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168ードワーフ族の宰相

 取り敢えずの応急処置として坑道の天井部分を強化し、長老が無限収納に収納した鉱石も全部親方に渡した。

 坑道の地図を渡されたので、長老は神眼で見たミスリル鉱石の鉱脈のある箇所に印を付けたりしていた。

 この坑道は、ちゃんと天井を補強するまで最奥までは職人が入らないようにするそうだ。

 偶々だが、長老達がいて良かった。

 そして一行は、親方に其々の剣のメンテナンスを頼み、城へと戻って来た。

 部屋に入ると来客があった。

 お茶と茶菓子をワゴンに載せたメイドさんを、引き連れて訪ねて来た。


「ご無沙汰しております」


 そう言いながら頭を下げたのは、この国の宰相ドニスターだ。

 ドワーフらしい茶色の多めの髪に立派な顎鬚。少し小柄だがガタイが良い。この宰相も若い頃は、鍛冶師を目指していた事があるらしい。

 だが、今の王に宰相としての才能を見出され、今は鍛冶をお休み中らしい。

 あくまでも、お休み中だ。宰相の任を退いたらまた鍛冶をするつもりだそうだ。

 ドワーフ族は皆、根っからの鍛冶好きだ。エルフ族が、木のある場所が好きなのと同じだと長老が言う。そんな物なのだろうか?


「おお、久しぶりですな」

「長老殿、早速助けてくださったそうで。有難うございます。毎回ご尽力には感謝致します」


 長老達が落盤事故から職人を救助した事をもう知っているのだろう。


「まあ、そう堅苦しくならんでくれ」

「そうですか? では……ハルくん久しぶりだな」


 そう言いながら、ハルに菓子を手渡している。ハルの目線に合わせてしゃがみ込み、目が垂れている。この宰相もハルのファンらしい。


「えっちょ、しゃいしょうしゃまら」

「そうだ。覚えてくれていて嬉しいよ。相変わらず無敵の可愛さだ」


 無敵の可愛さと言われたぞ。一気に砕けていないか?

 合いの手を入れる様に、白い奴が口を挟んだ。


「だってハルちゃんは超可愛いもの」

「黙ってたら余計に可愛いやんな」


 カエデが失礼な事を言っている。


「アヴィー先生はまだアンスティノス大公国ですか?」

「そうなんだ。だが、もうそろそろ解放されるだろう」

「ああ、良い方向へ進み出したようですね」

「ま、色々あってな」

「やはり長老が一枚噛んでましたか」


 人聞きの悪い。だが、確かに長老も関わっている。長老だけではなく、コハルもだ。

 コハルが一番の功労者かも知れない。

 何より、長老はアヴィー先生の夫であり、エルヒューレ皇国の長老だ。関わっていないはずがない。


「私達には良い販路になりますよ」

「アハハハ、そうだな。あそこは騎士団もあるしな。その割に武器の性能はあまり良くないと見たが」

「それはそうでしょう。我々ドワーフ族と同等の物を作れるのはエルフ族くらいでしょう」


 協定を結んでから、例の親方が先導してエルヒューレ皇国への技術提供をしてくれている。

 定期的にエルヒューレ皇国に職人の指導に来てくれているんだ。

 そのお陰もあって、エルヒューレ皇国ではドワーフ族顔負けの武器が作られている。

 親方はエルヒューレ皇国で作られた酒も気に入ったらしくて、毎回沢山持って帰るのだそうだ。

 ドワーフ族はやはりお酒も好きらしい。


「親方のお陰だ。お互い様って事だな」

「そう言って頂けると助かります。そちらで酒ばかり呑んでいるのではないかと心配で」

「アハハハ! そりゃドワーフ族だから、そんな事もあるだろう」


 長老と宰相が和やかに談笑している。その間、ハルは……


「かえれ、こりぇうめーじょ。たべてみ?」

「ハルちゃん、そうなん?」

「ハルちゃん、あたしもー」

「あたちも食べるなのれす」

「ぶも」


 ん? 聞こえてはいけない声があったぞ。


「ぶもぶも」

「な、ひぽもうまいらろ?」

「ぶも」


 堂々と出て来て、ハル達と一緒に菓子を食べているではないか。ヒポポは出てきては駄目なのではなかったのか?


「どうせ見えないし構わんだろう」


 と、長老は大雑把な事を言っていたらしい。

 だが、普段はコハルと一緒におとなしくハルの亜空間に入っている。

 ハルが何かを食べ出すと、コハルと一緒に出て来る。精霊獣は食べないとか言っていたのは最初だけだった。

 もう、ヒポポも食いしん坊決定だ。

 小さくて短い尻尾をフリフリと動かしながら、美味しそうに食べている。

 食べたものは、どうなっているのだろう? 細かい事は考えないようにしよう。


「ハル、あまり食べたら夕食が食べられなくなりますよ」

「りゅしか、らってうめーじょ。ん」


 と、ルシカに菓子を手渡すハル。

 結局全員食べている。


「んめーな」

「美味しいわ」

「美味しいにゃあ」

「美味しいなのれす」

「ぶも」


 宰相にヒポポは見えているのだろうか? 見えていないよな?

 なら、菓子が空中を浮いて消えるというホラーが出来上がるのだが。


「長老、私の目が変なのでしょうか?」


 ほら、言っているぞ。


「いやいや、すまん。あそこには精霊獣がいるんだ。普通では見る事ができないんだ」

「なんとッ! ああ、それが今回来られた件ですか」

「そうなんだ。コハル、構わんか?」

「はいなのれす」


 なんだ? と思ったら、コハルがフヨフヨと浮いて移動し、宰相の額をプニッと触った。

 ヒューマン族にはあれほど難色を示していたのに、ドワーフ族だとなんの抵抗もなくやってしまうのか。


「な、な、なんですか!? か、かば? いやいや、あれは羽? 葉っぱ?」

「アハハハ。見えたか? 精霊獣のヒポポだ」


 そう、カバさんの精霊獣のヒポポです。今は一所懸命菓子を食べているけどね。


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