、エルヒューレも言えなかったか?


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