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15ーコハルの知識

「匂いですか!?」

「そうだよ」


 ドラゴンの昔話でそう言われているらしい。だが、実際にそうなのかは分からないそうだ。何故なら、精霊樹を見たものがいないのだから。でも、ハルが精霊樹があると言った場所にいつもいるから本当じゃないかと、おばば様が言う。


「ひぽはわかりゅのか?」

「ぶもッ」


 どうやら頷いているらしい。頷く仕草をしている。確かにハルとは意思疎通ができる様だ。


「しゅげーなッ」

「ぶももッ」


 おや、今度はハルに褒められてちょっぴり得意気だ。


「アハハハ、かあわいぃなぁ~」

「ヒポポ、ハルの役に立ってやってくれないかね?」

「ぶもッ」

「頼んだよ」

「ぶももッ」


 任せておけと言っている様に思える。巨体には似付かわない、なんとも愛嬌のある仕草をする。小さな耳をヒョコヒョコと動かし、背中にあるこれまた小さな翼をパタパタと動かす。目も小さいがクリックリだ。身体の割に各パーツが小さい。

 ハルが早速背中に乗ろうと片足を上げて踠いているが、まったく届かない。


「ハル、乗るのか?」

「ん、りひと。のしぇて」

「ヒポポ、いいか?」

「ぶもッ」


 良いらしい。ハルは精霊に好かれるからか?

 リヒトに乗せてもらいご満悦なハルちゃん。


「ひぽ、いくじょッ!」

「ぶももッ」


 どこへ行くのだろう。ハルは張り切って片手を挙げている。気分は大冒険に出発だ。


「ハル、ヒューマンの前では乗ったら駄目だよ」

「おばばしゃま、ろうしてら?」

「ひぽぽは精霊獣だ。精霊の仲間さ。魔力量の少ないヒューマンには見る事ができないんだ。そのヒューマンの前でヒポポに乗っているとね、ハルが浮いているように見えてしまうよ」

「しょうなのか!?」

「ぶもッ!?」


 ハルとヒポポの表情がリンクしていて、とても微笑ましい。カバさんの顔だけど表情もなんとなく伝わるのが笑えてしまう。


「アハハハ。この子は賢いからね。役に立つだろうよ」

「おばばしゃま、いいのか?」

「ああ、ハルの役に立つならね」

「ありがちょ!」

「ハル、念の為コハルに見てもらおうか?」

「じーちゃん、しょう?」

「精霊獣が精霊樹を離れても大丈夫なものか少し心配だ。コハルなら何か知っているかも知れん」


 確かに。聖獣の中でも創造神の神使のコハルだ。格が高いらしい。遺跡調査の時には、この世界の始まりの一端を話していた事もある。


「こはりゅ」

「はいなのれす」

「こはりゅ、ひぽら」

「よろしくなのれす」


 コハルがヒポポの頭の部分に乗って小さな手で撫でている。

 シュシュの時は、たしか足でタシタシと踏みつけていなかったか?


「精霊獣らって」

「はいなのれす。あの精霊樹の精霊獣なのれす」

「そうなのかい?」

「はいなのれす。おばば様が大好きなのれす」

「ぶもぉ」

「アハハハ、なんだい。照れているのかい?」


 おや、ヒポポが照れている。表情豊かな精霊獣だ。ほっぺが赤く見えてしまうのは何故だ?


「あたしだってハルちゃんが大好きなのよ!」


 ああ、奴がいた。ハルがヒポポの背中に乗っているからヤキモチを焼いているのだろう。いつもハルを背中に乗せるのはシュシュだった。


「しゅしゅ、おりぇもしゅきらじょ」

「ハルちゃぁ~ん!」


 今まで大きいと思っていたシュシュが小さく見えてしまう。シュシュより一回り大きなヒポポ。ヒポポの背中から手を伸ばし、シュシュを撫でるハルちゃん。シュシュがゴロニャンと頭をハルの手に擦り付けている。ネコ科だ。お喉がゴロゴロ鳴りそうな気がしてくる。


「シュシュ、何を言っておるんだ」

「だって長老。いつもあたしがハルちゃんを乗せていたもの」

「なんだ、ヤキモチか?」

「違うわよ!」


 はいはい、もうそれは良いからさ。


「こはりゅ、ひぽは精霊樹が分かりゅのか?」

「精霊獣は仲間が匂いで分かるなのれす」

「仲間かい?」

「そうなのれす」


 正確には精霊樹の匂いではなく精霊獣の匂いが分かるのだそうだ。精霊獣は必ず精霊樹のそばに生まれる。だから自然と精霊樹のそばに精霊獣がいる。


「その精霊樹が枯れると一緒に消えちゃうなのれす」

「え……」

「可哀そうなのれす」


 コハル、またとんでも知識を披露した。これは急いで精霊樹を復活させなければならない。


「コハル、精霊獣は皆同じ姿なのか?」

「違うなのれす。色々なのれす」

「こはりゅ、精霊樹と離りぇてもらいじょぶなのか?」

「大丈夫なのれす」


 コハルは流石神使の聖獣だ。色んな事を知っている。

 精霊獣は必ず精霊樹の側に生まれる。そばを離れても大丈夫だそうだが、必ず戻ってこないといけないそうだ。生まれた精霊樹のそばが1番らしい。

 そして、普段はコハルと同じ様にハルの亜空間に入っていられるということも知っていた。


「ひぽは何を食うんら?」

「精霊だから食べ物は必要ないなのれす。亜空間にいる間にハルの魔力で元気になるなのれす」


 と、話しているコハルだって本当は食べ物は必要ないらしい。


「ルシカのご飯やおやつは美味しいなのれす」


 なら、ヒポポも食べるかも知れない。

 旅の新しい仲間だ。

 まさか、精霊獣の仲間ができるとは誰も想像できなかった。此処に来るまで精霊獣自体を知らなかった。

 ドラゴン族は精霊を見る事ができる。その所為かドラゴシオン王国には精霊が多い。1番多いのはやはり樹々の茂っている大森林だ。

 なのに、エルフ族は精霊を見る事ができない。だが、エルフが通信手段に使っている七色の蝶パーピ。これも最近ハルが、パーピは精霊の仲間だと何気に話した事から、精霊の一種だと判明した。


「城にも精霊獣がいるよ」

「おばばしゃま、しょうなのか?」

「ではおばば様、近くに精霊樹があるのか?」

「それが見えないもんでね」


 ああ、そうだった。精霊は見えても精霊樹が見えない。竜王なら見えるかも知れないと長老が言っていた。


読んでいただきありがとうございます。

宜しければ、評価やブクマをして頂けると幸いです。

宜しくお願いします!

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