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ちびっ子転生者は手に負えないッ!Returns 〜精霊女王がピンチらから聖獣と一緒にちゅどーん!しゅりゅ〜  作者: 撫羽
第3章 あんしゅてぃのしゅ大公国ら!

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183/220

183ーお昼寝

「じーちゃん、ろこにありゅんら?」

「近場から回ってみるか、リヒト」

「近場にあるのか?」


 長老が言うには、このエルヒューレ皇国にも精霊樹があるらしい。だがそれなら余計に、精霊王が分からない筈がないのではないか?


「そうか、なら遠い方から攻めるか?」

「長老、私もその方が良いと思うわ。まさか国の中にある精霊樹で、分からないなんて事はないでしょうし」


 と、研究者としてのリヒトの母の意見だ。


「もしかして、何かに阻害されているのかしら?」

「阻害か……考えられるな」


 精霊女王の存在は、精霊王がいつでも感知できる。なのに、行方が分からないとハルを頼って来た。

 精霊女王の存在を、何かが阻害しているのではないかとリヒトの母は考えた。


「そうでも考えないと、不自然だわ」


 精霊とは、この世界の始まりから世界を守る存在らしい。その精霊達の長である、精霊王と精霊女王。この二人はお互いの存在を感知する事ができる。

 それは、人知を超えたものだ。エルフ族にも理解の出来ない力なのだ。

 太古の昔は、エルフ族も精霊の存在を感じる事ができた。見る事もできたし、意志疎通も可能だった。

 それが、各国にある浄化の魔石を設置した頃に、瘴気の所為で感じる事ができなくなってしまった。

 今は、見る事さえもできない。

 ハルは、世界樹の加護を受けている。それは、世界樹の精霊、精霊王の加護と同意義だ。なので、ハルは精霊を見る事ができる。

 最近ではその影響か、長老も薄っすらと感じる事ができるらしい。

 本当に、長老の能力は底知れない。2000歳を超えているのに、まだ成長している。

 その血を継いでいる、ちびっ子ハルちゃん。大きくなるのが楽しみだ。

 今は少々、すっ惚けている時もあるのだけども。


「じーちゃん、ねみーじょ」

「今日はお昼寝がまだだったな」

「ねみー」


 ハルのパッチリとしたお目々が、だんだんと閉じてきている。体も少し揺れているぞぅ。


「アハハハ、寝てきなさい」

「ん、しゅしゅいくじょ」

「ええ、ハルちゃん」

「ハルちゃん、自分も一緒に行くで」

「私も行くわ。ハル、抱っこしましょう」

「うん、みーりぇ」


 ミーレに抱っこされ、すっかり寝る体勢になっている


「ええー、あたしが乗せてあげるのにぃー」

「シュシュ、ハルちゃんはもう眠たいから危ないやん」

「そう?」

「そうやで」


 そうそう、カエデの言う通りなのだよ。

 ハルちゃんはもう眠くて、シュシュの背中に乗っていられないだろう。

 すっかりミーレに寄り掛かっている。もう目もトロンとしている。

 リヒトの実家にあるハルの部屋。大きなフカフカのベッドでハルは眠る。

 シュシュがベッドの大半を占めている。その胸の辺りで、小さく丸くなってスヤスヤと眠るハル。

 ミーレとカエデが、部屋で何やらお片付けをしている。


「カエデもソファーでゆっくりしなさい」

「いいねん。自分も手伝うで」

「あら、いいわよ。カエデだってまだちびっ子なんだから」

「なんでやねん、ミーレ姐さん。自分はもう大きいっちゅうねん」


 ミーレがハルの洋服を片づけたりしている。

 旅の間、ハルの物は全部ミーレがマジックバッグに入れて持っている。それを片づけたり、入れ替えたり。お洗濯する物をまとめたり。


「いいから、少し休みなさい」

「ミーレ姐さん、ありがとう。なんかな、まだ1年経ってないのにこの家に帰ってきたらホッとするな」

「ふふふ、あらそう?」

「うん、帰って来たって思うわ」

「じゃあ、ベースは?」

「ベースはベースで落ち着くんや」

「ふふふ」


 カエデも馴染んでいると言う事だ。カエデが言う様に、まだ1年経っていない。

 それでも、カエデが安心できる場所になっているのなら良い事だ。


「自分の家が何個もあるみたいな感じやわ」

「あら、それは贅沢ね」

「な、ほんまやわ。有難い事やわ」


 カエデがソファーで横になっている。少し瞼が重そうだ。疲れたのだろう。カエデもまだ10歳なのだから。旅は刺激がいっぱいだ。

 ミーレがカエデにタオルケットを掛けてやっている。

 ミーレ、本当にもう子育てができるぞ。


「ミーレ、ハルはもう眠ったか?」

「長老、ぐっすりですよ」


 長老も部屋にやって来た。ベッドの側にしゃがみ込みハルの寝顔を見ている。


「可愛いのぉ」

「ふふふ。長老ったらそればっかり」

「いや、ミーレ。だって可愛いだろうよ」

「はい。ハルは可愛いですね」

「ああ、可愛い。眠っている時は特に3歳児になるな」

「そうですね。起きている時は突拍子もない事を仕出かしたりしますから」


 特に、戦闘になる時だ。いつも1番張り切っている。駄目だと言われていても、突っ込んで行く。

 しかも武器は無しだ。『ちゅどーん!』と、言いながら小さな体ごと突っ込んで行く。


「本当に、やんちゃ坊主だ」

「ふふふ、そうですね」


 長老が曾祖父の顔になっている。目尻が下がりきっている。

 指の細い少し骨ばった大きな手で、そっとハルの髪を撫で上げる。プクプクのほっぺに、ぽってりとしたピンク色の唇。絵筆で描いた様な長い睫毛が今は伏せられている。

 その目が開くと、長老と同じ虹彩にグリーンが入った瞳が現れる。今はぐっすりと眠っている。


「ハルはまだほんのり甘い匂いがするだろう。それだけちびっ子なんだ。ワシが守らないとな」

「長老。みんなも同じ思いですよ」

「ああ。分かっておる。有難い事だ」


 また直ぐにヘーネの大森林へ精霊樹を探しに出かけるのだろう。

 それまでの僅かな時間、優しい時が流れている。


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