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130ー基地の精霊樹

「おりぇ、やりゅ気らったのにな~」

「また、ハルちゃん。ヒューマン族なんて相手にならないわよ。カエデの方がずっと強いかも知れないわ」

「え? ばーちゃん、しょうなのか?」

「アヴィー先生、騎士団の方が強いに決まってるやん。自分はまだ子供なんやし」

「あら、カエデ。そんな事はないと思うわよ。イオスにずっと指導してもらっているでしょう? それに、経験が違うわ」


 それはそうだ。毎日毎日エルフ族の中でも、そこそこ強いイオスを相手に鍛練をしている。毎日、良いお手本を見ているのと同じだ。

 それに、カエデはリヒト達と一緒に旅をする様になってから、魔物を討伐する事だってある。

 ベースに戻れば、大森林の魔物と対峙する事だってある。訓練だと言って、イオスと一緒に魔物討伐に出る事だってある。

 今は戦乱もなく、鍛練はしているが魔物が出没する訳でもない国を守っている騎士団とは、経験値が違うのだ。

 勿論、カエデの努力や持って生まれた身体能力もある。魔法が使える様になった事も大きい。身体強化ができるんだ。

 いつの間にかカエデも強くなっているのだよ。


「ま、そこら辺の騎士には負けないだろうな」

「イオス兄さん、ほんま!?」

「おう、毎日見ている俺が言うんだから確かだぞ」

「やった! めっちゃ嬉しいわ!」

「それでも、まだまだだわ」


 おっと、久しぶりに白い奴が喋ったぞ。よく黙って我慢していたのもだ。


「シュシュ、にゃあって鳴いてたら可愛いのにな」

「何よ、文句あんの?」

「ないにゃあ、仲間にゃあ〜」

「ちょっとカエデ! あんたほんっとに、面白がっているでしょう!?」

「だってほんまに可愛いねんもん」

「あたしはね、白虎なのよ。可愛いとかじゃないの!」


 はいはい、いくら言っても小さくなっている今は『可愛い』白いネコちゃんだ。

 確かに、大型ネコ科のうち最大最強の動物は虎だと言われている説もある。

 その中でも特別な白虎だ。聖獣だ。三毛猫のカエデとはまた別物だろう。

 それでも同じネコ科同志、仲良くしようね。


「あ、じーちゃん見えてきたじょ」

「おう、そうだな」


 いつもの様に、長老に抱っこされているハル。そのハルが指差した先に、キラキラと光る精霊樹があった。


「あら、まだ元気な方じゃないかしら?」

「でも、アヴィー先生。また1本だけだ」

「そうね、でも複数一緒に生えている精霊樹って見た事がないわよね?」

「しょんなこちょねーじょ」


 実際にドラゴシオン王国では、小麦畑の小道に何本もの精霊樹が元気に並んで生えていた。

 ドラゴシオン王国で見た精霊樹と、アンスティノス大公国の精霊樹では状態が違い過ぎる。

 この国の精霊樹は元気がない。それに、どこも1本だけだ。よく見ると、ドラゴシオン王国で見た精霊樹より小さく感じる。


「瘴気だな。国民の意識もあるだろうが」

「そうね、この国は精霊を全く信じていないし存在を否定しているものね」

「緑がないしな」

「しぇいれいが住みにくいんら」


 今迄は瘴気を浄化するものが、精霊樹しかなかった。精霊樹だけでは、完璧にはいかない。

 それどころか、精霊樹に負担が掛かり過ぎて、こんな状態になってしまっているんだ。

 そんな要因もあり、余計に精霊が住み難い環境になってしまっていた事もある。単純にこの国の公都では緑が少ない。その所為もある。

 だが、公都だけでなくこの国の精霊樹は元気がなく小振りだ。他の国の精霊樹と比べるとだ。

 今回、ハル達が回って元気にしている。精霊樹の実も沢山植えてきた。

 この先、変わって行くと良いのだけど。折角植えてきたのに、枯れてしまうのでは遣る瀬ない。


「よし、やるか。アヴィー」

「ええ、分かったわ」


 アヴィー先生が魔法杖を出した。認識阻害のシールドを張る為だ。

 このシールドを張っておくと、この場にいる皆が何をしているのか分からなくなる。全く見えなくなる訳ではないのだ。

 ただ、ヒューマン族の様に魔力量の少ない種族には、何をしているのか認識できなくなる。

 そんなシールドだ。長老もこのシールドを使えるが、リヒト達は出来ない。

 アヴィー先生は、自分は下から2番目の強さだと言った。自分はそんなに強くないと。だが、魔法操作なら逆かも知れない。長老には敵わないが、その次位には出来る人だ。

 元、魔法学の先生だ。魔法に関しては、リヒト達はアヴィー先生には敵わない。

 アヴィー先生が、何かを唱え魔法杖で半円を描く。目には見えないが、認識阻害のシールドが張られてた。


「いいわよ」

「よし、ハル」

「おう。こはりゅ、ひぽ」

「はいなのれす」

「ぶもッ」


 コハルとヒポポが、ポンとハルの亜空間から出て来た。空中で一回転していたりする。退屈していたみたいだね。この国ではずっと出る事が出来ないから。


「よしッ! やりゅじょ!」

「はいなのれす!」

「ぶもッ!」


 おう、ハルちゃんチームが張り切っている。そんなに退屈していたのか?


「かりゃだがなまるじょ」

「アハハハ、ハルもか」

「じーちゃん、らってちゅまんねー」

「こらこら、精霊樹を探すのが目的だろう?」

「しょうらった」


 これでよく、自分だけで行こうとしていたよね。ハルとシュシュ、コハルだけだと今頃どうなっていたのか分からない。不安ばかりだ。


「こはりゅ、ひーりゅしゅりゅじょ」

「お願いなのれす」

「よし、まかしぇりょ。ぴゅりふぃけーしょん、ひーりゅ」


 ハルがそう詠唱すると、白く輝く光が精霊樹を包み込む。ゆっくりと光が消えていくと、精霊樹が輝きだした。


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