174ー地下の精霊樹
壁だった場所が揺らぎ、まるで幻影か蜃気楼の様に開いた扉の中へと入って行く。
「な、な、なんとぉッ!?」
「素晴らしい……!」
ドワーフ王と宰相が思わず声をあげた。
「しゅげーな」
「これは見事だ」
「こんなの初めてだな」
ハルに長老、リヒトも驚いている。その扉から既に光が漏れ出していた。
中には、火山地帯の剥き出しの岩の地面に、力強く精霊樹が立っていた。それも、並んで3本もだ。
その精霊樹の光が漏れていたんだ。
こんな地下にまさか精霊樹があるなんて、誰も思わない。しかも、元気に輝いている。
「コハル、これは地下エネルギーを吸収しているのか?」
「はいなのれす。れも、ここは大した事ないなのれす」
ここで大した事ないと、コハルが言った。3本も並んで立っているのに。
「エネルギーの吸収は、ここよりあっちなのれす」
「なるほどな」
火山地帯のど真ん中にある、遺跡の事を言っているのだろう。
あの遺跡自体が、地中の火山エネルギーを吸収し、少しずつ影響がない程度のエネルギーを放出している。そこにも精霊樹があるという。
「ハル、やるなのれす」
「おう、こはりゅ」
ここでもやっちゃうらしい。精霊樹は元気なのに。
「精霊樹の栄養になるなのれす」
「おー」
ちょっぴりやる気になったハルちゃん。短い両手を掲げて詠唱した。
「ぴゅりふぃけーしょん、ひーりゅ」
すると、白い光が3本の精霊樹を包み込んで消えていく。より、神々しい光を放ち出した精霊樹。3本並んで立っていると、光り出したら眩しくて仕方ない。
「おおーッ! これはまた素晴らしい!」
「眩しいくらいですな!」
ドワーフ王と宰相は、精霊樹を見るのは今日が初めてだ。その所為もあるのだろう。
一々、反応して驚いている。
一方長老は淡々としている。慣れたものだ。
「ハル、呼び出そうか」
「じーちゃん、しょうらな。何が出りゅかな」
ちょっぴりお尻をフリフリしながら言った。ハルちゃん、楽しみにしていないか?
まだお尻をフリフリしなくていいんだよ。
「ひぽ」
「ぶも」
やっと呼んでくれたかと、言いたそうな顔をしている。コハルだけ先に出ちゃったからだろう。
「ぶもも」
「え、しょうか?」
「ぶもぶも」
「分かったじょ。こんろからしゅぐに呼ぶじょ」
「ぶも」
おや、ハルに何かを訴えているぞ。
「ハル、ヒポポはどうしたんだ?」
「え、りひと。コハルらけ先に呼んらっていってりゅんら」
「なんだ、ヒポポも一緒に出てくればいいだろう」
「ぶもッ!?」
いいのか!? と、きっと言っているのだろう。小さなお目々が輝いている。
「ヒポポ、この国ならいいぞ。気をつけるのは、アンスティノス大公国だけだ」
「ぶもッ」
おお、喜んでいる。短い尻尾がフリフリと動いているぞ。
「ひぽ、呼びらしてくりぇ」
「ぶもッ」
任せろと、少し張り切っているのかな? 背中にある葉っぱまでヒョコヒョコと動いている。
ヒポポも早く出たかったらしい。
「ぶもぉッ」
ヒポポが一鳴きすると、3本の精霊樹からフワリと出て来た。トカゲさんだ。城の裏に生えていた精霊樹と同じだ。
カラフルな縞模様のトカゲさん。体色は淡いクリーム色をベースに大きな縞模様がある。その縞模様の色が、クリームイエローと、ベビーピンク、それにライトブルーだ。
「あ、一緒らじょ」
「ハル、そりゃそうだろう。近場だしな」
「けろ、りひと。今まれ、いりょいりょ出てきたじょ」
「ハルはトカゲは嫌なのか?」
「嫌じゃねーじょ。けろ、お歌が歌えねー。トカゲしゃんのお歌なんて知りゃねーじょ」
「歌かよ」
ハルは精霊獣に一体何を求めているのだろう。
「しょりょしょりょ、お歌が歌いたいじょ」
はいはい、お歌はまた今度だ。
「コハル、ここも植える必要はないな?」
「はい、ないなのれす。れも、長老もやっとくなのれす」
「ワシもか? 元気なように見えるがな」
「やっとくなのれす」
「よし、任せなさい」
ああ、また長老がやっちゃうぞ。また、やり過ぎちゃうぞ。
長老がどこからか魔法杖を出した。それを、掲げて静かに詠唱する。
「ピュリフィケーション……ヒール」
精霊樹だけでなく、辺り一面にキラキラと光りながら白い光が降りていく。
すると、精霊樹がより輝き出した。そして、さっきの精霊樹と同じ様に白く光りながら精霊樹の枝が伸び、葉っぱが出てその先に芽が出て花が咲き、みるみるうちに精霊樹の実が生った。
「ああ、この実が精霊樹になるところを見てみたいものだ」
そう、ドワーフ王がボソッと言った。
「見るれすか?」
「え? コハルちゃん、見られるのか?」
「はいなのれす」
ドワーフ王が『コハルちゃん』と呼んでいる。少し身長は低めだが、ガタイが良くて立派なお髭で貫禄のあるドワーフ王が『コハルちゃん』なんて呼んでいる。
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遅くなりました。出来たてホヤホヤです^^;
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