177ー生えた?
ツヴェルカーン王国は火山地帯の地形を利用している国だ。
そんな場所にあるのだから、昔は度々火山の噴火によって国が被害にあったりもしていた。
だが、一番長生きの長老が知る限りでは、噴火は起きていない。噴火エネルギーを吸収し放出している設備があるからだ。
太古の昔に、ドワーフ族やエルフ族だけでなくドラゴン族やハイヒューマンが協力して作ったものだ。それにも精霊の力が影響している。
他の国にある魔石とは比べ物にならない巨大な魔石のプールが五つもある。
それだけ必要なのだ。瘴気だけでなく、火山の噴火エネルギーまでも調整しているのだから。
「じーちゃん、元気らじょ」
「そうだな、5本もあるのだな」
「れも、ハル。やっとくなのれす」
「よし、まかしぇりょ」
おや、ハルちゃんが本気だ。初っ端から魔法杖を取り出した。
「5本もありゅかりゃな」
なるほど、本数が多いから杖を使うらしい。
「ぴゅりふぃけーしょん、ひーりゅ」
小さな魔法杖を翳してハルが詠唱すると、白い光が降り注ぎ精霊樹を包み込んだ。
より一層輝き出す精霊樹。
「よし、いいかんじら」
ハルがご満悦だ。小さな体で胸を張っている。お腹の方が若干出ているような気もするが。
「ハル、呼び出そうか」
「しょうらな、何が出てくりゅかな」
ハルちゃん、ちょっぴり楽しみらしい。お尻を微妙にフリフリしている。
お歌が歌えないと、言っていたけど今度は歌えるといいね。
「ひぽ」
「ぶも」
やっと呼ばれたとのっそりと、ハルの亜空間から出てきたヒポポ。
だからね、この国では出てきても良いのだよ。律儀に呼ばれるまで大人しく待っているヒポポだ。
「ひぽ、よんれくりぇ」
「ぶも」
ヒポポが一歩前に出る。そして一鳴きした。
「ぶもぉッ」
するとわらわらと5匹出て来た精霊獣。
大きな爪のある手を持ち、ずんぐりむっくりとした体。お鼻が少し尖っていて小さなお目々だ。あるかどうかも分からないくらいに小さな目だ。
「なんら? もぐらしゃんか?」
「精霊獣にしては大きい方だな」
と、リヒトが言うように体調は40~50センチほどある。ただ、やはり普通のモグラさんではない。何しろ体色がとってもカラフルだ。それに背中に2対の葉っぱがあり、短くて細い尻尾の先にも葉っぱが付いている。これは精霊獣共通のものらしい。
赤、青、黄色、緑、白のモグラさん。何かの戦隊ものでも作れそうだ。
「おいれー、元気らな!」
またハルが手を出す。するとやはりモグラさん達はハルの方へとフヨフヨと浮いて移動して来る。クック、キュウキュウと小さな声で鳴きながら寄って来た。
「あははは、やわらかいんらな」
ハルが小さなぷっくぷくの手で、モグラさんを撫でている。見た目の印象よりは、毛が柔らかいらしい。
「おりぇ、もぐらしゃんのお歌はしりゃねーな」
「ハルちゃん、お歌よりな、モグラさんの毛は硬くないん?」
「かたくねーじょ。やわらけー」
「そうなんや、自分も触りたい!」
ハルとカエデは無邪気だ。
「それにしても、精霊獣ってみんなカラフルなのか?」
「ヒポポはそうじゃないだろう」
「確かにな」
リヒトと長老がモグラさんを観察している。
「あ、尻尾の葉っぱの数がヒポポと違うぞ」
「リヒトの言う通りなのれす」
「コハル、これにも意味があるのか?」
「普通、精霊獣の尻尾には2枚の葉っぱがあるなのれす。3枚ある精霊獣は元気で長生きしているなのれす。それだけなのれす。でも、ドラゴシオン王国の精霊獣はみんな3枚あるのれす」
「ほう、そうなのか」
全然覚えていない。そうだっただろうか? アンスティノス大公国でも尻尾に3枚の葉っぱがついている精霊獣もいたぞ。
「長生きなのれす」
ヒポポも長生きしているって事だね。
「ヒポポは特別なのれす。普通精霊獣は、自分の精霊樹から離れて存在する事はできないのれす」
ヒポポはドラゴシオン王国のおばば様も庭にある精霊樹の精霊獣だ。そばを離れるどころの騒ぎではない。国を離れている。
「ひぽは元気らからな」
「ぶもッ」
ハルにお顔を擦り付けて甘えるヒポポ。ハルは精霊だけでなく、精霊獣にも好かれる。
「アハハハ、ひぽ、くしゅぐったいじょ」
「ぶもぶも」
それより、ハルちゃん。まだする事が残っているよ。
「長老もやっとくなのれす」
「そうか? なら任せなさい」
ほら、長老がまた張り切ってやっちゃうぞ。
長老が、魔法杖を取り出しコツンと地面を一つ突いた。そして、静かに詠唱する。
長老の詠唱は控えめで静かだ。なのに効果は全く控えめではない。絶大だ。
「ピュリフィケーション……ヒール」
長老が詠唱すると、精霊樹が生えている空間に白い光が満ちた。ハルがやった時とはまた違った現象だ。それが、パワーの違いなのだろう。長老、結構本気でやっているらしい。
「やっぱ、じーちゃんはしゅげーな」
「マジ、長老。ちょっとは加減しろよ」
「ワハハハ、そうか? まあ良いだろう」
長老は笑っているが、光が収まると何もない地面からポコンと芽が出て、グングン成長し小さな精霊樹になった。しかも、5本ある精霊樹の間を埋めるかのように4本生えてきた。
「え? こはりゅ植えてねーじょ」
「これはまた、どうしてだ? コハル」
コハルさん、満足気に両手を腰にやっている。説明してほしいぞ。
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