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166ー事故

 そこにバタンと扉を開けて、慌ただしく入って来た人がいた。


「親方! 大変だ! 坑道で事故だ!」

「なんだと!?」


 知らせにやって来たのは、ヴェルガー親方より少し年配の男性だ。

 『親方』と呼んでいるが、どういった関係なのだろう?


「鍛冶工房を取りまとめている組合長なんです」

「事故ってどこでだろう。この工房からも何人か採取に出ているんだけど」


 ヴォルノとジャーノも知っている人らしい。

 それは心配だ。話を聞こう。

 親方とその組合長の話によると、魔鉱石を採掘する坑道の一番奥で事故が起きたのだそうだ。

 まだ鉱石が出るぞと、どんどん奥へと掘り進めていた場所らしい。

 岩盤が崩れてきて、閉じ込められてしまっているのだそうだ。

 怪我人は出たのだろうか? 事故の規模は?


「うちの職人も入ってるはずだ」

「あそこは大きいからな! 何人も職人が入ってんだ!」

「どうすんだ!」


 崩れている場所は分かっている。だから勿論救助には人が出ている。

 だが、なにしろ岩盤が崩れたんだ。それを退かすか掘らないと辿り着けない。


「親方、土属性魔法を持った者はいないのか?」

「長老、もちろんいるぞ。だけどな、長老達とはパワーが違うんだ。そこまで大規模な魔法を使える奴なんていねーんだ」


 だ、そうだぞ。長老、ハルちゃん。


「じーちゃん」

「ハル、放ってはおけんな」

「しょうらな」


 そうだよね。長老やハル達だとこのまま見過ごすなんて出来ないだろう。


「長老、行くか?」

「リヒト、そうだな。親方、差し出がましい様だがワシ等が行っても構わないか?」

「長老! 差し出がましい事なんてあるかよ! あぶねーぞ! それでも行ってくれるか!?」

「おやかちゃ、らいじょぶらじょ」

「おうよ、任せてくれ」

「そうか! そうか! 頼むぜ!」


 知らせにやって来た組合長が、ポカンとしている。ちゃんと説明してあげて欲しい。

 だが、エルフ族だと見れば分かる。

 この国に出入りしているエルフ族は限られる。


「もしかして、前にデスマンモールを討伐してくれたエルフさん達か!?」


 この組合長も声が大きい。ドワーフ族は漏れなく声が大きいのだろうか?

 それに、ドワーフ定番のお髭だ。フッサフサで立派なお髭がある。


「ああ、そんな事もあったな」


 覚えておられるだろうか?

 デスマンモール。体長190〜280センチメートルの巨大なモグラさんだ。

 普段はツヴェルカーン王国の火山地帯にある河川付近の地中に生息している魔物だ。単独で生活し、それぞれの個体が縄張りを形成する。主に昆虫、ミミズなどに加え魚類や両生類などの大型の獲物も捕食し、鉱物まで食べる。

 それが坑道に出てきて被害が出ていた。そのデスマンモールを、長老達が討伐した事があったんだ。


「じーちゃん、なんらって?」


 ハルは分かっていないらしいぞ。


「ハル、大きなモグラの魔物を討伐しただろう?」

「しょうらっけ?」


 どうやら覚えていないらしい。


「しょーいえば、なんかやったな」


 ハルにとっては、その程度の事だったらしい。この国の鍛冶師にとっては死活問題だったのだが。

 

「どこの坑道なんだ? 案内してくれるか?」

「おう! 長老、いつもすまねーな!」

「それこそ何を言っているんだ。お互い様だ。ワシ等も世話になっとる」

「そう言ってくれるか!?」


 と、親方と組合長に案内されて坑道へとやって来た。

 その坑道は、天井から岩盤が崩れ落ちていて完全に塞がった状態になっていた。

 現場で見ていた職人の話によると、まだ上の方にも鉱石があるぞと掘り始めたのだそうだ。

 それが悪かった。掘り始めて暫くすると、パラパラと小石が落ちてきて次の瞬間には天井の岩盤が崩れたらしい。


「それで怪我人は出ていないのか?」

「それが、その掘っていた職人が逃げ遅れて、崩れてきた岩盤の一部に足を挟まれている者が1人いるそうなんだ」


 案内してくれた組合長が説明してくれている。

 その職人がどの辺りにいるのかだ。無闇矢鱈に掘ってしまうと、状況が余計に悪くなりかねない。

 他には何人閉じ込められているのだろう?


「うちの職人も来ていたはずだ」

「ふむ、こりゃ岩を崩せば良いって訳にはいかないな」

「長老、こっちで作業する事を向こうに伝えないとだな」

「リヒト、どうやって伝えるかだ」

「取り敢えず、叫んでみるか?」


 とっても原始的な方法なのだが。俺が言うぞと、組合長さんが声を張り上げた。


「聞こえるかー!? 聞こえたら返事をするか合図をくれー!!」


 大きな声だ。普段でも大きいが、より大きな声で呼び掛けた。

 すると、向こうから元気そうな声が返ってきた。


「聞こえます! 聞こえてますよ!」


 やはりドワーフ族は皆声が大きいらしいぞ。


「げんきしょうらな」

「ハルちゃん、そうやんな。安心したわ」


 組合長さんに言って、閉じ込められている人達がどの辺りにいるのか合図を送ってもらった。

 足を挟まれて、動けなくなっている者がいる場所に集まってもらう。

 その場所を避けて、岩盤を崩そうという訳だ。

 だが、動けなくなっている者がいる場所が問題だ。


「ど真ん中じゃないか」

「リヒト、そうだな」

「長老、どうするよ? 思い切り崩せねーな」

「そうなるな」

「端からちょっとじゅちゅしか、しゃーねーじょ」

「あん? あんだって?」


 リヒトは未だに時々、ハルの喋っている事が理解できないらしい。


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