182ーどこから?
リヒトの父と兄が、大森林に討伐に出ているという。
これからハル達も大森林に出るのに、危険ではないのか?
「まあ、ヘーネの大森林は魔物がいるのだから、よくある事だ」
そうでしたね、長老。平然としてお茶を飲んでいる。
ヘーネの大森林には超大型の魔物が生息している。我が物顔で闊歩しているのだ。ハルがこの世界に、落とされた時にも遭遇して『ちゅどーん!』と倒している。
「ありぇらな、もうおりぇらけれも平気らな」
モグモグと出されたクッキーを食べながらハルがそう言った。
「ハル、何を言っているのだ?」
「らって、じーちゃん。元々おりぇらけれ行くちゅもりらったんら」
「あら、ハルちゃん。あたしも一緒よーぅ」
「あたちもなのれす!」
シュシュとコハルだ。ハルちゃんチームとでも言うのだろうか。ハルとコハルとシュシュ。この1人と2匹は、目を離すと何を仕出かすのか分かったものじゃない。
今回も、最初は突然置手紙を置いて、自分達だけで行こうとしていたのだ。
「でっけーのなりゃ『ちゅどーん!』れいっぱちゅらからな」
「あたちもやるなのれす!」
はいはい、また言い出した。あれ程、ハル達だけだと無理だと言われたのに。もう忘れたのか?
「だからハル。飯はどうすんだよ」
「あ……りゅしかの飯は、はじゅしぇねー」
「だろう?」
また長老とリヒトが、ハルに言い聞かせる。ハル達だけだと駄目だと。食事だけでなく、大森林の中で眠るんだ。その時に魔物が襲ってきたらどうすると。
「けろなぁ~、おりぇらけれいいじょ」
「だから、ハル。それは爺ちゃんの寿命が縮むぞ」
「じーちゃん、しょうなのか?」
「ああ、そうだ」
「しゃーねー」
納得したのか? お手々にクッキーを持っているハルちゃん。小さなぷくぷくとした手だ。手の甲にエクボができている。
「おりぇが、ちびっ子らからか?」
「そうだな。だが、ハル。まだ大森林で、どうするのかを知らないだろう?」
「そうだぞ、ハル。強いだけでは駄目なんだ」
「しょっか?」
そりゃそうだ。ハルは何も知らない。どっちに行けば、何があるのか知らない。ワールドマップの見方だって、まだマスターしていない。
ハルは無駄に行動力があるから、こんな時は躊躇しない。
それに、ハルは強い。超大型でさえ一発で倒してしまう。それがまた、ハルの行動力に拍車をかけている。
前世では、ハルは動く事自体が辛かった。毎日頭痛で目が覚め、食事をするのにも体力が必要だった。
そんな生活を20年続けていたんだ。その反動なのかも知れない。
ちびっ子になってしまったが、ハルは自分の思う通りに動ける今の健康な体がとてもお気に入りだ。
「おりぇ、ちゅえーじょ」
やっぱりまだ言っている。納得できないらしい。
「ハル、ワールドマップだってまだしっかり使えんだろう?」
「けろ、手の印がありゅじょ」
「それは近くにないと光らないだろう?」
「しょうらった」
「ダメだぞ、ハル」
「りひと、しょうか?」
「ああ。駄目だ。絶対に一人で行くのは駄目だ。俺達が付いて行く。それに、俺達だって精霊王から頼まれているんだからな」
「しょっか、しょうらな。わかったじょ」
やっと納得したらしい。手に持っているクッキーを食べ出した。
「ハルちゃ~ん、あたしもちょうだい」
「おー」
シュシュが大きなお口を開けている。ハルの手毎食べてしまいそうだ。
「シュシュ、お前もさ。ちょっとは説得しろよ」
「あら、だってあたしは付いて行くもの。絶対に離れないわ」
シュシュらしいと言えば、そうなのだが。
「シュシュに飯の用意ができるのか?」
「やぁね、リヒト。そんな事できる訳ないじゃない。魔物を倒して食べれば良いじゃない」
「お前はそれで良いだろうけどな。ハルはそうはいかないんだ」
「あら、そうなの?」
シュシュは、今更何を言っているのだろう。
「だからシュシュはピヨピヨなのれす」
あらら、コハルに言われちゃった。
「コハル先輩、それは止めてって言ってるじゃない」
「ハルは調理した物でないと駄目なのれすよ。当たり前なのれす」
「あら、そうだったわね。ハルちゃんなら平気かと思っちゃったわ」
どうしてだよ。そんな訳がない。
「じーちゃん、ろっから行くんら?」
「ハル、ワールドマップだ」
「おー」
クッキーを持った手を、胸の前にやり目を閉じる。ほっぺに屑が付いているぞぅ。
「ありぇ? じぇんじぇん真っ白白ら」
「そうだろうな。ハルはまだ大森林の中を知らないだろう?」
「けろ、べーしゅから通ってきたじょ」
「それだけだろう」
「しょうらった」
何気にハルは、リヒトが管理しているベース近辺しか移動した事がない。後は、長老の転移でサクッと移動していたりする。だから、ワールドマップもまだ真っ白な部分が大半なのだろう。
「幾つあるか位は分かるか?」
「えっちょぉ……わかんねー」
「ハル、光ってないか?」
「真っ白白らから、わかんねーじょ」
「それだと、ハル一人ではどうにもできんな。どこを探せば良いのかも分からないだろう?」
「しょうらな。じぇんじぇんら」
はい、完璧にハル一人で行くという選択肢は消えた。
ワールドマップが使えないのだから、どうしようもない。
樹木が沢山あるから大森林というのだぞ。その沢山の中からどうやって精霊樹を見つけるんだ?
お読みいただき有難うございます!
こんな拙いお話を読んで頂き、本当に有難うございます。
ハルの言葉が、最初より辿々しくなっている気がするのは、私の気の所為でしょうか?
ロロの影響を受けている気がする。^^;
いつも、有難うございます!




