175ー調子に乗っているよね?
コハルさん、良いのかな? ちょっぴり調子に乗っていたりするのかな?
「長老、もう一回やるなのれす」
「おう、やるぞ」
長老まで調子に乗っている。また魔法杖を掲げて長老が詠唱した。
「ピュリフィケーション……ヒール」
白く輝きながら光が精霊樹を包み込む。すると、フワリとクリスタルの実が枝から落ち地面へと吸い込まれていく。
その地面から、ピョコンと芽が出たかと思ったら、あらあらニョッキニョッキと大きくなって立派な精霊樹に育った。
「おおおーッ! なんとぉッ!!」
「これは、もう言葉がないですね!」
ドワーフ王と宰相は良いコンビだ。
長老とコハルがどんどん調子に乗ってしまう。
「じーちゃんばっか、じゅりーな」
「アハハハ、なんだハル。拗ねてんのか?」
「しゅねてねーし。おりぇも、やりてーじょ」
「ハルも、またやっとくなのれす」
「おー!」
張り切って、魔法杖を出したハルちゃん。え? 杖を使うのか? そのオモチャのような魔法杖を?
足を肩幅に開き片手に魔法杖、もう片方の手を腰にやり堂々と胸を張っている。そして張り切って詠唱した。
「ぴゅりふぃけーしょん、ひーりゅ!」
ハルが魔法杖を使ってまで、やっちゃったものだからそれはもう精霊樹が光りまくりだ。
これ以上は大きくならないのだろう。それでも枝や葉を、生き生きとさせて輝き出した。
「ハル、呼び出してもらおう」
「しょうらな、ひぽ」
「ぶも」
ハルは何が出てくるかと、ワクワクしているぞぅ。
ヒポポが鳴いて呼び出した精霊獣。そりゃそうだよ、だっておなじ場所なんだから。
「いっしょら」
「アハハハ。ハル、そりゃそうだろう」
「とかげしゃんら」
さっきと同じ色合いのトカゲさんが出て来た。それでも、ハルに向かってフワリフワリと飛んでくるのを見ると、ハルは手を出す。
「おいれー、かぁわいいなぁ~」
「ぶもぶも」
精霊獣はみんな一斉にハル目掛けて飛んでくる。フワリフワリと。背中の小さな葉っぱをヒョコヒョコと動かしながら。
「ハル、大事な事を聞かないとだ」
「じーちゃん、しょうらった」
「ひぽ、聞いてくりぇ」
「ぶも」
一番最初に出て来た精霊獣の側に行き、ヒポポが頭を動かしながら話をしている。
「ねえねえ、精霊女王知ってる? 来たかな?」
なんて、言ってそうだ。
「ぶも」
「しょっか、じゃあちゅぎらな」
「ハル、来たのか?」
「しょうら、ちゅぎに行くっていってたって」
「ふむ、それは最近なのか? ヒポポ」
「ぶもぶも」
「ちょっとまえらって」
「また、ちょっと前か」
この『ちょっと前』というのがミソだ。精霊獣の『ちょっと前』は何百年も前だったりする。
時間の感覚が違い過ぎるんだ。長命種のエルフ族とも、また違った感覚だ。
とにかく、ここはもう良いだろう。次に行こう。
「ハルちゃん、寄って来たで」
「な、可愛いな」
「ハルちゃんの方が可愛いわよぅー」
あらあら、ちびっ子と白い奴が精霊獣と戯れている。結局なんだかんだと言っても、ハルは精霊獣が可愛いと言っている。おいでと呼んで、頭を撫でていたりする。
精霊獣も、ハルに触られる事が嫌ではないようだ。頭を擦り付けている精霊獣もいる。
ハルは本当に好かれている。加護の影響なのか、それともハル自身が好かれるのか?
「長老、こんな不思議な光景は初めてだ。同行させてもらって感謝するぞ」
「本当に、陛下の仰る通りです。貴重な体験をさせてもらいました」
ドワーフ王と宰相が、感動しているようだ。
今回は、コハルの計らいで特別に見る事が出来た。最後は少し調子に乗っていたような気もするが、良しとしよう。
本当なら、ドワーフ族には見る事ができない精霊樹と精霊獣だ。今後、もうこんな機会はないかも知れない。
「ああ、名残惜しいな、宰相」
「本当です」
何度も後ろを振り向きながら、戻って行くドワーフ王と宰相。
エルフ族の2人はどうした? なんの感想もないが?
「言葉がないですよ」
「長老もハルくんも、規格外すぎる」
そっちなのか? 長老とハルが使った魔法の方に目がいったのか?
「ロマーティとシオーレ、そっちなのかよ」
リヒトが思わず突っ込んでいる。
「いえ、リヒト様。もちろん精霊樹や精霊獣もとんでもないですよ。見せて頂いて感謝致します」
「その通り」
「でも、やはり長老とハルくんのあの魔法は、とんでもないですね」
「そう思う」
シオーレは言葉が少ないのだな。いつもこんな感じなのだろうか?
そのシオーレがいつの間にかハルのすぐ側に行き、一緒になって精霊獣に手を伸ばしている。
「な、かぁわいいらろ?」
「はい、ハルくんも」
「アハハハ、おりぇはいいんら」
おお、会話をしているぞ。
「ハル、そろそろ行くぞ」
「おー、じーちゃん。みんなー、またなー!」
精霊獣に手をフリフリしているハル。そして、長老にヒョイと抱っこされた。
「じーちゃん、おりぇありゅくじょ」
「暗いし足元が危ないからな」
「しょっか?」
長老が抱っこしたいだけだろう。と、間違いなく誰もが思っている。
残念そうにしているが、ドワーフ王と宰相、そしてエルフ族の2人はここまでだ。
ここから、火山地帯のど真ん中にある遺跡まで長老の転移で向かう。
前回の遺跡調査の時には、青龍王に乗せてもらって行った山の中だ。




